アストンマーティンは、先日発表した新型VantageロードカーとVantage GT3レーシングカーに続き、新型Vantage GT4を発表した。このパートナーであるレーシングチームや熱烈なサーキットファンをターゲットとしたVantage GT4によって、アストンマーティンの強力なGTラインアップが完成し、サーキット走行からF1まで、ブランドのモータースポーツへの情熱が明確に示された。
今回の新型Vantage GT4は、先代モデルの卓越した実績に基づいて開発されており、GTレースのジュニアカテゴリーでの即戦力になると確信している。最新のVantage GT4は、新型Vantage ロードカーに採用された性能および技術面の向上の恩恵を受け、シャシー、エアロダイナミクス、ドライブトレイン、効率性能などに多くの改良が加えられ、アストンマーティンの最新マシンの競争力をかつてないレベルに高めている。
アストンマーティン・ラゴンダのチーフブランド&コマーシャルオフィサーであるマルコ・マティアッチ氏は、次のように述べている。
「新型Vantage GT4は生まれながらの勝者です。センセーショナルな新型Vantage ロードカーに採用された大幅な性能向上の恩恵を受け、Vantage GT3と並行して開発されたVantage GT4は、当社のロードカープログラムとレースカープログラム間のシナジーが高まっていることを示すものであり、ロードカーとしてクラス最高のパワーと技術が、サーキットではレースに勝つ走りにつながります。
新型Vantage GT4の発表により、アストンマーティンのパートナーチームとさらに緊密な関係を築くことができるようにもなりました。現在、世界のさまざまなGTレースで40を超えるパートナーが積極的に参戦しており、その多くは複数のマシン、および複数のクラスで参戦しています。こうした幅広い参戦によって、あらゆるレベルのモータースポーツ競技への当社のコミットメントが示されるだけでなく、スポーツカーレースやル・マンでの私たちの活躍を通じて、当ブランドに魅了された多くのファンやフォロワーの幅広いコミュニティとの緊密な関係構築への取り組みも明確になります」
なお新型Vantage GT4もVantage GT3と同様、アストンマーティン・レーシング(AMR)によってデザイン、設計、製造されている。2005年以来、アストンマーティンの公式GTレースのパートナーであるAMRは、今や伝説となったDBR9以来、市販車と同じ装備を持つすべてのアストンマーティンGTレーシングカーを手がけている。この極めて重要な継続性と他の追随を許さない深い知見が、そのままVantage GT4のプログラムに反映されている。
アストンマーティンVantage GT4のプログラムは、数々の成功を収め、複数のタイトルを獲得した現行のGT4カーを基に構築され、新型Vantage ロードカーに用いられたさまざまな成果を活用して、新世代レーシングカーでさらなるパフォーマンスを達成している。
アストンマーティンの耐久モータースポーツ責任者のアダム・カーター氏は、次のように説明している。
「新型Vantage GT4は、従来のマシンを大きく進化させたものです。アストンマーティンのロードカーとレースカーのプログラム間のシナジーをより高めることで、チームやドライバーに高く評価されてきたGT4の主要な特質は保持する一方で、AMRは新型Vantageロードカーに施された改良を活用し、スピードと効率を向上させることができました」
そして、厳しいレギュレーションにより、Vantage GT4は市販モデルと非常に近い装備を備えており、レースカーはロードカーの構造およびメカニカルアーキテクチャの約80パーセントを共有している。その中心となっているのがボンデドアルミニウムシャシー(接着アルミニウムシャシー)で、ボディワークが取り付けられる前に、厳しい安全要件を満たすために完全にカスタマイズされたロールケージが装着される。
また4.0リッター・ツインターボV8エンジンとトランスミッションは、いずれもVantage ロードカーのコンポーネントをベースにしており、主な変更点は電子制御システムとなる。前者にはボッシュモータースポーツ製ECUとAMRが開発した特注のソフトウェアが、後者にはZF/AMRモータースポーツ・ソフトウェアが搭載され、市販車標準のオートマチック・トランスミッションを制御。特注のソフトウェアは、8速トランスミッションをオートモードなしの6速パドルシフトに「変換」し、巡航速度での燃費向上のために装備された、公道走行可能なオーバードライブ・レシオの7速と8速をロックアウトするようになっている。
