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2026.09.29

美しきハイブリッドの狂気、ランボルギーニ「レヴエルトSV」と「ウルスSEペルフォルマンテ」の誘惑

環境への配慮、そしてカーボンニュートラルへ。耳にタコができるほど繰り返されてきた高尚なお題目のなかで、「跳ね馬」や「闘牛」のバッジを戴くスーパーカーたちは、一体どこへ向かおうとしているのだろうか。未来に向け、一抹の不安を抱くすべてのスピードフリーク、そして最上のラグジュアリーライフを愛する人々に、私はまずこう告げたい。

安心して欲しい。彼らの野心は、1ミリも衰えてなどいない。

ポルシェ・エンジニアリングが所有するイタリア南部の総合テストコース。イタリアにおける自動車開発の、いわば聖地。世界中のメーカーが次世代の命運を賭けたプロトタイプを走らせるこの地で、私はランボルギーニの未来を担う2台の最新モデル、「レヴエルトSV」と「ウルスSEペルフォルマンテ」のステアリングを、プロトタイプながらひと足さきに握ることができた。

そこで体験したのは、電動化という時代の要請を、自らの“狂気”をさらに研ぎ澄ますための極上のスパイスへと昇華させた、新生ランボルギーニの用意周到なビジネス戦略だった。今夏、モントレーの眩い光のなかでワールドプレミアされた「レヴエルトSV」。

V12自然吸気エンジンをリアミドに置くという伝統のレイアウトは変わらない。電気モータの出力をあげ、システム最高馬力は1065ps。ラッピングカモフラージュの施されたプロトタイプのコックピットに滑り込み、まずはローンチコントロールを試す。

フルスロットルの轟音に包まれた刹那、左足をブレーキから放すと1000馬力を超えるパワーが炸裂した。タイヤは“ギュッ”と短く鳴いただけで、派手なスキール音など一切なく、車体を前方へと弾き飛ばす。もはやタイヤの存在すら意識から消え去る。猛烈に過ぎる加速だ。そしてブレーキングがさらに素晴らしい。新しいシステムがよく“効いている”。

テスト用サーキットでは比較用にまず、標準仕様のレヴエルトから試すことに。今でも現代最高峰のスーパースポーツだ。滑らかで洗練されており、3ラップを全力疾走しても、脇にうっすら汗が滲む程度である。ドライバーをけっして緊張させないどころか、ドライビングの腕前が上がったように思わせる。

しかし、SVはさらにその先のレベルで走った。新たに加わったレースモードを選ぶ。ステアリングを切る。ブレーキを踏む。その刹那、車体全体がひと回り小さくなったかのような、凄まじい一体感だ。5速で飛び込む高速コーナーでは、進化した空力テクノロジーが路面に車体を押さえつけ、ストレートエンドでの最高速度は標準車を10km/hも上回っていた。

何より素晴らしいと思ったのは、モーター出力が高められながらも、主役はどこまでもV12エンジンにあったことだ。高回転域のサウンドは相変わらず獰猛でかつ官能的と評するにふさわしい。ライバルであるフェラーリがV8ターボの効率を突き詰めたPHEVモデル「849テスタロッサ」で勝負するのに対し、ランボルギーニはあえて伝統のV12にこだわった。電動化によってその存在感をさらに際立たせる道を選んだのだ。情緒を解する大人のためのハイエンド・ラグジュアリーの象徴と言っていい。

 一方で、ラグジュアリーなスーパーSUVというセグメントを今や完全に支配し、ブランドビジネスを牽引する大黒柱「ウルス」もまた、恐るべき領域へと達していた。かつてランボルギーニが放った伝説の元祖スーパーSUV「LM002」の誕生からちょうど40年。その血脈を受け継ぐ「ウルスSEペルフォルマンテ」は、PHEVシステムを搭載し、システム総合出力はついに812psという大台に達している。

 0-100km/h加速、わずか3.3秒というから、800psオーバーという数字も伊達じゃない。ローンチスタートを切った一瞬、自分の腹と背中が背骨と一体になったかのような錯覚に陥った。この重量級SUVが、一流のストライカーに蹴り飛ばされたかのように突進するのだ。もはや、笑うほかない。

しかし、このクルマの真の恐ろしさは、最新の電子制御ブレーキIPBと、魔法の絨毯のようにフラットな姿勢を保つエアサスペンションAURAの競演にこそある。超高速からのフル制動でも巨体はピタリと止まり、ミニサーキットのコーナーを平然と駆け抜ける。アストンマーティン「DBX S」やフェラーリ「プロサングエ」といった並み居る強敵たちが、純内燃機関の限界に挑むなか、ウルスは一足先にプラグインハイブリッドという“電気の力”を手に入れた。それは重さや背の高さという物理の法則をも越えようとする試みだ。

最新の猛牛2台が提示した未来。それは、ランボルギーニのビジネスが“環境対応のための電動化”という、言ってみればスーパーカーにとって少々退屈な義務を、置き去りにした証明でもあった。彼らにとっての電動化とは決して“牙を抜いて静かに咀嚼力を高めること”ではなかった。誰もが安全に、かつてない“インテリジェントな狂気”を味わうための手段でしかなかったのだ。

スーパースポーツのエモーションを、最新のテクノロジーでさらに過激に増幅させる。それがランボルギーニにおける電動化戦略の要諦であり、自社のプラグインハイブリッドモデルのことを、“PHEV”とは呼ばず、”HPEV”=ハイ・パフォーマンス・エレクトリファイド・ヴィークル(高性能電動化車)と表現する所以でもあった。

■関連情報
https://automotive-quantum.jp/22760
https://automotive-quantum.jp/22373

文/西川 淳 写真/ランボルギーニ

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