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2025.06.30

V12と電気が融合した“猛牛”、ランボルギーニ「レヴエルト」にみるスーパーカーの未来像

100年に一度の自動車の変革期と言われる現在だが、そのスパンは実際にはもっと短いように思う。特にスポーツカーの世界ではその動きが顕著である。それを象徴するトピックが、1965年のランボルギーニによる「TP400」という名の新しい車台の開発・発表だ。同社の創業者、フェルッチョ・ランボルギーニが、当時のスポーツカー市場におけるフェラーリの独壇場に挑戦すべく、自らの名を冠した自動車メーカーを立ち上げたのはよく知られるところ。その新興メーカーが創業からわずか2年で「TP400」と呼ばれるミッドシップレイアウトの新型シャシーを世界に向けて披露した。エンジンを車体の中央に置いたそのレイアウトは、クルマの運動性能を引き上げることに大きく貢献するものであったが、当時はまだコンペティションフィールドで活用されることが主体の特異なレイアウトだった。しかし、それをあえて市販車の世界に広く提案したのがランボルギーニであり、これを元に「ミウラ」が誕生したのである。

ランボルギーニ・ミウラは、その流麗なスタイリングとともに、ミッドシップレイアウトを武器とした高いパフォーマンスを獲得。瞬く間に世界のスポーツカーファンの心を掴んだ。その高性能はそれまでになかったものであり、一般的なクルマを超越した“スーパーカー”というジャンルが生まれたのも、これが契機だったと記憶している人も多いだろう。そして、そんなムーブメントを目の当たりにしたフェラーリは、市販ミッドシップ・スポーツカーの重要性を再認識。こうして生まれたのが、ベルリネッタ・ボクサー(BB)である。当時の技術進化は目覚ましく、300km/hという最高速も夢ではなくなりつつあった。こうした性能競争が、ランボルギーニとフェラーリという2大スポーツカーブランドの火花をより激しく散らせることとなり、その中で生まれたのがランボルギーニの「カウンタック」である。

カウンタックは、スポーツカーのデザインにおける革新性でも大きな役割を果たした。空力を意識した鋭角的なウェッジシェイプ・ボディと、ミッドシップに搭載された大排気量・高性能エンジンという構成は、まさにスーパーカーの象徴として確立された。以後それは、ディアブロ、ムルシエラゴ、アヴェンタドールへと続くランボルギーニのフラッグシップにおける“型”となってゆく。そうした系譜を受け継ぎ、アヴェンタドールの後継として誕生したのが、最新モデル「レヴエルト」である。

ウェッジシェイプのフォルム、ミッドシップ2シーターのレイアウト、そして象徴とも言えるシザースドア。外観は歴代の系譜を色濃く受け継ぐが、中身は一新。新設計のモノコックには複合素材を用い、リアミッドに縦置きされるエンジンは、これもまた新開発の6.5L V型12気筒。もちろんパフォーマンスも、それまでのユニットを凌駕する、最高出力825ps、最大トルク725Nmを標榜した。

さらに特筆すべきは、そこに組み合わされる3基の電動モーターの存在だ。ひとつは新開発の8速DCT内に、残る2基はフロントアクスルに搭載。つまりレヴエルトは、フロントのモーターが前輪を駆動し、V12エンジンとリアのモーターが後輪を駆動する、四輪駆動のPHEV(プラグイン・ハイブリッド)なのである。そのモーターも含めたシステム総合出力は驚異の1015ps。まさに“史上最強のランボルギーニ”と呼ぶにふさわしいスペックだ。

もはやスーパーカーを超越した“スーパースポーツーカー”、あるいは“ハイパーカー”とも呼べるレヴエルト。これもまた電動化による新しいカテゴリーを生み出した一台であり、パフォーマンスも明らかに別格。そんなクルマが普通に扱えるのか不安になるところだが、結論から言えば、レヴエルトは見事に躾けられた“猛牛”だった。

