豪華客船の旅というと、高価なうえに長期休暇が必要だから、リタイアしてからのんびりというイメージもあるが、実は比較的短期間で意外にリーズナブルなプランもある。英国の客船「クイーン・エリザベス」が横浜港に停泊中、メディア乗船体験イベントが開催された。船内の様子とともに、非日常が体験できる船旅の魅力を紹介したい。
キュナードが展開する「クイーン・エリザベス」は、全長294メートル、9万900トンで、客室数1045室の客船だ。港に近づいただけで、その巨大さに圧倒される。レストランやガーデンラウンジなどの内装リニューアルのほか、キュナードの最新船である「クイーン・アン」でも人気のウェルネス・カフェなども登場し、近年のヘルシー志向にも対応し変化している。ただ、日本ではまだまだハードルが高い印象がある客船の旅。それは、船旅=長期間の休暇が必要ということだ。実は、10日以内のコースもあり、一部を除き、食事なども含まれているとなると、意外に手の届く金額のプランもあることから、乗船イベントに参加した取材陣の数名から「申し込みたい」という声もちらほら。
キュナードが展開する船旅は、欧米やオーストラリアを中心に、海外では国内外の旅行の選択肢のひとつとして選ばれていて、日本でも、その思考は広がってきており、30~50代のビジネスパーソンにとっても、クルーズは「日常から切り離された上質なリセット時間」として注目されている。船旅ならではの楽しみ方とともに、「クイーン・エリザベス」の内部を見てみよう。
船内見学のスタートは、グランド・ロビーから。初代クイーン・エリザベスをモチーフにした寄木細工が飾られ、カウンターでは、次の寄港地でのオプショナルツアーの申し込みや、船内でのイベントの案内などがあり、ホテルのフロントのような役割を果たしている。螺旋階段のある広い空間は、ここが船内であることを忘れさせる。
船旅の醍醐味の一つが、ドレスアップして参加するフォーマルナイトだ。こちらのクイーンズ・ルームでは、毎回、違うテーマで開催され、そのテーマに沿ったドレスコードで参加する。フォーマルだけでなく、スマートアタイア、ファインカジュアルなどもあり、寄港する地域によってもさまざまなドレスコードが設定されているという。乗船中にどのようなテーマのフォーマルナイトが予定されているかは事前に知らされているため、乗船前に準備しておくことができる。準備ができなくても、船内のショップで購入が可能だ。一番人気のテーマは、マスカレードだそう。せっかくだから、より非日常を体験したいということなのかもしれない。
毎晩開催されるパーティーだが、のんびりくつろぎたいと思う日もあるだろう。17時以降にドレスコードが適応されているところが多いが、ビュッフェやイングリッシュパブは、ドレスコード適応外だ。キュナードオリジナルビールを飲みながら、のんびり過ごすというのも贅沢な時間だ。
デント社製の時計を挟んで、イングリッシュパブの反対側には、カジノコーナーもある。日本のようにカジノが合法ではない国の領海外でのみ営業。ブラックジャックやルーレットなどディーラーのつくテーブルから、スロットマシーンまで本格的なカジノ施設が整っている。カジノは、船旅以上にハードルが高いのではないかと感じるため、ここで少し体験してみるのも旅の思い出になりそうだ。
プールはもちろん、スポーツジムやピックルボールができるコートなどもあり、しっかり体を動かすこともできる。
毎晩、2回行われる「ロイヤル・コート・シアター・カンパニー」ショーも見逃せない。今回、特別にメディア向けにお披露目された。大ヒット映画「グレイテスト・ショーマン」の人気曲も登場したダンスや歌のショーは、予想以上に本格的で魅力的だった。このショーも追加料金なしで楽しめる。
ショーのほかにも、著名人や専門家による講演「キュナード・インサイト」が行われ、芸術、歴史、科学、自然などテーマも多彩だ。日本発着のクルーズでは、元英国王室執事の方によるロイヤルファミリーのために働くとはどういうことなのかという講演が行われたという。ワインテイスティングイベントやカクテル講座といった興味をより深めるイベントも開催される。
約6000冊の蔵書を備えたライブラリーもある。乗船客が持ち込んだ本もあり、日本語の小説などもあり、読書も楽しむことができる。PCも完備されているが、自分のPCを持ち込めば、いつも通りの環境で仕事もできる。どこかの国に寄港していなければ、インターネットの環境が不安定になるのではないかと聞いてみると、「高速衛星回線を採用しているので、海の真ん中でもつながります。なので、ネット環境が悪くて連絡できませんでしたという言い訳が、今後できなくなります。」(キュナード広報)
体験者に聞くと、オンライン会議もなんの支障もなかったとのこと。せっかくの旅の途中に現実に戻らなければならないが、逆に言えば、リモートワークと変わらず仕事ができ、そのほかの時間は、旅を満喫できるというわけだ。急遽の出社はできないが、これなら10日間の旅のハードルはぐっと下がるだろう。
豪華客船の旅というと、筆者は「タイタニック」の映画くらいしかイメージできなかったが、ラグジュアリーホテルライフを満喫しながら、次の目的地に向かうことができる、ある意味、時短の旅になるのではないかと感じた。というのも、一般的には、なんらかの交通手段で移動し、目的地を楽しみ、宿泊する。その宿泊した場所から翌日移動するが、船旅の場合は、宿泊しながら次の目的地を目指す。
また、船からのみアクセスできる観光地での特別な体験も可能だ。そんな理由から、アラスカへの旅は人気だという。食事(一部を除く)や船内のアクティビティがクルーズ代金に含まれているのも安心だ。
クイーン・エリザベスは、5月下旬に日本を離れ、アラスカへと向い、次回の日本クルーズは現時点では予定されていないが、同じくキュナードが運航する最新の客船「クイーン・アン」は、2026年2月22日から5泊のクルーズが運航予定と、アジア地域での短期クルーズも予定されている。発着地を選ばないなら、人気のアラスカクルーズは、直前割引(2025年8月21日~8月28日分)で7泊の旅が、大人一人7万円から販売中だ。早くから予定が立てられない場合、直前割引をチェックするのもおすすめ。リピーターも多いという豪華客船の旅。非日常体験で、新たなパワーをチャージできるかも。
・キュナード
https://www.cunard.com
取材・文/林ゆり
※本記事はWebマガジン「@DIME」から転載しています。