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2026.03.09

ヴェールを脱いだフェラーリのPHEVスーパースポーツ「849テスタロッサ」とその真価

ところはスペイン、セビーリャ郊外のサーキットを起点にマラネッロ産の最新モデル国際試乗会が催された。その名は「849テスタロッサ」。昨年9月にデビューし、すでに日本でのお披露目も終えている。現代の名機とされるF154型4LV8ツインターボエンジンに前2機・後1機の電気モーターとバッテリーを積んだプラグインハイブリッドのスーパースポーツだ。

「849」とは8気筒で1気筒あたり499ccを意味する。「テスタロッサ」とはイタリア語で赤い頭という意味で、その昔、特別に仕上げられた高性能エンジンを他と区別するため印として赤い塗料をエンジンヘッドカバーにペイントしたことがその名の始まり。「SF90ストラダーレ」というモデルの後継で、性能を大幅アップしたメカニズムを継承し、見た目にも大胆に変化している。

サーキットテストの前にまずはカントリーロードで「849テスタロッサ」を試すことになった。フェラーリの、それも1000馬力を超えるスポーツカー(マラネッロは最近、このカテゴリーをパイロットカーと呼んでいる。パイロット=ピロータでレーシングドライバーを意味する)の初テストである。「赤いボタンを押すとV8が轟然と目を覚ました」などと書き出したいが、それはもう過去のハナシ。代わりにパソコンさながらの電子音が鳴ってスタート可能の合図となる。

 FFの“電気自動車”として静々とスタートした。せっかくのフェラーリ、無音で走り出すなんてどうかしてるぜ、などと思われるかもしれない。けれども静かな跳ね馬も実はいいものだ。たとえば街中に住んでいて休日の早朝にガレージから愛車で出発することを想像してみてほしい。V8エンジンの爆音がいかに近所迷惑なことか!深夜のご帰還もまた然り。

 電動走行し始めてすぐ、先代にあたる「SF90ストラダーレ」との違いを感じた。マシンとの一体感が増している。見た目に随分と幅広くなって、街乗りが心配なくらいのサイズ感だった(実寸はほとんど変わらない)のでちょっと尻込みしたが、意外にもドライバーによくフィットし軽快な動きをみせた。乗り心地もソリッドだが嫌味がなく、アクセルやブレーキのタッチもとても自然でコントロールしやすい。要するに“これならイケる”という妙な自信が芽生えた。

 オープンロードで加速を試す。V8エンジンと電気モーターとの連携制御も極めてスムーズだ。それゆえだろう、フロントアクスルがモーターで動くという感覚がきれいさっぱりなくなった。フロント電気モーターだけでも220cvあって電動走行では結構な速さ(しかもFF)だったというのに、V8エンジンが掛かったとたん、電気モーターの存在など忘れてしまえる。エンジンが掛かれば以前と同様の“これぞフェラーリ”な気分に浸れる。

 とはいえ、決しておとなしいばかりの馬ではない。右足を深く踏み込めばV8エンジンのいななきと共に凄まじい加速をみせた。あまりの速さに内臓がぎゅっと縮む。安定して加速するがゆえかえって次元の違う速さを見せつけられているようで、思わず右足を緩めてしまった。

 史上最強の誉も高いF154型V8エンジンの圧倒的な存在感を楽しみつつ、スペインのカントリーロードをクルージングし続けた。動きはじめの印象通り、「SF90」に比べて車体をよりタイトに感じる。だから狭い道での不意の対向車にも慌てることがない。「SF90」も1000km以上ドライブしたが、そのあまりのパワー&トルクゆえ少々浮つく印象もあった。ところが「849」にはそれが全くない。全体的に車体がよく引き締まっている。ドライバーエンゲージメントは間違いなく向上している。

 すでに「SF90」の時点でスペック的には相当にすごかった。繰り返すが扱いきれないぐらいだった。だから「849」への進化ではいたずらに性能スペックを引き上げることはせず、ハイブリッドパワートレーンの制御を磨き上げ、エアロダイナミクスも煮詰めることで、全域での性能バランスを引き上げた。スーパーカーとして、そしてもちろんロードカーとしての完成度の高さという点で、「849テスタロッサ」は現代スポーツカーの最高レベルにあると思う。

 もちろん1000cvを超える超高性能をフルに引き出したければ、一般道では無理だ。ランチののち、いよいよサーキットでのテストとなった。テストカーはもちろんアセットフィオラノ。軽量で空力アップされたオプションの仕様である。テスト方式は先導車両に引っ張ってもらって走る1:1の追走式。同じ仕様の先導車を駆るのはプロのテストドライバーで、レース経験も豊富な猛者だ。3台分くらいの車間を保ってついてこい!と指示されたものの、1周目の途中から急にペースが上がってあっという間に10台分近く離されてしまった。

 離れすぎるとベストラインがわからなくなってしまう。変速をまずはオート=自動にして必死に追いすがった。シフトダウンのプログラムは完璧、アップも気持ち早めだが上々で、みるみる先導車に近づく。「SF90」でサーキットを走った記憶に比べると高速走行時の安定感がまるで違った。制御はもちろんのこと、新しいデザインとなってエアロダイナミクスも大幅に向上したのだろう。さほど(冷や)汗をかくことなく、ラップタイムを縮めることができた。

 6億円の限定車「F80」譲りの予測制御FIVEシステムが効いているのだと思う。自分の腕とはかけ離れて速やかに狙ったラインを上手くトレースしてくれるという感覚が常にあった。トラクションコントロールをカットしなくてもときおり後輪が滑り出るほどハイスペックだが、そこからのコントロールはV6の「296」シリーズなどよりむしろ容易だ。

 高回転域を使い続けるサーキットではV8エンジンの咆哮も大いに楽しめる。それ以上に心地よいのは高回転域におけるエンジンの回転フィールだった。背後で精緻なメカニカルパーツの数々が絶妙に絡み合って盛大に力を出し続けているという感覚を、心地よい振動と共にドライバーの下半身がダイレクトに受け止める。ベテランはもちろん、ビギナーでも十分に楽しめる一千馬力の跳ね馬であった。

■関連情報
https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/849-testarossa

取材・文/西川 淳 写真提供/フェラーリ

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