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2026.03.07

「MCプーラ」と「GT2ストラダーレ」でマセラティの荒ぶる魂とエレガンスを堪能する

昨年、マセラティは創業110周年を迎えた。そして、その記念すべき創業日の12月1日、一台の特別なモデルが東京で披露された。「GT2ストラダーレ」だ。2024年のモントレー・カー・ウィークで初めてその姿を表すと、かつてマセラティ・ブランド復活の象徴として登場したレーシングカーの「MC12」を彷彿するとして、喝采とともに多くの衆目を集めたスーパースポーツカーだ。

その「GT2ストラダーレ」に試乗する特別な機会を得た。場所は千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイである。しかも驚いたことに、そこには「GT2ストラダーレ」とは別に先のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでデビューした「MCプーラ」までが用意されていたのである。どちらも新世代マセラティの第二章の幕開けをつげるモデルだ。その二台に同時に乗ることができるとあれば、嬉しくないはずがない。しかも場所はサーキット。今や600馬力を超えるスーパースポーツを安全に試すことができる場所は公道にはない。これほどの好条件は滅多にないはずだ。

公道を走るレーシングカー

それにしても、やはりマセラティにはレースの場がよく似合う。パドックに差し込む傾きかけた冬の夕日に浮かび上がる二台。どちらも公道モデルだが、そのたたずまいは濃厚なレースカーの匂いがしてゾクゾクする。特に「GT2ストラダーレ」はこれで公道を走っても大丈夫なのかと心配になるほどだ。「GT2ストラダーレ」はその名称からもわかるとおり、マセラティがレースに復帰する舞台として選んだGT2カテゴリーのレースカー、マセラティ「GT2」の公道バージョンだ。レースのための動的性能は生かしつつ、公道でも楽しめるように仕立てられている。

エンジンは「MC20」譲りのプレチャンバーを備える3LV6ツインターボのネットゥーノを搭載するが、最高出力は「MC20」より10馬力高い640馬力である。2.8秒の0-100km/h加速と324km/hの最高速度は、それぞれ「MC20」より加速で0.1秒、速度で4km/h速い。数値だけでみると違いはわずかのように思えるが、あくまでもベースはレーシングカーのマセラティ「GT2」である。ゾクゾクするオーラも伊達ではない。戦闘力を高めるために変更されているのは主に空力と重量だ。

「MC20」より大きくなったフロントのエアインテークから吸い込まれた空気は、ラゲッジを潰して設けられたダクトを通ってフロントフードのエアアウトレッドから排出され、フロントグリップを強化するダウンフォースを稼ぎ出している。フロントブレーキを冷却したエアをフェンダー上部に排出するのもこれと同じだ。不気味なくらい大きくなったリアフェンダー上部のエアインテークももちろん冷却だけでなくリア周りの空力に貢献している。

さらに極めつけはスワンネック形状の巨大なリアウイングだ。もちろんカーボン製だが、その形はナンバー付きの公道モデルとして適合できるように、ボディからはみ出すことなく後端のリップに沿って見事に湾曲している。これらによって生み出されるダウンフォースは、280km/hの速度でフロントが130kg、リアが370kgもあるというから驚く。

軽量化も抜かりはない。ボンネットとリアのエンジンフード、フロントスポイラーやリアディフューザー、各所エアインテークなどをカーボン製にするという王道的な方法で、「MC20」より全体で約60kgの軽量化を達成している。

オイルよりもフレグランスの香りが似合う

一方、「MCプーラ」は同じレースの匂いでも「GT2ストラダーレ」とは明らかに違うオーラを放っていた。いやこのクルマにレースの匂いを感じ取ったのは、場所がサーキットだったからかもしれない。「MCプーラ」に似合うのは、オイルの匂いよりもフレグランスの香りだろう。「MCプーラ」にはイタリアのスポーツカー独特の美しさがある。

「MC20」の後継モデルという位置づけの「MCプーラ」だが、そのエクステリアとインテリアのコンセプトはガラリと変わった。デザインは先にデビューした「GT2ストラダーレ」を踏襲する。コンセプトカーの「アルフィエーリ」から続いた特徴的なフロントノーズは、ブラックアウトされたことで印象が変わり、シャープになった。「MC20」はいい意味で歴史と伝統を感じさせるデザインだったが、それをグッとモダンに解釈し直したのが「MCプーラ」だ。ちなみにプーラは純粋、英語で言えばピュアを意味するイタリア語である。

