アウディの100%電気自動車(ピュアEV)の生産・販売の歴史は、2020年の「e-tron/e-tron sports back」から始まった。これはドイツ車の中でも早いほうだった。その後「e-tron GT」という乗用車モデルも発売し、現在は「Q4 e-tron」が加わり4車種のピュアEVが購入できる状況だ。「Q8」のピュアEVは、初代の「e-tron/e-tron sports back」を大幅にアップデートしたモデル。2023年3月のマイナーチェンジの時に「Q8」の名称を付け、電動SUV/クロスオーバー車種の原点に立つモデルとしてラインアップすることになった。
ワゴンタイプの「Q8 e-tron」には、「50」と「55」が設定された。今回、試乗したのは「55」。電池総容量114kWhという強力タイプで、最高出力408PS、最大トルク664Nmを発生する。一充電走行距離は501km(WLTCモード)を実現している。空力性能やモーターの効率アップなどで航続距離は先代より78kmも伸びた。電池も製造工程で生まれる電極材の隙間を極力少なくした新工法を開発するなど、自社開発も進めている。
ちなみに「50」の最高出力は224PS、最大トルク664Nm、一充電航続路は424kmに向上している。総電池容量は95kWhを公表している。マイナーチェンジ後に初めて対面した「55」は、ひと目でアウディのピュアEVとわかる開口部の少ないシングルフレームグリルを、ブラックのマスクで囲む新しいフロントマスクを採用。アウディのフォーリングスマークも2次元のデザインになり、Bピラーにモデル名が描かれている。
また各部分のパーツには、ペットボトル由来のリサイクル原料を使用した素材のシートや自動車の混合廃棄物を再利用したシートベルトバックルカバーを採用するなど、資源の量の削減で、循環型社会の実現に貢献している。室内の基本レイアウトはキャリーオーバーなので、ナビゲーションやコントロールパネルの位置は大きくは変わっていない。しかし、最新モデルの「Q4」などと比較すると、液晶画面の位置や操作系にやや時代を感じさせる部分もある。
試乗車の運転席に乗りこんでみる。着座位置はやや低めだ。高めにすると、乗りこみのときにドア上縁に頭をぶつけてしまう。スタートはDレンジ、ドライブセレクトは「オート」を選択する。セレクトモードは「オールロード」「コンフォート」「オート」「ダイナミック」「インディビデュアル」の5モード。加速や足回りのセッティングが異なる。