ロールス・ロイスは、2025年8月26日、「Spectre Inspired by Primavera（スペクター・インスパイアード・バイ・プリマヴェーラ）」を発表した。これは春の詩的な美しさを探求したもので、ビスポークによって高度にカスタマイズされたモデルを通じて表現されている。

イタリア語で春を意味する「プリマヴェーラ」にちなんで名づけられたこのシリーズは、季節の感覚を呼び起こすように慎重にキュレーションされたビスポークのディテールを特徴としている。それは、繊細で、心を高揚させ、未来への約束に満ちた生き生きとした春を体現している。

スペクター・インスパイアード・バイ・プリマヴェーラは、「Evanescent（エヴァネッセント、儚さ）」、「Reverie（レヴェリー、幻想）」、「Blossom（ブロッサム、花）」の3つの異なる表現で構成され、それぞれが春という季節を異なる解釈で表現している。同シリーズは、来年初旬までご注文可能で、2026年春に先立って納車が開始される予定となっている。

ロールス・ロイス・モーター・カーズ ビスポークデザイン担当ゼネラルマネージャー　マルティナ・スターク氏は、次のように述べている。

「世界中のどの文化においても、春は祝福される季節です。春は、若さやロマンス、そして暗い冬を経て再び訪れる光と温もりを思い起こさせます。喜びに満ちた春は儚く、あっという間に過ぎ去ってしまいますが、だからこそかけがえのない季節です。『Primavera（春）』から着想を得たスペクター・インスパイアード・バイ・プリマヴェーラは、このつかの間の季節がもたらす感情を捉え、お客様に一年を通じて味わっていただけるよう用意されました。移ろいゆく季節の儚さと、永遠に変わらぬロールス・ロイス。この対比こそが、このビスポーク・シリーズの核心です。スペクター・インスパイアード・バイ・プリマヴェーラは、進化し続けるロールス・ロイス・ビスポークと、それを形作る絶えず進化し続けるお客様の想像力を映し出しています」

3つの異なるカラーで提供される各モデルには、それぞれ春の象徴である桜のモチーフがあしらわれている。これらの花の要素は、ロールス・ロイスのビスポーク・デザイナーによって1つひとつ手描きされ、その後デジタル化されてエクステリアとインテリアのディテールへと昇華された。

それぞれのエクステリアを際立たせているのは、満開の桜の枝を描いたコーチライン・モチーフ。また、このシリーズのために新たに精緻にデザインされた23インチのアロイホイールも登場し、咲き誇る花の様子を表現している。その流れるようなフォルムは、花びらが徐々に開き春の光を迎える姿を連想させるもので、自然の生命力をさりげなく表現している。

そして桜のモチーフは、インテリアにも引き継がれている。イルミネーテッド・トレッドプレートには「SPECTRE Inspired by Primavera」の名が刻まれ、ヘッドレストには花びらの形状を捉えた彫刻的なシルエットを基調とした刺繍技法が施されている。

各モデルのハイライトは、独自の触感をもたらすディテール。ブラックウッドのフェイシアとセンターコンソールには、大きく枝を広げ咲き誇る桜のモチーフが刻まれている。この効果を実現するために、37種類の異なるレーザー密度を試すことで達成され、磨き上げられた木の表面に対して調和の取れたコントラストを生み出し、ディテールを損なわずに仕上げを保つことができる特別な研磨工程が開発された。

さらに北半球の春に移り変わる星座にインスピレーションを得て、各モデルには牛飼い座、獅子座、乙女座からなる「春の大三角形」が描かれている。1台につき4,796個のイルミネーションを手作業で配置したスターライト・ドアと、5,500個を超える星々を抽象的に表現しSPECTREのロゴを際立たせるイルミネーテッド・フェイシアが備わっている。

Evanescent（儚さ）：輝く美

春の儚さと美しさこそが、スペクター・インスパイアード・バイ・プリマヴェーラのエヴァネッセントという名の由来となる。車両のデザインは、野生の花々の奔放な美しさから着想を得ており、鮮やかな色彩と様々な形で野原、森、生け垣を彩る。

そしてクリスタル・オーバー・アークティック・ホワイトのエクステリアの仕上げは、コーチライン、桜のモチーフ、ピンストライプのホイール・センター、トゥルケーゼのブレーキ・キャリパーによって引き立てられている。トゥルケーゼは、インテリアにも続き、グレース・ホワイトのレザーに鮮やかなアクセントを加える。そして、シャルトルーズの細いパイピングが鮮烈なコントラストを添える。

Reverie（幻想）：自然の目覚め

スペクター・インスパイアード・バイ・プリマヴェーラのレヴェリーは、春の精神的な意義を探求し、新たな始まり、生命力、そして再生とのつながりを表現している。その名にふさわしいこの穏やかな解釈のスペクターは、絶対的な安らぎと静けさに満ちた夢のような雰囲気で乗客を包み込む。

そのエクステリアは、ダックエッグ・ブルーで仕上げられ、コーチラインと桜のモチーフはフォージ・イエローで手描きされており、ブレーキ・キャリパーやピンストライプのホイール・センターと調和している。一方インテリアは、純粋さを追求し、グレース・ホワイトとチャールズ・ブルーのレザーに鮮やかなフォージ・イエローのアクセントが組み合わせられている。

Blossom（花）：再生の季節

春は儚くまばゆい輝きをもたらす季節。休眠と満開の間に訪れるまばゆい瞬間であり、自然が一瞬だけ最も鮮やかで繊細な姿を垣間見せる。スペクター・インスパイアード・バイ・プリマヴェーラのブロッサムは、この精神をヴェルヴェット・オーキッド・メタリックのエクステリアで捉えている。この深みのある表情豊かなこの色合いは、早春に咲く花々の豊かさと希少性を呼び起こす。ショルダー・コーチラインと花のモチーフ、さらにフォージ・イエローのブレーキ・キャリパーとピンストライプ・ホイール・センターが、陽の光とエネルギーの輝きを優雅に添えている。

そしてインテリアでは、グレース・ホワイトのレザーに鮮やかなピオニー・ピンクのアクセントが組み合わされ、フォージ・イエローのパイピングが季節の躍動を伝える。このスペクター・インスパイアード・バイ・プリマヴェーラは、春の儚い美しさとそれが呼び起こす感情へのオマージュであり、ロールス・ロイスのコミッションにより生み出される永遠の存在の中に刻まれ、後世にわたり受け継がれていく。

関連情報：https://www.rolls-roycemotorcars.com/ja_JP/home.html

構成／土屋嘉久