フレンチ・スポーツカーの代表格として、真っ先に名が挙がるのがアルピーヌ「A110」だ。ジャン・レデレが1955年に興したブランド、アルピーヌは、誕生以来、一貫してモータースポーツと歩みをともにしてきた。アルピーヌのクルマ造りには、創業当初から貫かれてきた明確な哲学がある。その第一義は、大衆車であるルノーをベースとしながら、小型・軽量に仕立てて、マシンの性能を最大限に引き出すという思想だ。当時としては、極めて先進的なアプローチだっただろう。
そんなアルピーヌの名を広く世界に知らしめたのは、初代A110が1973年、世界ラリー選手権の初年度のチャンピオンマシンとなったこと。この頃からすでにアルピーヌとルノーの関係は深く、両者にとってコンペティションは切り離せないものとなっていった。現代のF1でルノーではなく、アルピーヌF1チームとして参戦していることからも、両者の結びつきの強さが窺える。やはり、アルピーヌはフレンチ・スポーツの代名詞なのである。そんなアルピーヌが、ブランドの創立70周年を記念して送り出した、限定モデルが「A110 R 70」である。
F1チームが空力の開発に携わったエアロパーツを採用し、しかもボンネットやリアフード、ホイールまでもがカーボン素材に置き換えられるなど、ただでさえ軽快な「A110」がさらに研ぎ澄まされた一台となっている。言うなれば、これはブランドの哲学を凝縮した〝走りの集大成〟。軽やかなフットワークと鋭いハンドリングから、モータースポーツで培われた技術とブランドの誇りが感じ取れる。ラリーやF1といった頂点の舞台を戦ってきたアルピーヌのDNAを体感するなら、この「A110 R 70こそ」ふさわしい。
アルピーヌの創立70周年を記念して造られたのが、世界限定770台の「A110 R 70」である。ベースとなるRグレードは、アルピーヌF1チームがエアロダイナミクスを手がけたところが注目のポイント。これにより最高速度は285km/hまで高まった。加えてカーボンパーツの採用による軽量化で、車両重量を1090kgに抑えることに成功、運動性能の向上が目覚ましい一台だ。
現代における軽量化のアプローチとして一般的な手法のひとつが、カーボンパーツの採用だ。「A110 R 70」ではバケットシートやリアスポイラーはもちろん、リアウィンドー部分をカーボンパネルに置き換えるなど、細部に至るまで抜かりがない。なかでも特筆すべきはカーボンホイールの装着。これは市販車としては稀少な仕様であり「A110 R 70」が特別な一台であることを物語っている。
「A110」はこの春にラインナップが刷新された。発売以来、人気を博してきたベーシックモデルを改めて「A110 アニバーサリー」(上左)として25台限定で用意。足回りにはしなやかな動きが特徴の〝アルピーヌシャシー〟を採用した。また「A110 R 70」と同じく、70周年記念車として設定されるのが「A110 GTS」(上右)だ。こちらは〝シャシースポール〟をベースとしながら、快適性も加味した乗り味が特徴の一台。ボディカラーは27色から選べるほか、レザーインテリアを採用する。
アルピーヌ コール:0800-1238-110 https://www.alpinecars.jp/
Writer: Tsuneharu Kirihata Photo: ALPINE Editor: Norihito Yasuda