ビー・エム・ダブリューは、2026年5月15日(現地時間)、イタリアのチェルノッビオで開催されたクラシックカー・コンクール「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」にて、新生BMW ALPINA(BMWアルピナ)の未来像を示すデザインスタディモデル「Vision BMW ALPINA」を世界初公開した。
BMWグループのデザイン責任者であるエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は、以下のように述べている。
「ALPINAは常に、”性能と洗練さ“という非常に明確な考え方を体現してきました。そこでは、スピードと快適性は相反するものではなく、互いを高め合う志です。私たちがこのブランドの新たな担い手として果たす役割は、その独自性を守りつつ、現代の文脈にふさわしい形へと磨き上げていくことです。Vision BMW ALPINAは、これらの資質を節度とモダニティをもって表現できることを示し、ブランドを未来へと導く私たちの方向性を示唆しています」
この「Vision BMW ALPINA」は、ブランドのヘリテージを、敬意をもって受け継ぎながら、最先端の創造性で形作っている。全長5,200mmの堂々たるプロポーションは、ワイドで低く、そして自信に満ちた佇まいを生み出す。クーペのルーフラインは、長く、なだらかに傾斜し、そのシルエットはスピードと、4人の大人が快適さを十分に享受できる包容力を同時に示す。そして体験の核となるV8パワートレインは、ALPINAらしいエキゾースト・サウンドを奏でるように調律され、低回転速では豊かで深く、高回転域では伸びやかに響く。BMWデザインにおいてミドルサイズとラグジュアリークラス、そしてBMW ALPINAを統括するマキシミリアン・ミッソーニ氏は、次のように語っている。
「Vision BMW ALPINAでは、ブランドを構成するすべての要素を本質まで蒸留し、徹底してモダンで洗練されたかたちに適用しました。あらゆるディテールが“確かさ”を物語ります。エンジニアリング、素材、そして語りかけるストーリーにおいて、主張は控えめで、近づいて初めて見えてきます。その“純度”と“豊かさ”の相互利用こそが、私たちのBMW ALPINAデザインのアプローチを定義しています」
フロントは、力強いボリュームと前掲したスタンスによって、定義され、過度に誇張することなくスピードを予感させる。ALPINA B7に遡るシグネチャーである“シャークノーズ”は、BMWのキドニー・グリルを三次元的な彫刻として再解釈し、車体の造形を先導するとともに、静かな自信をもってブランド・エンブレムを包みこむ。このシャークノーズを起点に、エクステリアは単一の視覚的な軸である、“スピード・フィーチャー・ライン”を中心に構成されている。フロント下部コーナーから6度の角度で立ち上がり、ボディサイドに沿って伸び、リアへと回り込むこのラインは、動きを想起させるだけの主張を備えつつ、洗練さを損なわない統制が保たれている。
控え目なディテールは、強く訴えかけることなく、注意深く見たりすることで初めてその価値やディテールが伝わるという設計思想「Second Read」の原則が、Vision BMW ALPINA全体に貫かれている。
ALPINAの特徴的なデコ・ラインは、1974年以来、ALPINAの意匠言語の一部である。Vision BMW ALPINAでは、このデコ・ラインを現代的に再構築し、本質へとそぎ落としてクリアコートの下にペイントしている。ブランドを象徴するディテールが、次の時代に向けて、どのように適応し得るかを示す、静かなジェスチャーとなっている。
内側へと折り返す面はとりわけ丁寧に扱われ、近づくほどに魅力が増すファーク・メタリックのトーンで仕上げられている。この考え方は、キドニー・グリルの内側にのみクロームを用いたBMW507から着想を得ている。さらに、シャークノーズにも同じ「Second Read」の洗練さが宿る。内側の面には綿密にスケールされたシグネチャーのデコ・ライン・グラフィックを配し、外周のやわらかなバックライトは作動時にのみ浮かび上がる。
