アメリカの電動輸送機・クリーンエネルギー関連ブランドのテスラが開発した「サイバートラック」(Cybertruck)が2024年2月15日、日本で初めて披露された。EV(電気自動車)である以上に興味をひく独創的なスタイリングは、これからの人とクルマの関係にどんな刺激を与えてくれるのだろう。
テスラが作るEVは、初の生産モデル「ロードスター」(2008年)以来、どれも世界的な反響と販売台数を記録してきた。「ロードスター」はオープンボディのスポーツカー、続く「モデルS」(2012年~)はアッパーミドルクラスのセダン、「モデルX」(2015年~)は跳ね上げ式ドアを備えた大型のクロスオーバーSUV、「モデル3」(2017年~)は小型ラグジュアリーセダン、「モデルY」(2019年~)はミドルクラスのクロスオーバーSUVと、バラエティに富んでいる。
しかも、ガソリンなどの燃料を使って走行エネルギーを生み出す既存のエンジン搭載車との違いも明確だ。大きく場所をとるエンジンは乗員が座るキャビン前方に搭載されることがほとんどだが、モーターと制御機器を搭載するEVはパワーユニットを小型化できるため、キャビンを大きくとったデザインが可能になる。さらに、クルマの顔にあたるフロント部分中央に、エンジン冷却用の空気取り入れ口(フロントグリル)をデザインする必要もない。テスラのEVは、いずれも設計上の利点を独創的なデザインで表現することで、新時代のモビリティに関心の高いユーザーの心をとらえた。
テスラはEVだけでなく、バッテリー電動輸送機器やソーラーパネル、その他の関連製品やサービスなどを幅広く手掛け、EVや太陽光発電で得られる持続可能な輸送基盤とクリーンエネルギーへの移行の促進を目指している。テスラを購入するオーナーの多くは、代表者でありカリスマ起業家のイーロン・マスク氏が掲げる未来に共感しているに違いない。
とはいえ、製品としての〝デザインの魔力〟は、オーナー予備軍や新世代モビリティに関心の薄い層にも大きく作用する。2019年に発表された6人乗りのフルサイズピックアップトラック「サイバートラック」は、大人から子供まで、誰もが一度見たら忘れられない未来的なデザインが最大の特徴だ。
今回のお披露目は、「サイバートラック」のアメリカ発売を記念した全国展示ツアーという形式をとっている。その第一弾となる東京会場は、チームラボとDMM.comが設立したデジタルアート施設「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」(江東区豊洲)だ。2月16日からの展示ツアーに先駆けてメディア向けに開催された披露イベントでは、EVならではの静かな走行音とは裏腹の圧倒的な存在感で、取材陣の前に現れた。
まず、実際に車体は大きい。全長約5.6m、全幅約2.4mという、アメリカ規格のフルサイズボディ。車体前後の端から2列5人乗りのキャビン中央に向かって直線的に伸びるラインは、側面やほかの細部と鋭角的に交わり、まるで3DCGを構成するポリゴンを大きく使ったようにデザインされている。この外骨格は「ウルトラハードステンレススチールエクソスケルトン」と呼ばれる強力なステンレス素材から成り、優れた防弾能力と衝突安全性を実現したという。一般的にステレンスは加工が難しいといわれているが、「サイバートラック」はつまり、素材の特性を生かしたデザインで成り立っているのだ。