フェラーリは、2025年10月9日、キャピタル・マーケット・デイにおいて、2030年に向けた戦略計画および今後の10年間にわたりブランドの目標達成を推進する各種施策を発表した。
新たな計画と2022~2026年計画の共通の指針は、「独自性」「技術的中立性」「生産の柔軟性」「顧客重視」にあり、2022~2026年計画は、現在、掲げたコミットメントと完全に整合しつつ、最終段階に近づいている。2022年以降の主な成果としては、製品ラインアップの充実が挙げられる。2026年までに計画されている15モデルのうち、すでに14モデルを発表した。また、顧客層の拡大とともに、コレクターへのサポートも継続している。加えて、マラネッロにeビルディングを開設し、電動化に向けた戦略的コンポーネントを社内で生産できる体制を整えるとともに、技術的中立性も確保した。これに合わせて新たな塗装工場の建設も開始し、さらなる社内カスタマイズ対応が可能となる。スポーツ分野では、ル・マン24時間レースヘのハイパーカーカテゴリー復帰を約束どおり果たし、3年連続優勝という偉業を達成した。
この新たな計画は、これらの成果を基盤とし、ブランドのあらゆる領域、レーシングカー、スポーツカー、ライフスタイルにおいてさらなる目標達成を目指すものとなる。勝利はあらゆる競技における同社の最優先事項であり、今後も変わることはない。同時に、F1、WEC、ハイパーセイルでのレーシング活動を通じて幅広いファン層にアクセス可能であり続け、次世代にわたってブランドの存在感を維持していく。スポーツカーにおいては、創業者の信念である「市場の需要よりも1台少なく販売する」という方針を守りつつ、希少性を維持していく。フェラーリを所有することは、日々育んでいる顧客コミュニティとともに、かけがえのない体験を享受することを意味する。そしてライフスタイル分野においても、フェラーリのDNAに沿った差別化されたブランド表現を提供することで、顧客体験をさらに豊かにし、幅広いオーディエンスとのエンゲージメントを深めていく。
フェラーリは、独自性を生み出す特質を守りつつ、革新と卓越性への取り組みを改めて表明。この戦略の一環として、同社は、2026年から2030年にかけて、年間平均4モデルの新型車導入というペースを維持することを改めて確認。各モデルは、それぞれ異なるポジショニングで設計され、異なる顧客プロフィールに合わせた仕様となる。これは同社の戦略である「フェラーリはフェラーリスタごとに異なり、異なる瞬間に応じて異なるフェラーリを提供する」に沿ったものとなる。顧客中心主義のアプローチと、現状の市場環境および今後の動向を踏まえ、2030年のスポーツカーモデルラインアップは、内燃機関(ICE) モデルが約40% 、ハイブリッドモデルが約40% 、電動モデルが約20%の構成となる予定。
今年の10月8日、テクノロジー&イノベーション・ワークショップにおいて、フェラーリは、2026年末に納車を開始するFerrari Elettricaの量産仕様シャシーおよびパワートレインを公開した。これはフェラーリの歴史における新たな章の幕開けであり、電動技術をフェラーリ独自の哲学に則って解釈する形で実現されている。フェラーリのクルマは常に、感情を揺さぶり、卓越したドライビング体験を提供し、オーナーを魅了することを目的に設計されている。Elettricaも同様の志をもって開発され、電動時代においても妥協のないフェラーリならではのスポーティネスを実現し、顧客に選択肢として差別化された体験を提供する。このように幅広いモデルラインアップは、あらゆるニーズに対応することができるという競争優位性を維持している。これにより、同社は、フラットな製品多様化戦略を追求でき、各モデルは限定生産とすることで希少性を確保している。
そしてフェラーリの独自性は、すべての顧客、そして私たちが手掛けるすべてのクルマの独自性を映し出している。現在、同社の顧客が所有するすべてのクルマは、階層化されたオーダーメイドのアプローチにより、唯ー無二のパーソナライズが施されている。この取り組みは、2027年に東京とロサンゼルスに開設予定の新たなテーラーメイド・センターや、同年開設予定の新塗装工場により、さらに強化される予定となっている。
フェラーリのもうひとつの特長は、その普遍的で時代を超えたキャラクター。ブランドの独自性は、他に類を見ないデザインに表れており、それが真の自動車アイコンを生み出してきた。また、技術面にも自然に表現されている。戦略的なコンポーネントは、すべて社内で開発しており、製造における卓越性の伝統に則ることで、技術の独自性を確保し、将来にわたる部品の供給を保証している。フェラーリならではの爽快なドライビング体験は、顧客向けの独自プログラムと結びつき、コミュニティの共有する情熱を祝うイベントとして提供されている。
