ステランティスジャパンは、アルファロメオをはじめ、フィアット、アバルトなど8ブランドを扱っている。しかし、ステランティスグループには、日本には導入されていないランチアも属している。そのステランティス傘下にあるランチアは、2026年に「ガンマ」を、次世代グローバルEVプラットフォームを採用した電気自動車またはハイブリッド車として復活させるとアナウンスしている。
オリジナルのランチア「ガンマ」は、1976年~1984年まで製造されたミディアムクラスの「ベルリーナ」と呼ばれるセダンと2ドアノッチバックのクーペが用意されていた。しかし、このランチア「ガンマ」は日本に導入されていない。そんな超レアな初代ランチア「ガンマ」を所有しているのが大森健司さんだ。大森さんのランチ「アガンマ」は1982年式で、1980年にマイナーチェンジ後のモデルとなる。
実はこのランチア「ガンマ」は、ランチアがフィアット傘下となる前の最後のモデルなのだ。このランチア「ガンマ」のデザインを担当したのは、あのピニンファリーナ氏。4ドアセダンと2ドアクーペでホイールベースが異なるなど細部にこだわりを感じる。搭載しているエンジンは、最高出力140PSを発生する2.5Lの水平対向4気筒エンジン。このエンジンを縦置きにレイアウトし、前輪駆動させる。2.5Lの水平対向エンジンは非常にコンパクトでエンジンルームには余裕があるのが特徴だ。
大森さんがこのランチア「ガンマ」を知ったのは、小学生の時に見た自動車雑誌だったという。しかし「ガンマ」の存在を忘れて、ランチア、アルファを交互に所有し始めた。それら大半が旧車なので、一度も新車で購入をしたことがないという。記憶の彼方にあった「ガンマ」の存在を思い起こさせたのは、SNSで所有していた前オーナーと知り合ったことがきっかけという。
前オーナーと知り合い、大森さんは「ガンマ」に対する熱い想いを伝え続けて1年が経った頃に譲ってくれることになった。正規輸入車ではないので、部品の手配は相当大変ではないかと聞いてみると「ガンマ」のオーナーズクラブに所属しておりそれほど大変ではないとのこと。やはり旧車に乗るには、オーナーズクラブと主治医となるショップは必要だ。
大森さんが愛車「ガンマ」で最も気に入っているのがフロントマスクで、遠くは丸、近くは四角という異形のヘッドライトを採用していること。当時は丸型か角形のどちらかの時代に、その両方のいいところどりをした先進性は見逃せない。しかも、このランチア「ガンマ」のフロントマスクを見ていると、その後日本でシーマ現象という高級車ブームを起こした初代日産「シーマ」がインスピレーションを受けたと容易に想像がつく。
一方、不満に思っている部分は旧車ならではの、エアコンがないこと。と笑いながら話す。40年以上経過したクルマにもかかわらず、ピカピカに磨かれたボディから発するエレガントな雰囲気はオーナーである大森さんの想いの強さを感じる。
取材・文/萩原文博