電子制御システムの変更は、主にエンジンの管理とターボ制御システムを正確にコントロールし、GT4選手権の主催者が定める厳格なBoP(性能調整)の基準を満たすために行われる。また、こうした変更が行われたおかげで、ギアシフトを最適化し、モータースポーツ特有のトラクションコントロールを作動させることもできる。なおVantage GT4のコックピットには、ロードカーの計器表示に代わる最新のボッシュ製DDU 11ディスプレイも搭載されている。
シャシーの改造もレギュレーションの影響を受けている。インボードサスペンションの取付位置は市販車と同じだが、サスペンションリンケージに若干の変更が認められている。こうした措置は、レーシング用途に適切なキャンバーの範囲を確保するためであり、また、新型車に装着される21インチホイールよりもかなり小さい、18インチ径のホイールとタイヤのパッケージに適合させるため。Vantage GT4には、AMR仕様の特注鍛造のアルミホイールが新たに採用されている。
さらに、ダイナミックパッケージで注目されるのは、AMRと有名なサスペンション・メーカーとの技術提携の一環として提供された、新たな2ウェイ調整式KWダンパーとなる。過去6年間にわたるドライバーからの膨大なフィードバックに基づいて開発された新型車は、そのドライビング・ダイナミクスを通じて、より正確でコントロールしやすい感覚を呼び起こす一方で、従来のVantage GT4がドライバーから好評を博していた扱いやすさや操作性も維持している。
デザインについてはレギュレーションによりわずかな変更しか認められていないため、Vantage GT4の外観は、新型Vantageのデザインに酷似している。したがって、GT4のエアロダイナミクスパッケージの最適化には、数値流体力学(CFD)が用いられた。アストンマーティンのデザイン部門からの意見に基づき、こうした変更のすべてが最終デザインに確実に反映される。
そしてVantage GT4のボディ・パネルの大半は、標準的な市販モデルのものとなる。ボンネットは例外で、エアアウトレットが装備されており、サステナブルな天然亜麻繊維の複合材で作られ、コルクの芯材で補強されている。GT4レギュレーションでは、空力の変更も制限されている。つまり、新型Vantage GT4の場合、大型のフロントスプリッターを装備し、新しいリアウィングが追加されることになる。その結果、従来のVantage GT4に比べてダウンフォースが増加し、空気抵抗が減少する。
また、気流管理、特にエンジンとブレーキへの冷却気の管理にも注意が払われている。どちらも新型Vantageのデザインから恩恵を受けており、ラジエーターの開口部が大きくなったことで、エンジンの冷却システムに流れ込む空気量が増えた。さらにブレーキへのダクトエアも大幅に増加しており、リアウイング上の気流を乱すことなく、この2つが改善されたことは重要なポイント。
このように徹底した開発プログラムを完了した新型Vantage GT4は、先月アメリカ・フロリダ州で開催されたロレックス・デイトナ24時間レースのIMSAミシュラン・パイロット・チャレンジで国際レースデビューを飾った。現在、生産は順調に進んでおり、すでに数台のマシンが顧客チームのもとに届いているほか、AMRは2024年シーズン中に40台以上のオーダーを受注生産するために多忙を極めている。
2009年に世界の舞台に登場して以来、アストンマーティンVantage GT4はさまざまなモデルチェンジを経て、世界中のGTシリーズや耐久イベントで常にクラス優勝を果たしてきた。そして2018年の発売以来、従来のVantage GT4は数々の素晴らしい評価を得てきた。それは、数多くの国際耐久レースや国内のGTシリーズ、国内のクラブレースイベントやサーキット走行会で Vantage GT4を選択したチーム数に反映されている。
この勢いを持続させ、こうした遺産を引き継ぐことで、新型Vantage GT4はプロレーサーにもアマチュアの熱狂的なファンにも最適な選択肢となり、チームとドライバーが勝利を目指して挑戦できる、スピード、信頼性、操作性を備えたパッケージを提供する。