フェラーリは創業以来、約33万台のクルマを生産しており、そのうち90%以上が現在も現存し、継続的なケアを必要としている。顧客サービスも同様に重要な柱であり、定期的なトレーニングと評価を受ける180の正規ディーラーネットワークを通じて提供されている。これらのディーラーは間もなく刷新された企業アイデンティティを採用する予定となっている。提供されるサービスには、メンテナンスや保証も含まれ、すべてのパワートレインにおいて車両のライフサイクル全体をカバーする形で標準化・延長されている。この商業戦略は、顧客のロイヤリティ向上という形で成果を上げている。現在、アクティブな顧客は9万人に達し、2022 年以降、約3万2,300名の新規顧客を獲得した。さらに、コレクターの45%は2022年以降に新たに加わった方々であり、コレクターが所有するフェラーリ・スポーツカーの台数も20%増加している。
フェラーリの継続的な革新の精神は、常に顧客の願望に焦点を当ててきた。同社は、顧客に対してクルマの動力源を自由に選択できる真の選択肢を提供することを信条としている。しかし、どのパワートレインであっても、フェラーリはすべて、ドライビング体験の核心である力強い感情を呼び起こすよう設計されている。製品ポートフォリオの開発においては、技術的中立性と生産の柔軟性という原則により、内燃機関、ハイブリッド、電動の各パワートレインを、さまざまなボディスタイルやシャシー構成と組み合わせることが可能。これにより、真に独自のドライビング体験を提供するスポーッカーを生み出している。フェラーリは、V6、V8、V12の内燃エンジンを今後も提供・進化させていく。新たな世界的規制に対応しつつ、特定出力の向上に注力し、代替燃料との適合性も確保していく。
2009年に始まった同社の電動化への取り組みは、フェラーリならではの技術アプローチの一例。高電圧バッテリーパック、eアクスル、インバーター、電動モーターなどの戦略的コンポーネントは、フェラーリの「eビルディング」で設計・エンジニアリング・手作業で製造されている。これにより、車両の技術面と性能の両方において差別化を実現。なお、バッテリーセルの生産は引き続き戦略的パートナーによって行われる。この哲学に基づき、Elettricaは革新的な発想と技術的創造性の結晶であり、フェラーリならではの感動を提供。実際、Elettricaは、ドライビングの楽しさ、車内での体験、利便性の面でラインアップを拡張し、完全にパーソナライズされたドライビング体験を実現。新世代の電動モデルは、最先端の内燃技術と電動技術を融合して開発され、電気および電子コンポーネントは社内で設計・製造される。F1および耐久レースにおけるトラックから市販車への技術継承は、フェラーリのDNAの一部であり、最近ではハイパーセイルプロジェクトとの双方向の技術交流によりさらに強化されている。スポーツカーの開発においては、多分野にまたがるアプローチが不可欠となっており、同社はオープンイノベーションの強化を続けている。一方で、フェラーリは戦略的コンポーネントを常に社内で生産しており、品質と性能を完全に管理している。他方で、市場で入手可能な最良のソリューションを開発するため、厳選されたパートナーや大学との協業もますます拡大している。
車両のダイナミクス向上のためにソフトウェアを社内開発するという選択は、ドライビング体験の差別化という原則を体現している。また、デジタルとアナログを融合したフィジタルアプローチを採用する新世代ヒューマンインターフェースの導入も同様で、車内インテリアの機能性とデザインに常に重点を置いている。
そして革新はサステナビリティによっても推進されており、環境負荷を低減する新素材の研究も進めている。ホワイトボディや社内鋳造部品には、特殊なリサイクルアルミニウム合金を使用し、従来の新素材アルミニウムに比べてCO2排出量を75%以上削減するとともに、2024年比で2030年までにフェラーリ全体のScope3 C02排出量を約6%削減することに貢献する。次世代スポーツカーに向けた投資と研究は、以下の分野に重点を置く。
・熱動力(内燃エンジン):レースでの経験を活かし、新しいエンジンアーキテクチャを試行しながら、特定出力の卓越性を追求
・電動パワートレイン:性能の継続的な向上を目指す
・車両ダイナミクス: by-wireシステムやデジタルツイン技術の活用
・車内体験:フィジタルアプローチによるユーザー体験の向上
・新素材・革新的素材:サステナビリティ、軽量化、特定用途(エンジンやコンポーネントの冷却など)に戦略的に活用
長期的には、適応型空力素材の活用や、電動モーターヘの超伝導体の応用など、さらなる機会が生まれる可能性がある。
フェラーリは、レーシングカーであり、スポーツカーであり、それ以上の存在。それはひとつのライフスタイルであり、ブランドの二面性を映し出している。多くの人々の夢を鼓舞するインクルーシブな側面と、限られた人々の夢を実現するエクスクルーシブな側面。ライフスタイルは、フェラーリのDNAの表現であり、パーソナルラグジュアリー製品、コレクターズアイテム、ユニークな体験を通じて具現化される。多層的な提供体制により、すでに車を通じてフェラーリを知る18万人のフェラリスティから、4億人を超えるティフォシまで多様な顧客層にアプローチしている。
