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2024.08.20

マクラーレン「アルトゥーラ スパイダー」で行く東北グランドツーリング

梅雨が明け、本格的な夏が始まるタイミングで、マクラーレン「アルトゥーラ スパイダー」に乗った。場所は、東北のリゾート。都会から離れた環境で、オープントップで自然を満喫できるスーパースポーツを走らせる。実際に、そんなクルマの愉しみ方をしている人はどれくらいいるのだろうか。

ふと、10年以上前の出来事を思い出した。スイスのサンモリッツは高級スキーリゾートとして欧州の富裕層に人気のエリアだが、そのあたりに別荘を持っている人たちは、避暑地でもあるので夏にもよく訪れるという。高級リゾートホテルのエントランスに、1台のオープンカーが停まっていた。それは1960年代前半に200台弱しか造られることがなかったフランスの高級車だった。

おそらく、オープントップモデルは数十台しか販売されなかったはずで、今でも稀少なクルマとして人気を博している。しかもそのクルマはパリのナンバーを付けていたので、スイスまで自走してきたように思われた。そんなことを考えながら、そのクルマを眺めていると、1人の紳士が話しかけてきた。どうやらオーナーらしい。聞いてみると、

「パリから自走したのかって?いや、ここまで運んでもらったんだよ。いつもパリに置いてあってたまに走らせているんだけど、やっぱりオープンにふさわしいところで走らせてやりたいと思って、ここまで運ばせたんだ」

何と幸せなクルマだろう。パリだけではないかもしれないが、そういった富裕層を相手にしたサービスがあるらしい。「アルトゥーラ スパイダー」を購入して近所をドライブしたり、たまに遠方まで旅行に行くのも楽しいが、オーナーならあえて「スパイダー」が悦びそうなシーンで走らせてやりたい気持ちになる。そう考えると、今回試乗したコースは最適な場所かもしれない。

「アルトゥーラ スパイダー」の真価

1950年代後半からフォーミュラやスポーツカーレースで活躍し、1970年に練習中のアクシデントでこの世を去ったブルース・マクラーレンはレーシングカーだけではなく、自らの名を冠した市販スポーツカーを制作することが夢だった。その遺志を継いで、1993年に初めて数台の公道を走れる「マクラーレンF1」を発表。ハイブリッドスポーツの「P1」も制作している。

「アルトゥーラ スパイダー」は、初のハイブリッドエンジンを搭載したスパイダーモデルになる。オープンエアモータリングを楽しめるハイブリッドスーパースポーツだ。 

今回、ドライブの拠点となったのは、ANAインターコンチネンタル安比高原リゾート。東北エリアで最も注目されているラグジュアリーなリゾートだ。部屋数は37というプライベート感覚のホテルで、近くには八幡平や安比高原のワインディングがあり、スポーツカーの走りを存分に楽しめる環境だ。

サーキットでプライベート走行を楽しむのもマクラーレンらしさを堪能できて楽しいが、「アルトゥーラ」はマクラーレン初のハイブリッドスーパースポーツモデル。ゆえに、誰もが一般道でもそのポテンシャルを楽しみたくなるはずだ。上に大きく跳ね上がるディヘドラルドアを開けて、コックピットに座る。早速、リトラクタブルルーフを開けて、電動スイッチを押すと、約12秒でルーフが車体後方に収納される。ドア後方のリアピラーとウインドウは残ったままなので”タルガ風”にも見える。

スタートはEモードで。7.4kWh、95PS、225Nmの電池/モーターが「スパイダー」をしずしずと動かして走らせる。モーターでの航続距離は33km。クーペの「アルトゥーラ」より3kmだけ航続距離は長い。車両重量は1457kg。クーペと比べても62kgしか重くない。ハイエンドのオープンルーフスポーツでは最軽量だ。リゾート内の曲がりくねったアプローチ路も軽々と駆け抜けていった。

メインロードに出て、高原のワインディングに入る。Eモードからコンフォートモードに切り換えて、車速を上げる。開けたルーフから少しだけ気持ちいい高原の風が入ってくる。V6、3.0Lツインターボのサウンドも4000回転から高まってきた。

しばらくワインディングを走っていると突然の雨に。これが豪雨に変わると、たちまち路面に水たまりができる。スピードダウンしてルーフを閉める。時速50km以下ならわずか11秒程度でルーフが閉まるのがうれしい。

しばらく、強い雨の中を走る。水たまり、ミッドシップ700PS、後輪駆動の3条件が揃っていたこともあり、車速も抑え気味に走っていたが、徐々にペースが上がってきた。深い水たまりを抜けてもハンドルの安定感はどっしりで、後輪駆動でも安定している。明らかに、以前テストした「アルトゥーラ」のクーペよりハンドリング性能は向上している。

後で確認したところ、プロアクティブ・ダンピング・コントロールのサスペンションシステムの反応速度が従来モデルより最大90%も高まり、路面変化に対する反応が向上しているという。ドライバーとの一体感は間違いなくこれまでのマクラーレンのモデルより向上している。もちろんこの感覚は、コーナーからコーナーへと駆け回っている時だけではない。コンフォートモードでのオープンエアモータリングでもハンドルへの手応えの洗練さと上質さは十分に体感できるはずだ。

1981年にフォーミュラ1マシンに初めてカーボンファイバーシャーシを導入して以来、マクラーレンのスポーツカーは同じ構造を採用している。もちろん「アルトゥーラ スパイダー」もだ。お気に入りのスパイダーを日常行動の中で乗るだけではなく、お気に入りの避暑地に搬送させて、そこで乗り回す。もちろんそのようなことは日本国内だけでなく、サンモリッツのリゾートホテルまで搬送するのも、バカンスを楽しむひとつの方法かもしれない。もちろん、腕と度胸があるならモンテカルロラリーで有名なチュリニ峠でも、取り締まりはちょっと厳しいが、マルホランド・ドライブに「アルトゥーラ スパイダー」を送り込むのもよいかもしれない。

■関連情報
https://cars.mclaren.com/jp-ja/artura-spider

文/石川真禧照

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