話を「Premium edition Premium edition T-spec」に戻す。試乗車は専門誌などの試乗ですでに6000kmほどを走行している状態。低めのポジションで準備する。センターパネルにあるセットアップスイッチで、ミッション、ショックアブゾーバー、VDC-Rのレベルを選択する。ノーマルモードをキープして走り出す。ミッションはオールラウンドな動き。ショックは日常からスポーツをカバー、VDC-Rも日常走行の大半をカバーするオールラウンドな制御だ。走り出して気づくのはミッションやデフからの音が格段に小さくなったこと。静粛性は格段に向上した。
「GT-R」は2022年モデルに乗ったのが最後だったが、大きな驚きは、乗り心地だ。「GT-R」の乗り心地は年々改善されてきたとはいえ、一般公道では硬く、上下動も厳しかった。あくまでも、フラットで舗装レベルの良いサーキットでの走行用にセッティングされていた。ところが、ここ1~2年の「GT-R」の街中の乗り心地はかなり良くなってきたと思っていた。しかし、2024年モデルはさらに乗り心地が進化していた。
ショックアブゾーバーをRモードからNORMALモードに切り替えると、路面からの細かい上下動やゴツゴツとした動きがほとんど消えたのだ。タイヤ(ダンロップSPスポーツMAXX GT600)からの振動もかなり消えているのだ。正直、こんなに乗り心地の良い「GT-R」は初めての体験だった。そのセッティングのしなやかさは、低速コーナーでは時として、ボディの横揺れさえ感じされるほど。コーナーでのGではなく、ロールを体感する「GT-R」は、これまでの「GT-R」史上、初めての体験だった。それでいながら、この乗り心地のよくなった「GT-R」がつまらないクルマというと、まったく違う。
走り出してからのV6、3.8ℓツインターボの音は低く、野太い音質。そのまま5000回転をオーバーしても音は高まらない。さすがに実用的ではないが、静粛性は確実に進化している。もちろん実力は0→100km/hを3秒台で走りきる実力を保ち続けている。
リアシートは座面は長いが前席の下にクツ先が入らないので、足元の空間はミニマム。頭上はリアウインドウで、額に太陽の光があたるほど。身長160cmが限界のプラス2シート。セパレートの2人掛けは、長時間座りたくない空間だ。
さすがにレシプロ3.8ℓツインターボ+6速ATの「GT-R」は、本当に2024年モデルが最終型だろう。と同時に、これまでの「GT-R」の中で、ベストな乗り心地を完成させた。これならガマンしなくても街乗りができそうだ。
■関連情報
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/gt-r.html
取材・文/石川真禧照 撮影/萩原文博