2019年以降、この戦略はライセンスの大幅な合理化、小売ネットワークの整理、戦略的パートナーシップの強化により効果を上げている。同時に、製品のポジショニングや流通チャネルの面でも提供価値を高めてきた。「Made in Ferrari」の理念は、社内デザインチームの創設によりさらに強化され、独自のクリエイティビティ、ブランドの一貫性、ガバナンスを確保している。
そして今後も、フェラリスティのコミュニティを魅了すること、そしてティフォシの情熱を育むことに注力していく。2026 年には、ロンドンのボンド・ストリートとニューヨークのソーホーに新たな旗艦店を開設し、大きな節目を迎える。それに加え、直販イベントやポップアップを通じたプレゼンス拡大を図るとともに、限定アクティベーションからマラネッロおよびモデナの世界クラスのミュージアムまで、記憶に残る体験を創出し続ける。
2021年以降、フェラーリはScope1および2の温室効果ガス排出量を約30%削減した。これは主に、2024年9月にガス式トリジェネレーションプラントを停止し、再生可能電力への切り替えを行ったことによるもの。今回、フェラーリは、2030年までにScope1および2の排出量を絶対値で少なくとも90%削減し、引き続きカーボンニュートラルを維持する計画を改めて表明。ガス式トリジェネレーションプラントの停止に加え、以下の取り組みによりこの目標を達成していく。
・再生可能電力の購入拡大
・新規太陽光パネルの設置
・バイオメタン証書の購入区
Scope3に関しては、サプライヤーおよびディーラーを含むパートナーと緊密に連携し、バリューチェーンの脱炭素化に向けた取り組みを特定・実施してきた。その結果、2021年以降、1台あたりの温室効果ガス排出量を約10%削減することに成功している。2022年、フェラーリは、2030年までに2021年比で1台あたりのScope3排出量を40%削減する目標を発表した。その後、計算方法およびデータの精度向上に基づき、科学的根拠に基づくアプローチを維持しつつ、Scope3目標を更新し、その目標をより高めた。今回、フェラーリは、2030年までに、2024年比でScope3排出量を絶対値で少なくとも25%削減する見込みであることを発表。この目標は、継続的改善への当社のコミットメントを反映している。主な達成手段として、エンジンやシャシーヘのリサイクルアルミニウムの活用、およびサプライヤーやディーラーとの協力の継続を挙げている。
フェラーリは、進歩は知識によって推進されると信じている。教育への歴史的な取り組みに忠実であり続け、次世代の卓越性を育むことで地域社会への還元を続けている。同社の教育プロジェクトは、革新性を中核に据え、マラネッロ、エミリア=ロマーニャ州全域、そしてイタリア全土における取り組みへの支援を強化している。今回、フェラーリは、地域発でありながら世界に向けたプロジェクトとして、M-TECH Alfredo Ferrariを発表。マラネッロに設立されるこの高度技術トレーニングセンターは、フェラーリ、Agnelli財団、マラネッロ、モデナ、エミリア=ロマーニャ州の協力により実現する。この新たな取り組みは、フェラーリ財団を通じたフェラリスティの寛大な支援によって支えられており、高度な専門教育を提供するとともに、世界の自動車産業における革新を推進する次世代の技術者・エンジニアを育成することを目的としている。
フェラーリ会長ジョン・エルカーン氏は、次のように述べている。
「新型Ferrari Elettricaを適じて、私たちは再び、技術の規律、デザインの創造性、そして製造のクラフトマンシップを融合させることで前進する意志を示します。同時に、マラネッロに開設される先駆的教育拠点M-TECH Alfredo Ferrariの発表を誇りに思います。ここでは、世代を超えたエンジニア、技術者、イノベーターたちが育成され、剌激を受けることになるでしょう。これらのマイルストーンは、私たちの最も深いコミットメント社員、イタリア、そしてフェラーリの独自性を守り続けることを象徴しています」
フェラーリ最高経営責任者ベネデット・ヴィーニャ氏は、以下のように語っている。
「フェラーリの真の独自性は、ヘリテージ、テクノロジ一、そしてレースという三つの要素の交差点にあります。私たちの創業者の教え、先見性に富む精神、不可能の限界を大胆に再定義しようとする意志、そしてモータースポーツヘの深い情熱は、今日のフェラーリを形づくる根幹であり、今後の10年に向けた私たちの志を導く原動力でもあります。この志は、フェラーリという企業を構成するあらゆる領域に息づいており、私たちのチームの献身と、すべてのステークホルダーの信頼によって実現されていくのです」
関連情報:https://www.ferrari.com/ja-JP/
構成/土屋嘉久