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2026.10.15

ラディカル・モータースポーツが目指す新しいクルマの愉しみ方

もっと新しいクルマの楽しみ方はないだろうか。例えば、ドライビングの本質を一途に享受するという、昔ながらの、けれども興味深い方法はどうだろう。そのために選ぶべきは、その名をよく知られたスポーツカーやスーパーカーではない。レーシングカーを所有するという、冒険心に満ちたアプローチである。英国の名門、ドニントンパーク・サーキット。その敷地内に、ラディカル・モータースポーツの本拠がある。1997年の創設以来、彼らは一貫して純粋なレーシングカーを世に送り出してきた。累計生産台数はすでに3,000台を超える。今や世界23カ国に33のディーラー網を持つ、英国で、いや、世界で最も成功したレースカーコンストラクターの一つだ。

この稀有なブランドが提案するのは、もちろん単なる移動手段としての自動車ではない。人生を豊かに彩るドライビングカーライフだ。本国ドニントンパークで体験したトラック専用の最新エントリーモデル「SR1 XXR」の高いポテンシャルは、カーライフの全く新しい地平をさし示した。

雨上がりのピットで我々を出迎えてくれたのは、鮮烈なレッドにペイントされた新車の「SR1 XXR」だった。そのスタイリングからしてすでに一般的なスポーツカーとは一線を画している。スパイダーボディで、フロントウィンドウはなく、ロールゲージで囲われている。低くワイドに構えたプロポーションは、ル・マン24時間レースを走るプロトタイプカーをスケールダウンしたようなスタイルだ。

無駄な装飾を一切削ぎ落としたボディラインは、ただそこにあるだけで、これから始まる非日常のドラマを予感させる。大きなリヤウイングや、地を這うようなフロントの造形も、すべてが機能美として完結するものだ。ガレージに収まっている姿を眺めるだけでも、オーナーの所有欲を満たしてくれるような圧倒的な存在感を放っている。

美しいカウルの下には、スズキの「ハヤブサ」用をベースにドライサンプ化などの高度なチューニングを施した1340cc直列4気筒エンジンが潜む。最高出力190馬力を発生するこの心臓部を、鋼管スペースフレームとアルミニウムパネルで構成された高剛性シャシーのリアミドに搭載した。変速を担うのは、バイク用の6速シーケンシャルギヤボックス。車重はわずかに510kgと、ライトウェイトの極致にある。足元を支えるのは、ハンコック製の専用ラジアルタイヤ。

現代のスーパースポーツにありがちな、過剰な電子制御や賑やかな演出は一切排除されている。カウルを跨ぎ、無駄のない硬派なコクピットに収まった。シートが2座あるのは、プロを隣に乗せてのレッスンが容易だから、らしい(といっても知らない人なら躊躇するほど接近して座る)。

走り出した瞬間、その扱いやすさと濃密なインフォメーションに胸が昂った。スロットルペダルを踏み込んだ分だけ、パワー&トルクは鋭く、驚くほどリニアに立ち上がる。ドライバーの意図がダイレクトに駆動へと変換されるため、車体の挙動を予測することが極めて容易だ。

さらに特筆すべきは、ステアリングから手のひらへ伝わるインフォメーションの高い純度だった。タイヤのグリップ状態や荷重の移動が、正確にフィードバックされる。それゆえ、ペースを上げても車体は完全にコントロール下にあるように思える。踏み込むほどに、マシンは絶大な安心感で応えてくれる。速度が上がるにつれてメカニズムと空力が美しく協調し、ダウンフォースが車体を路面へと強固に押し付けていく・・・。

パワーでドライバーを威圧するような高性能車とは、対極に位置するマシンだ。懐の深さを知るほどに、次のコーナーはさらに奥まで攻められるのではないか、と、乗り手の挑戦する意欲を心地よく掻き立てる。試乗を終えてなお、肉体的な疲労感を忘れ、もっとこの世界に浸っていたいと思わせる高揚感に満ちていた。