そしてデイタイム・ランニング・ライトは、温かみのあるホワイトの光色で、キドニー周囲の輪郭をなぞる。これはバイエルン・アルプスに差し込む最初の光に着想を得たものである。細身のランプ内部には、シャープなアクセントとして、精緻にカットされたイルミネーテッド・クリスタルが配されている。
なお楕円形の4本出しエキゾーストは健在で、「ALPINA」のレタリングは下部フロント・エプロンに機械加工とポリッシュを施したメタル・エレメントとして再解釈されている。フロント22インチ/リア23インチのホイールは、1971年以来ALPINAの定番である20スポーク・デザインを採用している。
キャビンは、空間、素材の質、そしてテクノロジー統合の丁寧さというあらゆる面で豊かさを備えている。レイアウトは建築的なボリュームで校正され、各要素は均質な内装に溶け込ませるのではなく、独立した造形として設計されている。6度の角度をもつスピード・フィーチャー・ラインはインテリアにも連続し、ダークトーンの上部セグメントと、明るい下部セグメントを分けている。アルプス地域の生産者から調達したフルフレイン・レザーには、デコ・ラインに着想を得たスティッチが組み合わされている。
さらに、クラフトのディテールは抑制的でありながら緻密に吟味されている。伝統のブルーとグリーンを用いたブリッジ・ステッチは、歴史的なステアリング・ホイールの手縫いから着想を得て、控え目に配され、金属部品には時計製造を思わせる面取り技法を採用し、サテンとポリッシュの仕上げを組み合わせた。精緻にカットされたクリスタルは、クルマの走りを形作る操作系にのみ用いられ、BMW ALPINAが運転体験そのものを重視していることを際立たせている。
そしてリア・コンソールの背後には、ガラス製のウォーターボトルが備わり、BMW ALPINAのクリスタル・グラスが自動で展開する仕組みとなっている。それぞれのグラスには、20本のデコ・ラインが刻まれ、リムには6度のプロファイルが与えられています。隠しマグネットでグラスは保持され、オープンポアのセンターコンソールに柔らかく照らし出される。
ALPINAの物語は、1965年にドイツ・ブッフローエではじまった。アルプスの影にある小さなバイエルンの町で、タイプライター製造の道を歩むはずだった、ブルカルト・ボーフェンジーペン氏は、高性能チューニングという道を選び、ALPINAを創設した。そしてBMWのロードカーとレーシングカーを磨き上げてきた。創業当初から哲学は明快であり、それは、スピードと快適性は競合するのではなく、補完しあうということだった。耐久レースの世界で、ライバルが軽量化の為に装備を削る一方で、ブルカルト氏は、ドライバーシートにパディング(クッション材)を追加した。より快適なドライバーこそ、より速い。その洞察は、その後のロードカーへと受け継がれ、長距離を高速で走り続けても揺るがない落ち着きと洗練さは高く称賛されてきた。そして1970年代後半に登場したALPINA B7クーペは、転換点となるモデルだった。ALPINAの哲学がラグジュアリーカーへと適用され、以降のすべてのモデルが「贅沢」であることを認められる礎となったのである。BMW E24 6シリーズをベースに、長いボンネット、ワイドなスタンス、そしてシャークノーズは静止していても速さを感じさせ、キャビンは4人を快適に載せて大陸を横断できる包容力を備えていた。
BMW ALPINAは、2026年BMWグループ内のエクスクルーシブ・ブランドとなる。そこには確かな運営体制と明確な責務がある。それは、ALPINAを愛する人々にとっての意味を深く理解し、その本質をこれからの製品へと誠実に受け継いでいくことである。BMW ALPINA責任者のオリバー・フィーレヒナ氏は、次のように話している。
「BMW ALPINAは、BMWとロールス・ロイスの間に位置するポートフォリオの空白を埋め、高級セグメントにおける更なる可能性をひらきます。ALPINAには、強固なレガシーと世界的なコミュニティがあり、私たちはそれを礎に、ブランドが体現する本質、つまり、スピードや快適性、そして洗練さ、を守りながら発展させていく」
関連情報:https://www.bmw.co.jp/ja/bmw-alpina.html
構成/土屋嘉久