2025年5月9日、英国のプレミアムスポーツカーブランドであるアストンマーティンは、公道とサーキットの双方で高いパフォーマンスを発揮する、究極のドライバーズ・スーパーカー「Valhalla(ヴァルハラ)」の完成モデルを公開した。アストンマーティン「ヴァルハラ」は、999台の限定生産で価格は1億2890万円。2025年第2四半期から生産を開始する。
アストンマーティン「ヴァルハラ」は、2019年のジュネーブモーターショーでワールドプレミアされた新型ミッドシップスーパーカー「AM-RB 003」がルーツであることは、今回公開された完成モデルに03と書かれていることが証明している。当初は、2021年後半から納車を開始する予定だったが、ここまで延びたのはクルマの性能向上を追求したこと、そしてコロナウイルス感染拡大の影響によるものと考えられる。
アストンマーティン「ヴァルハラ」のボディサイズは、全長4727mm×全幅2014mm×全高1161mm。ホールベースは2760mmとなっている。「ヴァルハラ」のシャシーは、最高の剛性かつ最軽量を実現したカーボン製モノコックを採用。乾燥重量1655kgという軽量の実現に貢献し、高いパワーウェイトレシオを実現している。「ヴァルハラ」のカーボン構造は、アストンマーティン専用に開発された独自の技術によって生産されている。構造の上部・下部は樹脂トランスファー成形プロセスとF1由来のオートクレープ技術が組み合わされている。さらに、カーボンタブの前後にはアルミニウム製のサブフレームを取り付けており、フロントにはF1スタイルのプッシュロッド式サスペンション。リアには非常に効率性の高い5リンク式サスペションを採用している。
アストンマーティン「ヴァルハラ」の外観デザインは、「機能が形を決める」という理念をさらに進化させ、効率的なパフォーマンスと新の美しさを兼ね備えている。前方に跳ね上がるディヘドラルドアは、スーパーカーらしいドラマチックな演出を加える一方で、モノコックとドアの設計やエンジニアリングが追求された結果だ。
またインテリアは、低いヒップ・トゥ・ヒールのシートポジションを実現する高い位置のフットウェルと最大限のサポートを提供する軽量一体型のカーボンファイバー製シートが特徴。このシートポジションにより、快適さを損なうことなく、ドライバーの車との一体感をさらに高めてくれる。また、ステアリングホイールもF1の影響を強く受けているのがわかる。
搭載されているパワートレインは最高出力828psを発生する4L V8ツインターボエンジンと合計251psを発生する3つの電気モーターを組み合わせたシステム合計1079ps、1100Nmを発生するプラグインハイブリッドシステム(以下PHEV)だ。2基の電気モーターはフロント・アクスルに搭載され、残りひとつの電気モーターは新型8速DCTトランスミッションに組み込まれており、リア・アクスルのみに駆動力を供給。エンジンは運転席後方に搭載され、駆動方式はフロントタイヤをモーター、リアタイヤをエンジンとモーターで駆動させる4WDとなっている。
フロント・アクスルとリア・アクスルは物理的に接続していないが、最先端のIVC(インテグレーテッド・ビークル・ダイナミック・コントロール)とインテグレーテッド・パワーブレーキシステムが両アクスルを継続的に制御する。さらに、フロント・アクスルのトルクベクタリングとリア・アクスルの電子制御リミテッドスリップ・ディファレンシャル( E-デフ)により、走行状況に応じて四輪の駆動力を調整し、安定性が高く俊敏なハンドリングを実現している。
アストンマーティン「ヴァルハラ」は4つのドライブモードを設定し、ドライバーはロータリースイッチで自由にモードを選択することができる。デフォルトは、スポーツモードだが、ドライバーは手動でピュアEV、スポーツプラス、レースのいずれかを選ぶことが可能。各モードは、パワートレイン、サスペンションの硬さ、アクティブエアロ、ステアリング・キャリブレーションの設定が異なっており、それぞれ特徴を活かした走行性能を発揮する。また、ピュアEVモードではフロント・アクスルの2つのモーターのみを駆動させ走行する。航続走行距離は14km、最高速度は140km/hに制限されている。ちなみに「ヴァルハラ」は、ヴァルキリーで得た知見をフィードバックしたアクティブエアロダイナミクスを採用し、600kgを超えるダウンフォースを生み出す。この数値は時速240km/hで達成し、350km/hの最高速度に至るまで維持される。
また、究極のドライバーズ・スーパーカーという位置付けを反映し、アストンマーティン「ヴァルハラ」には異なる走行状況に応じて希望する介入レベルを迅速かつ簡単に設定できる、選択可能なADASモード(アドバンスト・ドライバー・アシスタンス・システム)を導入している。運転支援機能を装備し、エンジンだけでなくバッテリーも保護する冷却性能を採用した公道を走行可能なレーシングカーのアストンマーティン「ヴァルハラ」。1億円オーバーというプライスは割安に感じてしまうほどのハイスペックスーパーカーが誕生した。
■関連情報
https://www.astonmartin.com/ja/models/valhalla
文・写真/萩原文博