Menu
  • Top
  • Cars
  • 「レンジローバー・スポーツSVエディション2」 と「レンジローバー・オートバイオグラフィーD350」、ラグジュアリーSUVの両極が奏でる感性
Cars
2025.09.21

「レンジローバー・スポーツSVエディション2」 と「レンジローバー・オートバイオグラフィーD350」、ラグジュアリーSUVの両極が奏でる感性

伝統と挑戦が生み出す新たな頂点「レンジローバー・スポーツSVエディション2」

伝統を抱えるブランドにとって、築き上げた地位を守り続けることと共に難しいのは、新たな挑戦を続ける姿勢だ。しかし、英国の四駆の老舗、ランドローバーはその両面を体現する存在である。クロスカントリービークルを出自として、四駆性能を極限まで高めながら、仕立ての上質さで上流階級からの支持も獲得してきた。その歩みを象徴するのが1970年に誕生した「レンジローバー」である。このモデルは5世代にわたる進化を経て、ラグジュアリーSUVの代名詞としての地位を固め、いまは〝ハウス・オブ・ブランズ〟戦略のもとで、独立したブランドとしての存在感を打ち出している。

「レンジローバー」のラインナップは、エントリーモデルの「イヴォーク」、モダンを追い求めた都会派の「ヴェラール」、俊敏なハンドリングを志向した「レンジローバー・スポーツ」(以下、レンジスポーツ)、そして頂点に立つ「レンジローバー」という4本柱で構成される。そのうち「レンジローバー」と「レンジスポーツ」には、さらに特別なグレードとして「SV」が用意される。いわゆるオーダーメイドなどを担当する特装車部門、スペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)が手掛けるこのグレードは、ブランドの特別感をさらに高める存在。その中でも最高の性能を有したモデルが「レンジローバー・スポーツ SVエディション2」である。

SUVの枠を超える走りの実力

このモデル、実は一昨年に発売された〝SVエディション1〟に続く特別仕様の第2弾だ。「エディション1」が瞬く間に完売した経緯を踏まえ、「SVエディション2」は2025年モデル限定グレードとして用意された。その成り立ちは「エディション1」に準ずるもので、4.4Lツインターボエンジンに専用の油圧連動式6Dダイナミクスサスペンション、23インチのカーボンホイールやブレンボ製ブレーキシステムを組み合わせながら、約76kgの軽量化も果たした。つまり「SVO」は内外装のコスメティックだけでなく、走りの性能そのものを抜かりなく強化したということ。筆者は今年の春にクローズドサーキットで「SVエディション2」のパフォーマンスを体感し、SUVの領域を超えた俊敏さに舌を巻いた。そして今回、初めて一般道で試す機会に恵まれたが、その圧倒的なパフォーマンスは健在だった。

最高出力635PS、最大トルク750Nmを誇る4.4LV8ツインターボは「レンジローバー」史上最強を謳い、先代に当たる「SVR」の5LスーパーチャージドV8からは60PSと50Nmのパワーアップに成功。その750Nmの最大トルクは1800rpmという常用回転域から発生し、スロットルペダルを不用意に踏み込めば体をシートに押し付ける猛烈な加速が襲う。もっとも、常識的に扱っている範囲では、マイルドハイブリッドシステムに組み込まれる19PSの電動モーターのサポートのおかげもあってシフトショックは極めて少なく、エンジン単体の回転フィールも滑らかさが際立っている。

旋回性能も驚異的である。油圧制御によって姿勢変化は最小限に抑えられるほか、パフォーマンスが最大限に引き出される〝SVモード〟に切り替えると車高はさらに15mm下がり、よりシャープな挙動を示す。その軽快といっていいハンドリングとフットワークのおかげで、車体はひとまわり小さくなったかのよう。慣性の法則を超越したような挙動を見せるSUVはそうあるものではなく「レンジローバー・スポーツSVエディション2」はその類稀なるパフォーマンスで唯一無二の存在感を示していた。

本流モデルが示す〝静の魅力〟「レンジローバー・オートバイオグラフィーD350」

ハードコアな「レンジスポーツSVエディション2」と対照的な存在が、標準仕様の「レンジローバー」だ。ファミリーの本流たるこのモデルは、ショートホイールベースとロングホイールベースの2タイプを用意。パワートレインのラインナップは幅広く、3L直6ディーゼルターボ(マイルドハイブリッド)、530PSと615PSの2種の4.4LV8ガソリンツインターボ、さらに3L直6ガソリンターボと大容量バッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッドが揃う。

「レンジローバー」は英国の上流階級が自身の領地を巡るために愛用された歴史を背景に、代を重ねて高級サルーンと比肩する存在へ進化してきた。現行型は2021年に登場した5代目で、多様なパワートレインを見据えた新プラットフォームを採用。EV仕様の登場も間近とされるが、今回注目したのは〝ディーゼル〟という選択肢だ。

静粛と効率がもたらす極上の移動体験

この〝インジニウム〟直列6気筒ディーゼルは「レンジスポーツ」には先代の最終型から設定されていたが、本家「レンジローバー」への搭載は初。従来のディーゼルが抱える騒音や振動のイメージを払拭する仕上がりである。登場当初は300PS/650Nmだったが、2025年モデルでは350PS/700Nmへ進化。最大トルクの発生域も拡大し、扱いやすさが一段と増した。

走らせれば、2.5トン超の巨体を余裕で動かす力強さを示しながら、音や振動は徹底的に遮断される。アクセルレスポンスは過敏すぎず自然で、マナーは極めて上質だ。500kmを超えた今回の試乗では、高速移動が主体だったこともあってオンボードコンピューターは12.4km/Lを示し、このサイズからは想像しにくい好燃費を記録した。静粛性、経済性、パワー感の三拍子が揃うこのエンジンは〝名機〟と評価してもいい。

ドライブフィールは快適の一語に尽きる。路面を撫でるように進み、不要なショックは吸収。ハーシュネスを抑えたうえで、高いアイポイントが広がる眺望をもたらし、リラックスした移動体験を提供する。もちろんオフロードを含めた高い四駆性能も健在だから、走行中は絶えず安心感に包まれる。ラグジュアリーSUVの本流として、洗練された動的・静的質感を兼ね備える姿は「レンジローバー」の本質そのものだ。

「レンジローバー・スポーツSVエディション2」と「レンジローバー・オートバイオグラフィーD350」。片やSUVの枠を超えたダイナミックなパフォーマンスを有し、片や静粛と効率を極めたラグジュアリーの王道を往くモデルだ。同じ「レンジローバー」ファミリーでありながら、そのキャラクターは対極に位置する。しかし、どちらも共通しているのは、圧倒的な走行性能と上質な移動体験というブランドのDNAだ。進化の過程で個性を強めながらも、その本質は決して揺らぐことがない。両モデルを同時に試せたことで「レンジローバー」というブランドが未来に向けて描こうとしているビジョンが、より鮮明に見えてきた。

■ 関連情報
https://www.rangerover.com/ja-jp/range-rover/index.html

文/桐畑恒治

Share

Recommended

Ranking

AQ Lounge

『AQ』は、ラグジュアリーなクルマのある暮らしを愉しむ、知的でアクティブな富裕層のためのWEBメディア。
 
「AQ」会員に登録すると、プレゼント応募情報の一覧、プレミアムな会員限定イベント、ブランドのエクスクルーシブアイテムの紹介など、特別なコンテンツ情報をメールマガジンでお届け致します。更に『AQ』のタブロイドマガジンのご案内もあり、送付手数料のみをご負担いただくことでお手元で『AQ』をお楽しみいただけます。
登録は無料です。