試乗車は100%充電済みだったので、スタートボタンを押しても、無音。Dレンジにシフトすると、音もなく動き出した。公道に出て、EVで走行。駆動系とタイヤノイズが伝わってくるので、フツーのEVとは異なり、メカニカルな走行音は耳に入ってくる。
それでも十分に静かだということは、EVモードが終了し、V6エンジンが始動した時にわかった。V6エンジンは、これまでのマクラーレンのように、低く、勇ましいサウンドを2本のエキゾーストパイプから発生したのだ。
EV走行の「アルトゥーラ」は、適度なメカニカル走行音で、ドライバーを楽しませてくれる。もちろんアクセルレスポンスと、ハンドリングのシャープさは、マクラーレンスポーツそのもの。充電に関してだが、駐車中の外部充電だけでなく、走行中に充電することも可能。もちろんその時はV6エンジンは始動する。充電は各モードで、可能なのだが、その表示はTrackモードのみ充電量を%で表示、他のモードは走行可能距離を表示する方法を採っている。
メーターカバーの左側のハンドリングモードは、ダンパーの硬さや電動スタビリティーコントロールの介入レベルを調節する。操舵力や乗り心地は、当然かもしれないがComfortモードでも、重く、硬め。ただし、乗り心地に関してはゼブラ路面でも突き上げるようなことはなかった。
動力性能は、公道ではその一端を試すだけ。0→100km/hの加速は、スタートと同時に295/35ZR20のタイヤを装着した後輪でも、一瞬の空転を抑えることはできなかった。これはComfortモードでのこと。おそらくTrackモードでは、コントロールされているはず。この時に理解したのは「アルトゥーラ」はプラグ・イン・ハイブリッドだが、一般道よりもやはりサーキットを走らせて楽しいスポーツカーであるということ。
これは、充電モードでの表示も、Trackモードでは走行距離ではなく、%で表示されることでもわかる。サーキットでは、走行距離よりあとどの位走れる電気量があるかが大切だからだ。同時にフォーミュラEのドライバーの気分も味わえることになる。マクラーレンはたとえ、プラグ・イン・ハイブリッドでも、おそらくフル電動EVでも、サーキットで楽しいスポーツ走行を提供してくれるに違いない。
そう考えると、2965万円でフォーミュラE気分を満喫できる「アルトゥーラ」は、バーゲン価格なのかもしれない。
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https://cars.mclaren.com/jp-ja/artura
文/石川真禧照 撮影/萩原文博