アウディは、2024年10月23日(現地時間)、フランス南部で行なわれたワールドプレミアイベントで、新しくなった「A5」シリーズを公開した。
ワールドプレミアの場所となった険しくも緑豊かな山々に囲まれたフランスのマリティーム・アルプスの狭い道は、まるでジェームズ・ボンドが登場する、映画のような風景。岩のトンネルを通り、急カーブから緩やかな長いカーブまで、あらゆるカーブが交互に現れる。フランス・ニースの奥地は、新型A5モデルの特徴をつかむのに、理想的な舞台となった。コート・ダジュールの道路は、プレミアム プラットフォーム コンバッション(PPC)をベースにしたこの新しいミッドサイズモデルのシャーシとドライブトレインにとって特に厳しい試練となった。
この新型A5シリーズは、アウディの新しいMHEV plusマイルドハイブリッドテクノロジーを初めて搭載するエンジンモデルとなる。MHEV plusは、パワートレイン発電機、ベルトスタータージェネレーター、リチウム鉄リン酸バッテリーにより構成される、48ボルトのマイルドハイブリッドシステム。このシステムは、新型A5 TDIおよびS5モデルの性能と効率を新たなレベルに引き上げる。
最大18kW(24馬力)の追加電力を活かし、サン=ポール=ド=ヴァンスの山道でダイナミックな走行を可能にしながらも、ニースの市街地ではストップ・アンド・ゴーの時には、電気のみで走行する優れた性能を発揮した。減速時には、パワートレイン発電機は最大25kWの回生ブレーキで、エネルギーをコンパクトなリチウム鉄リン酸バッテリーに充電する。
MHEV plusシステムは、市街地走行でも多くのメリットを提供する。例えば、内燃エンジンを電力サポートすることにより、特に低速走行時の燃料消費を大幅に削減。さらに、蓄えられたエネルギーにより、信号待ちなどで内燃エンジンが停止している間も、電力を多く消費するシステムに電気を供給できる。充電が十分な状態であれば、電動エアコンプレッサーは稼働を続け、室内を快適な温度に保つ。
アウディのDNAに忠実なドライビング体験を実現する決定的要素は、ドライブトレインだけでなくシャーシにもある。新しいA5およびS5モデルを開発する際、アウディブランド特有のドライビング特性を実現することが最優先項目だった。スムーズかつ正確なハンドリングがそのひとつ。
新型A5では、ダイナミックで俊敏なハンドリングに加え、快適さにおいても強く印象づけることを追求した。この目標を達成するために、アウディはシャーシを細部にわたって改良した。例えば、ステアリングをボディに直接取り付け、剛性の高いトーションバーを使用するという大幅な改良を加えている。このような対応により、ステアリングホイールとホイール間の遊びが減少し、ドライバーはどのような路面状況でも、正確なフィードバックを受け取ることができるようになった。
またA5ファミリーは、アンチロールスタビライゼーションのリヤ寄りのセッティングとリヤアクスルへ接続剛性を高めることにより、コーナリング時のより敏捷なハンドリングが可能になった。ブレーキトルクベクタリングを備えた、統合型ブレーキ制御システムにより、ブレーキの圧力がダイナミックに発生し、また、コーナーの内側でホイールへブレーキが介入することで、よりダイナミックなコーナリングが可能になった。
さらに新型A5は、ダイナミックに調整されたスチールサスペンションを標準装備しており、オプションで、Sスポーツサスペンション(S5には標準装備)や、電子制御ダンパー付きのSスポーツサスペンションも選択可能。いずれのオプションでも車高を20mm下げる。オプションのダンパー制御付きアダプティブSスポーツサスペンションでは、アウディドライブセレクトのダイナミックハンドリングシステムを介して、選択できる走行モードの間に、より広い調整域を提供。ダイナミックモードでは、サスペンションはより硬く、ダイナミックなチューニングが施されている一方、コンフォートモードではリラックスした走行に十分な余裕を持たせている。
新型A5に乗り込むと、まず目に入るのは、11.9インチのアウディバーチャルコックピットと、曲線デザインの14.5インチMMIパノラマディスプレイ。オプションで、10.9インチのMMIパッセンジャーディスプレイもデジタルステージを補完する。優れたエルゴノミクスとシンプルでドライバー中心の操作性が、このコンセプトの開発において重要な要素であった。曲線デザインのパノラマディスプレイは、手が届きやすく操作しやすいように設計されている。
さらに新型A5モデルには、自然な言語を理解し、自主的に学習するアウディアシスタントが搭載されている。ドライバーは「Hey Audi」の音声コマンドや、ステアリングホイールのボタンでアシスタントを起動し、さまざまな車両機能の操作や、ナビゲーションの開始、一般的な知識に対するリクエストなどが可能。また、アウディアシスタントが質問に答えられない場合、Microsoft AzureのOpenAIサービスを介して提供されるAIチャットボットのChatGPTが使用され、膨大なデータベースにアクセスして回答する。これらの機能はすべてアウディアシスタントに統合されているため、シームレスな体験を提供することができる。
そして新型A5モデルには、ヘッドアップディスプレイ(HUD)も新たに開発された。設置スペースを最大限に活用し、最適化されたディスプレーテクノロジーにより、視認領域が従来より85%以上広くなり、表示もさらに正確になった。さらにHUDはカスタマイズ可能で、リクエストに応じて追加のコンテンツを表示することができ、速度やアシスタンスシステム、ナビゲーションの指示、メディア情報などを明確に表示する。さらに新設計のステアリングホイールの手元では、視線を道路から逸らすことなく、リストのスクロールや選択をすることができる。また、HUDを通じて電話の受発信も可能で、モデルや装備によって、追加の表示モードも用意されている。
なお音楽を楽しみたい方には、3Dサウンドとヘッドレストスピーカーを備えたBang & Olufsenプレミアムサウンドシステムがオプションで提供される。このシステムは、合計20個のスピーカーと810ワットの2つのアンプが、ユニークなオーディオ体験を提供し、優れた音響精度と自然な音質で乗員を魅了する。またオプションのスポーツシートには、4つのスピーカーがフロントのヘッドレストに統合されており、パーソナルサラウンドサウンドを強化し、没入感のあるサウンド体験を提供。加えて、前後の座席間でバランスの取れた音響を実現する。ヘッドレストスピーカーでの通話の音質も高く、音が車外に漏れず、フロントの乗員はプライベートな通話が可能。さらにナビゲーションの指示も運転者のヘッドレストに直接伝わり、ほかの乗員に耳を妨げることがない。
新型A5モデルのフロントには、デジタルでカスタマイズ可能なLEDテクノロジーを採用したデイタイムランニングライト、リヤには第2世代のデジタルOLEDリヤライトが装備されている。デジタルOLEDパネルあたり約60のセグメントがあり、リヤのディスプレイとしての役割が増している。これにより、車両間コミュニケーション(Car-to-X)が可能となり、安全性が向上する。例えばオートパーキングする時、あるいは事故や危険が発生した際に、特定のライトシンボルをデジタルライトシグネチャー内で表示して、他の道路利用者に警告する新しいコミュニケーションライトが含まれている。
また車両のロック解除時や降車時のダイナミックなライトエフェクトは、アウディのDNAの一部として動的な美しさを体現している。同様に、ヘッドライトとリヤライトの光を、これまでにない方法で動かすアクティブデジタルライトシグネチャーもある。ヘッドライトとリヤライトは三次元的に描かれ、オプションのデジタルライトシグネチャーを提供し、物理世界とデジタル世界を融合させている。