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2025.02.24

スポーツとラグジュアリーの新境地を目指す、ポルシェの新型「パナメーラ」

スポーツカーブランドとして揺るぎない地位を確立しているポルシェ。その代名詞たる「911」を筆頭に、「ボクスター」や「ケイマン」といったコンパクトなミドシップスポーツカー、そして「カイエン」や「マカン」といったSUV群は、いまやポルシェの経営基盤を支える稼ぎ頭に成長した。そして、もうひとつの重要なピースであるセダンのカテゴリーを担う「パナメーラ」も、ラインナップに欠かせない存在となっている。今回はその最新型を試した。

ポルシェ渾身の一手

ポルシェといえば、誰もが思い浮かべるのはリアエンジン・後輪駆動(RR)のスポーツクーペ「911」だろう。このモデルは、ポルシェのブランドアイデンティティを象徴する存在であり、同社の歴史の大半を支えてきた。その独特なメカニカルレイアウトは強大なトラクションを生み、スポーツカーとしての個性を際立たせる一方、RR特有の扱いづらさが課題でもあった。実際、ポルシェはRRからの脱却を図るべく、1970年代からフロントエンジン・後輪駆動の「924」や「944」「928」を次々とリリースしてきたものの、911のアイコニックな魅力には及ばず、現在に至るまで911がブランドのイメージリーダーであり続けている。

時を経て、そこに大きな変化が訪れたのは1990年代半ばから2000年にかけてのことだ。ポルシェは企業としての基盤をさらに強固なものにするため、フルラインナップメーカーを目指して「ボクスター/ケイマン」や「カイエン」といった新モデルを相次いで投入。それにより、911への依存を脱し、多角化を図る経営戦略を実現した。その一環として登場したのが4ドアサルーン「パナメーラ」である。このモデルはラグジュアリーカー市場に大きなインパクトを与えた。

なお、かつての「924」や「944」が「911」に代わるスポーツカーとして開発されたのに対し「パナメーラ」はGTカーの「928」の後継ともいえる存在だ。ただし「928」が2ドアだった一方で「パナメーラ」が4ドアサルーンとして開発されたことからも、このモデルがポルシェにとって重要な柱となっているのがよくわかる。

その初代モデルが登場したのは2009年。上海モーターショーで正式デビューした「パナメーラ」は、ロング&ワイドな独自のスタイリングを纏っていた。それは4ドアクーペとも呼べるが、実際には大きなリアゲートとラゲッジスペースを備えた5ドアのファストバックセダンというのがしっくりくる。デザインは安定感のある「911」のそれをトレースしたものとも見え、実際に走らせてみても高速時の安定性に優れていることを実感。ポルシェらしいスポーティさを兼ね備えた新世代サルーンの誕生に、感銘を受けた記憶がある。

その後「パナメーラ」はターボやハイブリッドモデルを追加するなどの進化を続け、2016年には初のフルモデルチェンジを実施。アルミ素材の採用範囲を拡大し、軽量化と剛性強化を図った新プラットフォームを採用するとともに、デザイン面では初代のイメージを継承しつつ、より洗練されたスタイルを実現して「パナメーラ」としての個性を深化させた。また、この世代では積載性を向上させた〝スポーツツーリズモ〟というボディバリエーションが加わったことも特筆すべき点だ。

そして2023年、3代目となる最新型「パナメーラ」が登場。基本的なスタイルやプラットフォームを踏襲しつつ、デジタル化と電動化が一層進められたのが特徴である。ボディサイズは先代とほぼ同じながら、フロントフェンダーの盛り上がりが強調され、運転席からは「911」のように左右の峰がはっきりと見えるデザインになったのが新しい。コクピットは12.6インチのメーターパネルを中心に、ダッシュセンターや助手席側にもデジタルモニターを備え(助手席側はオプション)、現代的なインテリアに進化した。その一方で、ホールド性の高いスポーティなシートがこれまでと変わらず4座すべてに備わっているのは「パナメーラ」らしいところでもある。

上質なスポーツサルーン

パワートレインは2.9ℓ V6ターボを基本に据え、上級グレードには4ℓ V8ツインターボを設定。これらにはモーターと大容量バッテリーを組み合わせたプラグイン・ハイブリッド(PHEV)仕様も用意される。ドライブトレインはそれぞれに8段PDK(ツインクラッチトランスミッション)を組み合わせるとともに、グレードによっては四輪駆動も選べるようになっている。

試乗車は2.9ℓ V6ターボエンジンを搭載するベーシックグレードの「パナメーラ」。最高出力353PS、最大トルク500Nmというスペックはベーシックとはいえ十分以上で、そのパフォーマンスに不満などあろうはずがない。2.1トン強の車体を力強く加速させ、また一方で巡航時にはペダルにそっと足を乗せてやるだけで、ラグジュアリーサルーンのキャラクターにふさわしい上品で滑らかな走行フィールを提供してくれる。もちろんストッピングパワーも申し分なく、剛性感のあるペダル操作で即座に制動力が立ち上がる点も高評価だ。

そんな新型「パナメーラ」の真価は、そのロングホイールベースとワイドスタンスを生かした高速域で存分に発揮される。新型では、2チャンバー・2バルブ方式のエアサスペンションが全車標準装備となったことが新しいが、これが走行フィールを大きく向上させているのだ。ノーマルモードでは路面の凹凸を丸めるような柔らかな印象が際立つ快適な乗り心地を示し、スポーツモードではポルシェらしい高いスタビリティをしっかりと確保。さらに、スポーツプラスモードではさらに車高が下がり、路面に吸い付くような安定感が得られる。つまりドライビングモードによる走行フィールの違いがより明確になったのである。個人的には、スポーツモードにおける、高い安定感を保ちつつも不快なショックを伝えてこない、バランスの取れた乗り心地に好印象を抱いた。

「911」というアイコンとも肩を並べるスポーティなパフォーマンスを備える一方で、ラグジュアリーサルーンらしい上質さと風格に磨きがかかったのが新しい「パナメーラ」の特徴。「911」とは異なる「スポーツ&ラグジュアリー」を高次元で融合し、その世界観を着実に進化させたこのモデルは、頼もしさに溢れている。そんなパナメーラを多くの人に楽しんでほしく思うのと同時に、ポルシェ自身がこのパナメーラをさらに大切に育て続けていくことを願ってやまない。

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https://www.porsche.com/japan/jp/models/panamera/panamera-models/panamera/

文/桐畑恒治 撮影/望月浩彦

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