最新型「SR1」の日本での販売価格は1,500万円前後となる予定だ。プレミアムなスポーツカーがひしめく価格帯ではある。しかし、そこから得られる価値は根本的に異なる。公道のあらゆる制約から解き放たれ、サーキットを走るためだけに最適設計された本物のレーシングカーが手に入る、と考えれば決して高くはない。週末のサーキットで純粋な自由を愉しむための投資だと考えればリーズナブルな選択肢でさえある。

ちなみに後述する日本のインポーターでは日本人のロードカー志向を満たすべく、「SR1」のロードカー・コンバージョンの可能性も検討しているという。ラディカルはかつて、クローズドボディのロードカー市場への進出を試みた歴史がある。しかし、年々厳格化するグローバルな安全・環境規制への適合コストは、小規模なコンストラクターにとって今や巨大なリスクとなった(かつてはそのために倒産しかけたこともある)。

そこで彼らは、ロードカービジネスから完全に撤退するという英断を下す。社名もラディカル・モータースポーツへと改め、レーシングカーの開発とトラック体験の提供へ、その軸足を完全にサーキットへと移したのだった。日本市場はまだまだロードカー重視だから、そのあたりは小回りのきく小さな組織ゆえ、柔軟な対応もきっと可能だろう。

ラディカルの真の強みは、単なる車両の製造・販売業にとどまらないことだ。レースチームやドライビングスクール、さらにはエクスクルーシブなクラブまでを含むリテーラー網を通じて、濃密なサーキット・コミュニティをワンストップで提供できる。2025年に香港のクラフト・バンブー・レーシングとパートナーシップを結んで本格始動したラディカル・ジャパンの代表・榎本友香氏も、自身がサーキットでのドライビングをピュアに愛するドライバーだ。彼女はこの世界規模の稀有なサークル・アクティビティに魅了され、インポーターを立ち上げた。

榎本氏が見据えるビジョンは、日本を単なる一過性の消費市場として捉えるものではなかった。日本には世界に誇るサーキットインフラと、深いモータースポーツの歴史がある。今後はラディカルを通じて日本の優秀な人材をグローバルな舞台へと送り出す道筋を作る。同時に、アジアをはじめとする世界中のジェントルマンドライバーがラディカルで日本のサーキットを走るために気軽に訪問できるような、双方向のグローバル・プラットフォームを目指す。世界各国のラディカル・シリーズへスポット参戦できるシステムや、このコミュニティから実際にル・マン24時間レースへ羽ばたくような優れたドライバーを輩出してきたという実績が、彼女の展望もまた決して夢物語でないことを物語っている。

日本国内では、主力モデル「SR3 XXR」を中心としたワンメイクレース、「ラディカル・カップ・ジャパン」が2027年から始まる。年間4回、合計8戦で、仙台・SUGO、栃木・もてぎ、茨城・筑波、岡山・国際の各サーキットで開催される。来年に向け、国内におけるラグジュアリーなサポート体制の構築が急ピッチで進んでいる。ピーターバラにある彼らのファクトリーを訪れると、そこにはオートメーション化とは無縁の、濃密なクラフトマンシップが支配する空間が広がっていた。コンポジット成形からフレームシャシー製作、テストベンチによるエンジンチェックにいたるまで、すべてが人間の目と手によって厳密に管理されている。職人たちは、自分が手作業で組んだコンポーネントが世界のサーキットを走ることに強い誇りを持っているのだ。

彼らが追求するのは、目先の販売台数の拡大ではない。重要なのは、持続可能性と顧客との深い結びつきだ。オーナーが可能な限り長くラディカルの世界に留まり、マシンをステップアップしながら、世界中のサーキットを仲間と共に転戦していく。そんな強いロイヤルティの構築こそが、このブランド最大の財産であろう。

無駄を極限まで削ぎ落とし、走る歓びの本質だけを研ぎ澄ましたドライビングマシーン、ラディカル。まずはその名を覚えてほしい。30年間、ブレることなく磨き続けられたその明確な哲学が、人生をよりアクティヴに、より豊かに愉しむための新たなライフホビーとして、日本のエンスージアストたちを虜にする日はすぐそこまで来ていると思う。

■関連情報
Radical Japan

文/西川 淳 写真提供/Andrew Coles・Radical Motorsport

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