空き部屋や空き家を宿泊施設として提供するホストと、宿泊するゲストをつなぐマッチングサービス「Airbnb」(以下、エアビー)が、音楽、映画、テレビ、アート、スポーツなどの分野で大活躍中のホストが提供する、特別な旅体験を集めた新カテゴリ「アイコニック」を導入し、第一弾となる11件の旅を発表した。
エアビーのカテゴリとは、効率よく泊まりたい場所を見つけるための機能で、歴史ある建物、最高の眺め、城、ツリーハウス、人気の旅行先、大邸宅・屋敷など様々なパターンのカテゴリがあり、今回新たに「アイコニック」が加わった。
「アイコニックはこれまで想像でしかなかった『こんなことができたらいいな』『こんなところに泊まれたらいいな』を実現する、地球上でとびきりの特別体験を提供します。実は以前よりこうした特別体験は不定期で提供しており、バービーの家に泊まる、シュレックの沼、東京タワーに泊まるなど実施してきました。
こうした取り組みは、エアピーは宿泊だけじゃなくて体験を提供するサービスだというメッセージとして非常に効果的だったので、今後は定期的に特別な体験を提供していきたいと、アイコニックの新カテゴリを作りました」(Airbnb Japan代表 田邉泰之氏)
ディズニー&ビクサーの映画『カールじいさんの空飛ぶ家』がリアルに登場、実際に家が浮かぶ中に滞在するという特別な体験ができる。
ニューメキシコ州アビキューの赤い岩に囲まれた風光明媚な場所で、8000個以上の風船が飾られたカールじいさんの家を、映画の映像と区別がつかないほど細かいところまで忠実に再現。下記画像は家の建設の様子。
イタリアのマラネッロにあるフェラーリ博物館に滞在し、レースの世界を満喫できる車好きにはたまらない体験。フェラーリのシートと同じ革で作られたベッドの周りにはF1のマシーンが囲み、ベッドに横たわって真正面を見ると、フェラーリが獲得したトロフィーがずらりと並ぶ。
さらに、スクーデリア・フェラーリのドライバーアンバサダーであるマーク・ジーンと同乗、一緒にレーストラックを一周し、VIPとしてエミリア・ロマーニャグランプリを観戦するといった特典も。
アメコミ原作で映画化された『X-MEN』の世界を体験できる。舞台であるウニューヨーク州ウェストチェスターで似ている物件を探し出し、壁や天井など2Dに見えるような内装を施してマーベルアニメーションによるX-Mansionの世界観を再現。自身のミュータント能力を見つけ、デンジャールームで訓練も!
アメリカで人気ナンバー1コメディアンであるケヴィン・ハートがもてなす、会員制ライブラウンジ「Coramino」で最高級の夜を堪能できる体験。隠れ家バーでケヴィンやその友人たちと一緒にテキーラのテイスティングを行ったり、最高のコメディアンによるスタンダップコメディのライブをプライベートで楽しめる。
パリにあるオルセー美術館を代表する時計の部屋に滞在できる体験。2024年パリ五輪の聖火と聖火台をデザインしたマチュー・ルアヌールによって、時計の部屋が豪華な寝室に改装。セーヌ川沿いで行われるパリ五輪の開会式を、テラスから鑑賞できる絶好のロケーション。
グラミー賞受賞アーティストで、世界ツアーを終えたばかりのドージャ・キャットがゲストを案内し、ドージャがお気に入りの曲や最新アルバムの曲をリビングルームでパフォーマンス。東京ドームが埋まるほどの超人気アーティストが数人のゲストのために披露するレアなプライベートライブが楽しめる。
ミュージシャンのみならず多彩な才能を発揮して一世を風靡、2016年に57歳の若さで逝去したプリンス。自らが主演した自伝的映画『パープル・レイン』に登場するミネソタ州ミネアポリスの家はプリンスが購入していたが、これまで一般に公開されたことはなかった。
パープル・レインの家に滞在し、未公開曲も含め、特別なスタジオセッションでプリンスの貴重な楽曲を楽しむレアな体験ができる。
世界一のフォロワー数を誇るTikTokの人気者カビー・ラメが、彼とゲームを楽しむ最高な一泊を体験するために、カビーの故郷であるイタリアのミラノにゲストを招待。カビーが自らデザインした世界に1つだけのゲーム用ロフトに滞在し、カビーの「#learnfromkhaby」 を紹介してもらったり、ピザ好きのカビーと一緒にピザを食べながらフ、ォートナイトのバトルロイヤルでカビーと対戦ができる。