スーパースポーツの生存戦略

戦闘機のようなコクピット然とした、運転席からの眺めはまさにランボルギーニそのもの。適度な囲まれ感があり、大きなセンターコンソールの一番目立つ場所にスタータースイッチが鎮座する。その赤いフラップを跳ね上げるまではこれまでと同様だが、フラップの奥にあるスターターを押しても、ランボルギーニのフラッグシップV12特有の咆哮は響かない。他の一般的な電動車と同様に、レヴエルトは無音のまま起動し、するりとスタートする。

そう、それが新世代のランボルギーニ・フラッグシップの所作なのである。これを街中で披露すると、道ゆく人たちのぎょっとした顔がフロントスクリーン越しに確認できる。たしかにこの鋭利な雰囲気むんむんと醸し出すクルマが音もなくスルスルと動きだすのは、却って異様な光景かもしれない。しかし、運転している当人としては、そのマナーに感心することしきりだった。電動走行時はフロントの2個のモーターが前輪の駆動を担うが、その動き出しにはまったく違和感がない。むしろ、わずかに前輪に引っ張られるような感覚が新鮮だ。

そう感心していたのも束の間、エンジンに火が入ったその瞬間に、あの獰猛な雄叫びが響き、ランボルギーニ・ワールドが戻ってきた。その極端な二面性に、思わずにやりとしてしまう。V12の始動時にはギアボックス内のモーターの補助が効いているようで、走行中でもそこからスロットルペダルを踏み込んで加速に持ち込んでもショックは皆無。今度はリアタイヤが力強く路面を蹴り上げて、前へ前へと押し出される感覚が増していく。その鮮やかで力強い加速に加えて、高速域での空力性能の高さも印象的だ。速度を増すごとに車体が路面に吸い付くような感覚が強まり、安定感が高まっていくのである。

それが顕著だったのは超高速域でのこと。筆者は今回の一般道での試乗に先立ち、サーキットでこのモデルを体験する機会を得ていたのだが、その時に同じような感覚を味わっていた。舞台となったのは日本屈指の高速サーキットである富士スピードウェイ。その長いホームストレートで、レヴエルトはあっという間に300km/h超の高速域に達したのだが、そこに至るまでの加速の鋭さや、高速走行でのダウンフォースから生まれる安定感の高さは、それまで試したどのスーパースポーツカーをも凌駕していた。恐ろしく速いのに、恐怖を感じさせない。本来そこはレーシングカーの領域だが、レヴエルトなら“吊るし”のままでもそのパフォーマンスを存分に堪能できるのである。

さらに注目すべきは旋回性能だ。これもまた前車軸に据えられたふたつのモーターによるところが大きく、電動走行時の駆動を受け持つモーターは、一方で旋回時のベクタリング効果を生み出す役割を果たす。つまりモーターの回転を左右個別に制御することで、高い安定性と旋回性を生み出すというわけである。だからこの大きく幅広い車体からイメージするよりも、俊敏に曲がって行ける。そしてその鋭利なハンドリングは、一般道でも十二分に味わえる。

レヴエルトの始祖とも言えるミウラやカウンタックが切り拓いた“スーパーカー”というジャンルは、時代とともに変容を遂げてきた。環境意識が高まる現代においては、その存在意義が問われることもあるが、それでもなおファンに夢を見させる存在であるために、レヴエルトは生まれた。電動化という技術革新を取り込みながら、走りの情熱やドライビングファンを犠牲にすることなく、新たなステージへと突き進んでいたのである。筆者自身、レヴエルトが貫いたスタイルはもちろん、スポーツドライビングに関して、このクルマに死角はないように思え、尊敬の念を抱いた。やはり人から憧れられるようなクルマは、想像のはるか上を行っていてほしいと思うもの。レヴエルトは、そんなスーパースポーツの理想像を、見事に体現してみせた一台である。

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■関連情報
https://www.lamborghini.com/jp-en/モデル/revuelto

文/桐畑恒治 撮影/望月浩彦

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