フェラーリは、スペシャル・プロジェクト・プログラムのワンオフ・シリーズの新しいV8モデル「HC25」を、2026年5月15日(現地時間)、サーキット・オブ・ジ・アメリカズで開催中のフェラーリ・レーシング・デイズで発表した。フラヴィオ・マンゾーニ氏の指揮の下、フェラーリ・デザイン・スタジオがデザインしたHC25は、F8スパイダーをベースとしたミッド・リアエンジンのV8モデルで、そのレイアウト、シャシー、内燃エンジンを受け継いでいる。このHC25が加わったのは、最もエクスクルーシブなセグメントとなる。このグループに属するユニークな車両は、たったひとりの顧客の希望に沿って、スケッチを書き起こし、製造されたもので、跳ね馬の中でもパーソナライゼーションの頂点に位置する。
このHC25は、フェラーリのミッド・リアエンジン・スパイダーのフォルムとデザイン要素を、大胆な未来志向の視点で再解釈するという野心的試みから生まれた。ベースとなったF8スパイダーは、ノンハイブリッドのターボV8をミッド・リアに搭載する跳ね馬最後のオープントップモデル。HC25は、そのプラットフォームを基に開発されたが、ベースモデルとの違いは歴然。
HC25 のスタイリングは、豊満で官能的な印象はそのままに、タイヤ周辺にフェラーリモデル特有の力強さを表現しており、ほとんどF80のデザインを思わせる。一方では、名高いミッド・リアエンジンV8プラットフォームの物語を締めくくり、もう一方では、フェラーリが 12チリンドリやF80といったフラッグシップ・モデルで選んだ未来的な方向に進んでいる。フォルムはピュアでシンプル。この印象は、シャープな盛り上がりで縁取られた直立するサイドボディが起因する。はっきり彫り込まれたラインや幾何学的なリズムは、車両の様々な面をつないで生み出すフェラーリならではの自然な官能美と調和している。
さらにHC25を特徴づけているのが、グラフィック要素の強力な個性。デュアル・ボリューム構造による相互作用によって、フロントとリアが2つの異なるボディに見え、中央を包み込む極めてる次元的な帯が前後を結び付けている。機能的な黒いリボンに見えるこのエレメントには、ラジエーター用のエア・インテークや、車両の心臓であるパワートレインからの排熱口など、熱管理に不可欠なコンポーネントが組み込まれている。
そしてそのデザインは力強く、決然としている。サイドビューには、矢のような形で流れる帯によって、勢いが生まれている。この帯は、リア・タイヤの下部から前方へ走り、ドアで上方向にカーブして、彫り込まれたハンドルへ、さらに後方へ流れてリア・スクリーンに溶け込んでいる。この動きは、筋肉質なリアを強調するようデザインされており、視線を前方へ押し出すような効果が生まれて、キャビンのボリュームがダイナミックに前方へシフトしている。またドア・ハンドルは、アルミニウムの塊から削り出された長いブレードと一体化しているため、一見したところハンドルだとわからない。このブレードは、中央の黒いリボンで分割されたボディシェルの両側に、橋をかけるように伸びている。
加えて、HC25のプロポーションは、ガラスの視覚的影響を最小限に抑え、車体のシルエットを形作るショルダーラインが低く見えるように整えられた。照明ユニットは、デザインにシームレスに溶け込んでいる。フロントのヘッドライトは、このモデルのため特別に作られたものとなる。どのフェラーリにも使われたことのないモジュールを採用して、レンズを非常に細くし、中央に刻みを設けて、テールライトの分割デザインと完璧に調和させた。DRL(デイタイム・ランニング・ライト)は、初採用の縦長の配置で、フロント・フェンダーの先端を利用して、特徴的なブーメラン形状を作り出している。
さらに光沢のある面とマットな面を対比させることで、理想的な相互作用を生み出した。ボディのマットなムーンライト・グレーによって、フォルムに硬く充実した印象が生まれ、そこを貫く光沢のある黒い帯との間に、大胆な力強いコントラストが生まれている。アクセントになっているのが、フェラーリのロゴとブレーキ・キャリパーのイエロー。これはキャビンにも反映され、高機能ファブリックの洗練されたグレーと、サイドボディおよびDRLのブーメラン形状を思わせるグラフィックのイエローとの間に、同じ対比が見られる。
またホイールも、大胆で特徴的なデザインとなっている。5本スポークの構造がリム外側のダイヤモンド仕上げを際立たせており、外縁部の二重の溝には、ホイール全体を大きく見せる効果がある。ダイナミックな形状の細いスポークは、暗いトーンで仕上げて、内径を強調している。
このスペシャル・プロジェクト・プログラムの目的は、クライアントの要望に添ったエクスクルーシブなデザインを特徴とするユニークなフェラーリ(ワンオフ)を生み出すことで、そのクライアントが唯一無二のモデルのオーナーとなる。各プロジェクトは、クライアントのアイデアを出発点とし、フェラーリ・デザイン・スタジオのデザイナーチームと一緒に開発される。車両のプロポーションとフォルムを決定したら、デザインを詳細に検討し、スタイリング用クレイモデルを製作した上で、新ワンオフの製造工程に入る。全工程には平均で約2年を要し、その間、クライアントはデザインの評価や検証プロセスに密接に関わる。こうして、跳ね馬のロゴを装着し、マラネッロ生まれの全モデルと同じ卓越した水準で設計されたユニークなフェラーリが誕生する。
関連情報:https://www.ferrari.com/ja-JP/magazine/articles/hc25-debuts-in-texas
構成/土屋嘉久