ラテンミュージック「レゲトン」界のスーパースター・Feidのワールドツアーに1週間同行できる体験。クルーの一員となってツアーバスに乗って移動し、リハーサルに参加したりなど、すべてのショーのバックステージにアクセスできる。
インドの女優・ジャーンヴィ・カプールが、これまで公開されたことのない、インドのチェンナイにある伝説のカプール家の邸宅にゲストを招待。ボリウッドの美の秘訣を教わったり、ジャーンヴィがお気に入りの南インド料理を堪能したりと、ジャーンヴィが究極の宿泊体験をおもてなしする。
ディズニー&ピクサーの新作映画『インサイド・ヘッド2』が米国で6月14日に公開されるのに伴い、ライリーの感情をコントロールする司令部での宿泊体験にゲストを招待。ホストのヨロコビがゲストを活気あふれる世界に招き、さまざまな感情の動きを学び、バランスよく感情を保つ手助けをしてくれる。
アイコニックな旅は、Airbnbのホームページ上カテゴリからチェックすることができる。ほとんどの旅は無料となっており、ゲスト1人あたりの料金が100米ドルを超えるものはない。公開されるまでの時間はカウントダウン表示され、ゲストはアプリから予約リクエストを送信できる。
抽選で選ばれたゲストには、デジタルのゴールデンチケットが届く。それぞれの旅は参加できる人数が異なり、2024年はトータルで4000枚以上のゴールデンチケットが用意されている。
実施日は旅ごとに指定されており、ゲストがリクエストするのは不可。「ドージャ・キャットのリビングルームセッション」のような、体験のみで宿泊はついていない旅もある。今回はアメリカが中心の体験が多いが、今後は日本を含めた様々な国でのアイコニックも出てくるとのこと。
展開している国と地域数は220以上、ホストは世界で500万人以上、ゲストは延べ人数が世界で15億人以上と、世界最大級の民泊マッチングプラットフォームのAirbnb。
その地に滞在する間、地元の人と同じような生活を体験でき、観光だけではなくて暮らす感覚で過ごすことによって、ディープにその地域を知ることができるのが大きな魅力だ。
エアビーが力を入れている活動のひとつが空き家対策。総務省が発表した住宅・土地総計調査では、2023年10月時点で日本の空き家は過去最多の900万戸。住宅総数に占める空き家率は13.8%で全国の7戸に1戸が空き家という状況となっており、今後も増えることが予想されている。
「日帰りよりも1泊以上観光客が滞在するだけで経済効果が大きく変わります。しかし、全国の1700以上の市町村すべてにホテルを建てられるわけではありません。そこで我々としてご提案したいのが空き家の活用です。空き家を使った民泊、ホームシェアリングをエアビーが後押ししたいと思っています。
全国古民家再生協会と連携し、古民家をリフォームして観光資源として使っていただくサポート活動や、オリエントコーポレーション、空き家活用株式会社、無印良品ブランドで知られる良品計画と連携をさせていただき、民泊やホームシェアリングの開拓、地域の魅力を発信する活動も行っています。
今年4月には瀬戸内海にある香川県・手島で、良品計画が古民家をリノベーションした中長期滞在型施設『MUJI BASE TESHIMA』がオープンしました。2010 年の瀬戸内国際芸術祭の作品兼レストランの運営スタッフの寮としてリノベーションされた、現在築90余年になる古民家を受け継いだものです。こちらはエアビーのサイトで掲載しプロモーションしています。
今回発表した『アイコニック』は特別感のある体験ではありますが、エアビーで見つける宿泊は、まったく知らない土地で地元の方と同じように過ごして、その土地のすばらしさ、面白さを体験するというのが最大の魅力。こうしたエアビーの取り組みを広く知ってもらうために作ったのがアイコニックであり、アイコニックだけでなく、どの場所に泊まっても忘れられない特別な体験になると思います」(田邉氏)
ちなみに、エアビーで旅先として日本が検索された数の増加率は昨年比で3倍増と、世界で最も高い増加率。日本国内での検索数も約40%増と、国内外問わず「日本」が訪れたい場所として注目されている。
取材・文/阿部純子