トヨタの超高級車戦略の拡大が止まらない。「センチュリー」のSUVやレクサス「LM」など、2000万円オーバーのハイエンドモデルを次々と企画し、販売している。レクサス「LM」は2023年10月に発表され、2024年に入ってからデリバリーが始まっているミニバンだ。「アルファード/ヴェルファイア」をさらにラグジュアリーにしたスーパーミニバンは、車両本体価格が2000万円~という高額なクルマだ。
今回、試乗したのは「LM500h EXECUTIVE」。定員4名のショーファードリブンカー(運転手付き乗用車)だ。それは、フロントでもリアでもドアを開けてみればひと目でわかる。前席と後席の間には、パーティションと呼ばれる間仕切りが備わっている。間仕切りには小窓があり、これを閉めると前後席での会話もできない。前席と後席を見比べながら、どちらから座ろうか迷うほど、ゴージャスだ。
「LM500h」のパワーユニットは直4だが「アルファード/ヴェルファイア」の2487ccではなく、2393ccのガソリンターボを搭載している。出力も275PS(※アルファード/ヴェルファイア190PS)で、トルクは460Nm(※236Nm)となっている。しかも最大トルクの発生エンジン回転数は「アルファード/ヴェルファイア」が4300~4800回転に対し、「LM」は2000~3000回転と低い。トルクを出すのにもエンジン回転を上げずに済むわけだ。前後輪用のモーター出力もフロントが「アルファード/ベルファイア」が182PS、270Nmに対し、「LM」は87PS、290Nm、後輪用は54PS、121Nmに対して、108PS、169Nmとなっている。
車両重量は「アルファード/ヴェルファイア」より100kg以上重いが、これだけのパワーとトルクがあれば十分だ。ちなみに、ボディーの外板サイズは全長5125mm(※4995mm)、全幅1890mm(※1850mm)、1955mm(1935mm)と「LM500h」のほうが大きい。ホイールベースは3000mmで同じだ。
Dレンジにシフトしてスタート。ドライブモードは「NORMAL」を選択。この他に「SPORT」「ECO」「REAR COMFORT」「CUSTOM」が選べる。スタートからの動きは軽めで、エンジン音もわずかに室内に入ってくるが、騒音ではない。「アルファード/ヴェルファイア」のハイブリッド、2.5Lエンジンと比べてもトルクも音も異次元のレベル差がある。
6速ATはマニュアルモードも備えている。100km/hは4速1700回転。て各ギアで5000回転まで回すと、1速45km/h、2速85km/h、3速で135km/hに達してしまう。高速道路での巡航は6速1600回転なので、静かなクルージングが楽しめる。
4輪駆動のハンドリングだが、「NORMAL」モードでは、直進時は低速から高速まで重め、直進性の強い動きだ。コーナーでは切りこみは軽めだが、抵抗感があり、戻す力が強い。タイトなコーナーではゆり戻しもある。乗り心地は路面のザラつきや細かい上下動が低中速では発生、高速では路面のうねりでやや大きめの上下動が発生する。このクルマの動きは、やや酔いやすい感覚と言える。
途中で「SPORT」モードに切り替えると、乗り心地は硬めになり、ゴツゴツ感も増すが、上下動は抑えられ、不快な共振もなく、キビキビ感のある走りになった。ハンドルはやや重めだが、全体にスポーティーな動きだ。ちなみに0→100km/h加速だが、「アルファード/ヴェルファイア」は8秒台だったが、「LM」は6秒台で走り切る俊足ミニバンでもあるのだ。スタートからもたつくようなことはなく、パワーユニットからの音も気にならない。「アルファード/ヴェルファイア」とは、次元の違うスーパーミニバンということをここでも確認。
同乗者に運転を託し、後席に移った。そこで、ハイエンドミニバンとしていくつか気になることを体験することができた。まず、乗降時のステップから。ここの剛性が不足しているように感じた。体重をかけると曲がるのだ。樹脂製のようなので、ここはもっと硬い素材を採用してほしかった。
室内は完全にファーストクラス。広さも十分だし、座席はフルフラットに近くまでリクライニングする。オットマンも完備している。パーティションの下部にはワインクーラーやシューズボックスもある。パーティションの小窓を閉めると、くもりガラスが上昇し、後席は独立した空間になる。
この時、前席と会話をしようとしたが、前後間のマイクがない。仕方がないので、パーティションを開けて、会話する。これは、ちょっと残念。見た目はいいが、本当にこういったジャンルのクルマの使い方をわかっていないとこういう造りになってしまうのか。もうひとつ、残念だったのが、スライドドアのウインドウが全開せず、1/3ほど残ってしまうこと。これでは沿道の人に挨拶ができない!という人は少ないかもしれないが、この大きさのスライドドアなら、ウインドウは全開できるようにしてほしかった。
スタイリングは「LBX」と同じ台形のグリルを採用している。レクサスのスピンドルグリルは変形してしまったのは、以前からのレクサスファンにはちょっと寂しいかもしれない。乗り心地などいくつかの改良点はあるが、真面目な開発陣は、すでに真のショーファーカーを目指して改善に着手しているはずだ。気が早いかもしれないが、次の「LM500h」の存在感に期待したい。
■関連情報
https://lexus.jp/models/lm/
文/石川真禧照 撮影/萩原文博