ダウンパンツもジャケットと同様のつくりをしています。
「ゴルフのプレー中にもたつきが気にならないよう、膝から上はダウン構造、膝から下は質感なめらかなボンディング素材を採用しています」(片山さん)
膝部分しやすいように伸縮性をもたせ、ウエストの後ろ内側にはすべりにくい加工をプラス。「ゴルフはトップスをインしてプレーしますが、屈んだりするとシャツが出たりしがちです。それを都度入れ直す行為はストレスにつき、その心配は軽減されます」と片山さん。
さらにパンツのウエスト部分の後ろには切り込みが入り、ウエストに圧がかかったときに力を逃してくれる役割を持たせています。パンツにも適宜、空気を逃すベンチレーションが配され、蒸れを軽減する構造です。
ニットは「ヒートナビ」というデサントが開発した保温素材の糸に、カシミアを組み合わせ、なめらかなタッチと保温性アップを実現。この糸を「Schematech(R)」技術で部位によって編み方を変え、部分によって伸縮性の違うニットが完成。
圧倒的な着心地の良さに、シンプルなデザイン、高級感のあるビジュアルはゴルフのみならず、タウンでも活躍してくれそうです。
よく見ると、袖の内側から脇、身ごろのサイドにかけて、生地が切り替えられています。これは、ゴルフプレーをする際に脇部分がすれるので、毛足の短い「ヒートナビ」の糸を100%使うことで、毛羽立ちを防ぎつつ、温かさをキープ。機能から考えられた切り替えですが、異素材を組み合わせることで、スポーティモードな雰囲気が加わっています。
ダウンジャケットの説明が長くなったので、パンツやニットは軽く触れようと思いましたが、至るところに機能が光りすぎて、ここまで書いてもすべては語りきれません。
文字で説明すると、すべて「なるほど」という感じですが、動きに合わせた設計をし、糸をつくり、部位ごとに違う伸縮性を持たせた生地を織り上げ、ややこしいパターンの縫製をする。あらゆる面で計り知れない手間がかかっています。
服というのは、他の分野の製品より分解しやすく、同じパターンの商品を他社が真似ることは比較的容易なジャンルですが、筆者の知る限り、この「PRO」シリーズを他社が完全に再現するのはほぼ不可能。
片山さんに「これ、他社さんに“作れるものなら作ってみな”って感じですよね」と投げかけると、「まあ、そうですね」とニヤッと笑っていました。
実物を見て話を聞くと「これは10万円超えますよね、すみません」と土下座したくなってしまったほど、技術が集結しまくった「PRO」シリーズ。とはいえ、ゴルフウェアに10万円は誰しもがポンと払えるわけではありません。一体、どんな販売戦略を立てているのでしょうか?
「実はデサントゴルフをローンチした2015年から、もともとプレミアムアスリート層をターゲットにしています。アスリートゴルファーや、ゴルフの中上級者に向けて、百貨店やデジタル中心に展開していました。途中で販路を広げた時代もありましたが、今はある程度、展開流通を絞っています。
どうしても、こうした機能満載のウェアは10万円を超えてくると、商品説明をしっかりしないと売れるものではありません。なので、この良さをしっかり伝えられる店舗だけでの販売です」(片山さん)
8月に発売してからの反響はどうなのでしょうか? ※インタビューは11月に実施
「PROシリーズを発表してすぐ、露出が多かったこともあり、8月の時点から反響がありました。9月は残暑もあり少し落ちつきましたが、10月から再び売上が伸びております。」(片山さん)
本格的な寒さが来る前の時点で消化が進んでいることに、かなり手応えを感じているという片山さん。ちなみに、「PRO」シリーズの中で一番売れるか心配していたという、上下10万円超えのトレーニングウェア「PRO TRAINING」カテゴリに関しても、発売すぐに銀座の店舗などでかなりの反響があり、嬉しい驚きがあったとか。
今後の展開としては、今回のコレクションはブラックで統一していましたが、ブランドカラーのネイビーや他のカラーの展開も考えているそう。
「無理に数を売るよりも、このシリーズを長く続けていくことが重要なのです」と片山さん。実際にこのシリーズを手に取った人には、確実にデサントの技術の高さ、そして機能美が伝わっていくはずです。
・デサント「PRO」 https://store.descente.co.jp/descente/feature/pro
取材・文/安念美和子