そう思いながら、コクピットに収まった。ホールドのよいハイバックのセミバケットシート。着座位置を高めにしても、頭上のスペースに圧迫感はない。上方に開くドアでの乗降性も良い。電動スイッチを操作し、ルーフを開ける。約12秒で折り畳まれ、リアのエンジン前、室内との間に収納される。Cピラーにあたる部分は、そのまま残っている。リアウインドウも開けることはできるが、半分降りたところで静止する。
それにしても、ドアを開閉した時の剛性感は素晴らしいものがある。クーペのドアはルーフの一部と共に上方に開くが、スパイダーの場合は独自の専用ドアだが、構造的強度が強いのでコンバーチブルルーフを組み込むときに、追加の補強材は一切必要としなかったという。
そして、このボディー剛性の高さは、ゼブラ舗装の路面で、コンフォートモードの時の上下動のしなやかな収まり、スポーツモードに切り替えたときの、キツめだが短いストロークでパッと収まる収縮の収まり具合でもわかる。
「750S」の美点は足まわりだけではない。ミッドシップされたV8、4.0Lツインターボ750PS、800Nmのパワーユニットと7速ATの組み合わせも魅力的だ。街中ではDレンジ、7速、60km/h、1000回転でも、滑らかに走る。その速度域からアクセルを踏みこんでも、750PSエンジンはためらうことなく、即座にアクセルペダルに反応して車速を上げていく。100km/hの巡航は7速2000回転、6速2700回転なので、高速走行は何のストレスもなく走る。
さすがに4.0Lツインターボは、低燃費は得意科目ではないようで、10.0km/Lを上回ることはなかった。しかし、このクルマのオーナーならそれは大した問題ではなく、アクセルペダルを踏みこんだ時のV8、ツインターボの迫力が大切に違いない。0→100km/hの加速は4秒台。エンジンはレッドゾーン(8100~9100回転)手前の8000回転まで、何のストレスもなく上昇し、シフトアップを繰り返していく。この爽快感も魅力だ。
しかも、その時のエンジンサウンドは、開放されたルーフと、降ろしたリアウインドからダイレクトにドライバーの耳に侵入してくる。スパイダーのユーザーだけに許されたドライブサウンドとルーフから入ってくる風、クーペ+400万円のエキストラには、この体感も含まれているのだ。
■関連情報
https://cars.mclaren.com/jp-ja/750s-spider
取材・文/石川真禧照 撮影/萩原文博