フェラーリは、ル・マン24時間レースを目前に控え、テーラーメイド・プログラムの最新作である「Piloti Ferrari(ピロティ・フェラーリ)」仕様の「296 Speciale(スペチアーレ)」を公開した。
このエクスクルーシブな仕様は、FIA世界耐久選手権(WEC)での成功を祝い、フェラーリ・クライアント・レーシングドライバーに敬意を表してデザインされた。そして6月14日・15日に開催された伝説的な耐久レースの舞台、フランス・サルト・サーキットが正式デビューの場として選ばれた。
この特別な仕様は、競技・非競技を含むフェラーリの公式スポーツ活動に参加するオーナーだけに提供されるもので、2023年と2024年のル・マン24時間レースにハイパーカー・クラスで出走し、総合優勝を果たした「499P」をインスピレーションとしている。サーキットを肌で体験しているクライアント・レーシングドライバーは、フェラーリのレーシング・レガシーに積極的に貢献している。そのコミュニティーを象徴する特別なリバリーと仕上げがデザインされた。
この「Piloti Ferrari 296スペチアーレ」には、レースにちなんだ 4種類のカラー、ロッソ・スクーデリア、ブルー・ツール・ド・フランス、ネロ・デイトナ、アルジェント・ニュルブルクリンクがある。エクステリアのリバリーには、499Pのリバリーをインスピレーションに、ジャッロ・モデナ(モデナの黄色)があしらわれ、WECのロゴ、フロントバンパーのイタリア国旗、オーナーが選んだカスタムナンバーが、ハンドペイントされる。
なおル・マンで公開されたモデルは、カーナンバー51を付けている。これは、フェラーリが耐久レースの最高峰に正式に復帰し、ル・マンが第100回を迎えた2023年に、アレッサンドロ・ビエール・グイディ選手、ジェームズ・カラド選手、アントニオ・ジョヴィナッツィ選手が優勝したときのナンバーとなる。
キャビンに装備するレーシング・シートには、熱成形した黒のアルカンターラが張られ、インサートには、ワークスドライバーのドライビングスーツと同じ耐火性ファブリックが使われている。リバリーのナンバーは、インテリアのカーボン・ファイバーにもあしらわれており、フットレストのテクニカルな金属面も、希望に応じてカスタマイズが可能となっている。
あらゆるディテールにドライビング・エクスペリエンスが反映され、レースに情熱を傾けるドライバーの連帯感が味わえるようデザインされている。そのほかにもパーソナライゼーションが可能な部分としては、カーボンの記念プレートとカーボン・ファイバー製ドアシルもあり、エクスクルーシブなカスタムが可能。
296スペチアーレは、フェラーリのミッド・リアエンジン・ベルリネッタのスペシャル・バージョンであり、296 GTBの究極進化形として、ドライビングの楽しさで新たなベンチマークを打ち立てた。搭載するプラグイン・ハイブリッド・パワートレインは、バンク角120°のV6ツインターボと電気モーターで構成され、総最高出力は880PSに達する。内燃エンジンは、F1で生まれたコンボーネントも使用して、軽量化と強度の引き上げが図られた。
一方、8速DCT トランスミッションは、フェラーリの高速シフト・ストラテジーによって最適化されており、最大の電動トルクを引き出すほか、変速がさらに素早く、いっそう魅力的になっている。また車重が削減された一方で、空力ダウンフォースは、296 GTBより20%増大した。
さらにサーキットでの応答性と正確性をさらに高めるため、シャシーも見直されている。また、新たなエクストラ・ブーストのソフトウェア・ストラテジーによって、ハイパフォーマンスのラップでパワーを残らず発揮。コンパクトなサイズと設計の中に、大胆な技術ソリューションが組み込まれており、リアの「ガンマ・ウイング」や、つり下げ式スプリッター、拡大されたディフューザーなどが、レーシングカーを彷彿とさせる。
フェラーリは、2023年にハイパーカーの499PでFIA世界耐久選手権の最高峰クラスに50年ぶりの復帰を果たした。この499Pは、LMHのレギュレーションに従って設計され、カーボン・ファイバ一製モノコックシャシーとダブルウィッシュボーン式サスペンションを擁する。
ハイブリッド・パワートレインは、荷重を負担する構造部材の役割も果たするリッターのV6ツインターボとフロントの電気モーターで構成され、およそ680PSを発生し、車速190km/h以上で全輪駆動になる。さらに電動ユニットは、回生ブレーキにも貢献。また、エアロダイナミクスは、あらゆるタイプのサーキットで効率性と安定性を高めるよう最適化されている。499Pは、ワークスチームであるフェラーリAFコルセから出走した51号車と50号車が、2023年と2024年のル・マン24時間レースでそれぞれ優勝し、フェラーリは最も名高い耐久レースへの復帰を勝利で飾った。
構成/土屋嘉久