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2022.03.12

0-100km/h加速はポルシェ並み!乗ってわかったアウディのスポーツEV「RS e-tron GT」の完成度

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

「e-tron」と呼ばれるアウディのEVシリーズにGTタイプが追加された。一昨年、リリースされた「e-tron」の第1弾「e-tron Quattro」はSUVタイプだった。アウディの真骨頂であるQuattro(4輪駆動)システムを備え、エアサスペンションで車高を自在に上下させて悪路もものともしない、いわば「EV版のAllroad quattro」として、アウディらしいEVに仕上がっていた。

 その第2弾となるのがGTタイプ。正式車名は「e-tron GT quattro」。さらにスポーティーなモデルが「RS e-tron GT」。第1弾同様、どちらも前後にモーターを備えた、2モーター4輪駆動システムを備えている。

最高出力は「e-tron GT quattro」が476ps(350kW)、「RS e-tron GT」が598ps(440kW)。ローンチコントロール使用時には、それぞれ530ps(390kW)と646ps(475kW)にも増強される。その時の0-100km/h加速タイムは速く「e-tron GT quattoro」が4.1秒で、「RS e-tron GT」は3.3秒。ガソリン車で3.3秒で加速するのはポルシェ「911カレラGTS」だから、相当に速いわけだ。最高速度は、それぞれ245km/hと250km/h。

 EVで重要となる航続距離は487km(WLTPモード)、534km(WLTCモード)。ボディーサイズは、4.99(全長)x1.96(全幅)x1.41(全高)m。ホイールベースが2.90m。

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 ボディーパネルはアルミ製で、アンダーボディはフルフラットになっており、Cd値(空気抵抗係数)が0.24と優れた空力特性を有している。見ての通りのGTルックで、低く構えながら後席の居住性も犠牲にはなっていない。後席の床の足を置く部分にはバッテリーを配置せずに空間を設け、大きく膝を曲げずに済むよう居住性も確保している。

 RSは高性能版であり、装備の違いの中で最も大きなものは、電子制御式リアアクスルディファレンシャル、エアサスペンション、タングステンカーバイトコーティングを施したブレーキディスクなど。4輪操舵システム(オールホイールステアリング)やカーボンファイバーセラミック製ブレーキディスクなどは両モデルともにオプションとなっている。

 Bang&Olufsenのプレミアムサウンドシステムも選べるし、車内外に電子的に合成したサウンドを発生させる「e-tronスポーツサウンド」も選択可能だ。価格は「e-tron GT quattro」が1399万円、「RS e-tron GT」が1799万円。

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「e-tron GT quattro」に乗って一番驚いたのは、東名高速から新東名に移り、最高速度が120km/hに上がったタイミングだった。

 御殿場インターチェンジから先の新東名の下り線は、法定最高速度が120km/hにまで上がり、新しくて明るい3車線の広い道路がしばらく続いていく。日本で最も高速巡航が可能で、安全かつ快適に走れる区間だろう。

 そこで「e-tron GT quattro」を加速させていくと、速度感があまり感じられない。走っているのが100km/hも出ていないだろうと思ってスピードメーターを確かめると、120km/hだったりする。

従来のエンジン車ならば、加速していくに従って、エンジン音とボディの風切り音が高まっていくものだけれども、それを感じないのだ。EVだからエンジン音が発生しないのは当然なこととして、風切り音もほとんど感じられない。

 エンジン車を運転してきたこれまでの感覚とずいぶんと異なっている。単に静粛性が高いのと同時に、加速とノイズの高まっていく感覚が違うのだ。

 これは、Cd値0.24という優れた空力特性の効果を示している。EVにとって空気抵抗はパフォーマンスや航続距離にダイレクトに関わってくる、開発者にとっては少しでも削減したい重大な要素だが、ドライバーにとっても大いに歓迎すべきものだ。

 なぜならば、静粛性が高ければ高いほど長距離を走った際のドライバーおよび乗員の疲労が軽く済むからだ。さらに言えば、EVはエンジンではなくモーターで走行するので、エンジンからの微細な振動がないぶん、それも長距離走行した場合の疲労軽減や快適性に効いてくる。

 ただ、空力特性を向上させるためとはいえ、ボディー各部のディテールが煩雑でアウディらしくスッキリしていないのは残念だ。フロントグリル左右の3段のフィンやその後ろのエアインテイク、ホイール、浮き上がった4シルバーリングスのエンブレム、フロントフェンダー後端のエアアウトレット、ボンネットのエッジ、前後のオーバーフェンダーなどだ。

「e-tron GT quattro」と、その高性能版「RS e-tron GT」で新東名高速と東名高速を巡航してみて、高性能GTタイプのEVのポテンシャルの高さを大いに感じた。今後、EVが普及し、充電施設の拡充が進み、多くの人がEVで長距離移動を行うようになると「EVでの長距離走行はラクだ」という認識が広まっていくのではないだろうか。

 アップダウンとコーナーの連続する峠道でも乗ってみた。4本のタイヤで路面をガッチリと掴んで走る様子は、第1弾のSUVタイプと共通する感触だが「e-tron GT quattro」は姿勢と重心が低い分、まるで強力な磁石で路面に吸い付きながら走るようだ。ペースを上げてコーナーを回っても、きわめて安定している。

 モーターは右足の細かな動きにも瞬時に反応するので、機敏に向きを変え、一体感が生まれてボディが少し小さく感じられるようだった。前後のモーターによる駆動力は、状況によってそれぞれが0~100%の割合で割り振られ、パフォーマンスと安定性の両立を図ろうとしているのも電気式クワトロシステムの特徴の一つとなっている。

「RS e-tron GT」に装着されているエアサスペンションの効能も明瞭で、路面の凹凸を柔らかく受け止め、細かな振動もシャットアウトしていた。明らかに、上質な乗り心地だ。このエアサスペンションがノーマル版である「e-tron GT」でも選択できるようになってくれるとうれしいのではないか。RSの派手なルックスは好みが分かれるだろうからだ。

「e-tron GT quattro」と「RS e-tron GT」は、クルマの基礎を形成しているプラットフォームをポルシェ・タイカンと共用している。もちろん、各部のセッティングなどは変えられており、タイカンのほうがポルシェらしく、より硬質な乗り心地だったと記憶している。

「タイカン4S」の0-100km/h加速(ローンチコントロール使用時)は4.0秒、「タイカンターボ」が3.2秒、最高速度は250km/hと260km/h。アウディジャパンは、2022年に、EVのe-tronシリーズ第3弾となるミディアムサイズのSUVのEVである「Q4 e-tron」の日本市場へ投入する。さらに、2025年にはEVを20車種に増やし、2026年には発売するニューモデルのすべてをEVとし、2033年にはエンジン車の製造を停止すると発表している。

 EVによる多彩なラインアップを揃えようとしていて「e-tron GT quattro」と「RS e-tron GT」は、EVによる高性能GTとしてまとめ上げられている。同社によれば、「e-tron GT」と「RS e-tron GT」はすでにドイツで3600台製造されており、うち日本では150台の注文を受け付けたそうだ。

■関連情報 https://www.audi.jp/e-tron/models/e-tron_gt/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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