2025年6月、アルファロメオの最新モデルとして日本市場に導入されたのが、コンパクトSUVの「ジュニア」だ。この名前もアルファロメオの歴史に残る名車のネーミングがルーツとなっている。この「ジュニア」と同じように、かつての名車を受け継いだのが2017年に日本市場に導入された「ジュリア」。現行モデルの「ジュリア」は、1975年以来、4半世紀ぶりに後輪駆動を採用した「ベルリーナ」と呼ばれる4ドアセダンだ。
ドイツのニュルブルクリンク北コースにおいて、量産4ドアセダンとして最速タイムを記録したハイパフォーマンスモデルの「クアドリフォリオ」をラインアップしている。赤のボディカラーを纏ったアルファロメオが多い中で、ひと際目を引くのが、Tipo DAさんが所有する1974年式のアルファロメオ「ジュリア2000GTV」だ。
初代のアルファロメオ「ジュリア」は1962年~1977年まで生産されていた。「スプリントGT」と呼ばれる2ドアクーペは、当時ベルトーネに所属していた心身気鋭のジョルジェット・ジウジアーロが手がけた。ボンネットに段差をもたせた表情から「段付き」と愛称で親しまれている。Tipo DAさんこだわりの4灯式ヘッドライトを採用した「2000GTV」は1974年に登場したが、生産期間が短かったとてもレアなモデル。搭載している2Lエンジンは最高出力132psを発生し、当時は高いパフォーマンスを発揮していた。
Tipo DAさんによると、このモデルにこだわって、3年間探し続けてようやく7年前に手に入れたという。購入してから、ブレーキ、クラッチ、エンジンのメンテナンスを行ない、直近2年ほどは落ち着いているのだとか。発売から50年以上経過しているモデルなので、パーツの入手は困難なのか聞いてみると、105系/115系と呼ばれる初代「ジュリア」は販売台数が非常に多いので、現在でもパーツは流通しているそうだ。一生乗り続けたいので、ガレージにはキャブレターやミラーなど様々なパーツを購入して保管されているということで、もはやショップのような状態になっているという。
Tipo DAさんが、このアルファロメオ「ジュリア2000GTV」で最も気に入っているのが、エンジンの音。アンサのマフラーを装着しており、心地良いエンジン音を奏でていた。反対に不満に思っているのが、クーラーがないこと。これだけ暑い日が続いても乗り続けてはいるが、三角窓がなければとてもこの猛暑で長時間運転することは難しいという。現在では三角窓を採用しているクルマはほぼないが、エアコンがない時代のクルマにとって三角窓は大切なアイテムだったことをあらためて教えてくれた。
取材・文/萩原文博