マセラティの魅力のひとつはイタリアンラグジュアリーを具現化した室内にあるが「MCプーラ」はインテリアでもアルカンターラを使った新たなマセラティデザインにチャレンジしている。たんに豪華な素材をこれ見よがしに使う時代はすでに終わったと言っていい。シンプルだが、有意義な素材と職人の技で現代的な価値生み出そうとしている「MCプーラ」のインテリアデザインは、スポーツラグジュアリーの新たな方向性を示している。

デザインの解釈をアップデートする一方、ドライブトレインやカーボン製ボディには大きな変更のない「MCプーラ」だが、その生産はネットゥーノエンジンや「GT2ストラダーレ」も製造する、本社のあるモデナのメノッティ工場で行われる。2025年からは「グラントゥーリズモ」と「グランカブリオ」の生産も行われ、マセラティのスポーツカーのほとんどが歴史あるモデナでつくられることになる。

メイド・イン・モデナというイタリアのスポーツカーとしては最良の出自を持つ「GT2ストラダーレ」と「MCプーラ」。与えられた試乗時間は撮影も含めて1台25分。試乗は「MCプーラ」から行った。

走りにもエレガンスがある

カーボンバスタブの底に張りつくように据えたれたスポーツシートにおさまると、やはり「MCプーラ」もレーシングカーの血統にあることを嫌が上にも感じることになった。跳ね上げたバタフライドア越しに見える路面の近さでその視線の異常な低さが実感できたからだ。しかし、V6ネットゥーノがあっけないほど簡単に目覚め、静かにアイドリングを始めると、まるで呼吸を合わせたかのようにこちらの逸る気持ちも落ち着きを取り戻した。

ドライブモードでGTを選び、ピットロードを出てコースイン。トランスミッションはオートで走り始める。じわじわと速度を上げながら一周して思わず唸ってしまった。「これは素晴らしいスポーツカーじゃないか」。加速にも減速にもまったくと言っていいほど荒々しさは感じない。ホームストレートで思い切りアクセレレーターを踏み込んで回転計の針が跳ね上がっても、ネットゥーノはバリバリと雄叫びを上げるようなことはなく、あくまでも品良く6つのシリンダーで歌い上げる。その印象はドライブモードをスポーツやコルサに変えても変わらない。

一般的にターボエンジンは自然吸気エンジンのように甲高く歌うことはないが、マニュアルシフトで操るネットゥーノのテノールには、ドライバーの心を惹きつける艶がある。これこそが「MCプーラ」の魅力だろう。先進の空力技術を取り入れながら、過剰にならないようにデザインされたエクステリアになぜ魅せられるのかと言えば、そこにマセラティ特有のエレガンスがあるからだろう。それと同じように「MCプーラ」は、エンジンはもちろんハンドリングでさえ適度な緊張感のなかにもエレガンスが感じられた。

荒ぶるストラダーレ

そんな「MCプーラ」から「GT2ストラダーレ」に乗り換えると、ガラリと印象が変わることに驚く。アルカンターラをふんだんに使うところは同じでも、オプションの4点式のレーシングハーネスを備えたフルバケットのシートを装備した試乗車の室内はすこぶるスパルタンだ。ハンドルもDシェイプとなり、走行モードスイッチを配置したセンターコンソールのパネルも、視認性を高めるために黄色く縁取りされている。

走り出してすぐにわかるのは足周りがハードになっていることだ。ノーマルのGTモードでも明らかに硬く、スポーツ、コルサの順にどんどんハードになる。同時にフットワークも過激になり、コルサでは応答遅れのない俊敏なハンドリングを堪能することができた。

10馬力アップされた640馬力のネットゥーノを含めて刺激は「MCプーラ」とは比較にならないほど強い。特に4段階に細分化されたコルサモードのセッティングはサーキットを楽しむアマチュアには絶妙なチューニングと言える。コルサ4から順に電子制御がカットされ、コルサ1ではABSのみとなるが、試すことができたのはコルサ2までだ。

試乗車はセミスリックタイヤやレース用LSD、レーシングカーボンセラミックブレーキなどの250万円のパフォーマンスパックプラスというオプションを備えており、プッシュすればするほどアベレージスピードが上がり、シビアな操縦が必要だった。不用意なブレーキングでもしようものなら姿勢を乱してドキッとする。モードによってLSDの制御も変わり、オーバーステアも強くなるが、臆することなくアクセルワークでリアのスライドがコントロールできたのはコルサ3までで、それ以上のモードの緊張感は個人的にはトゥーマッチだった。もちろん、相応のスキルがあれば間違いなく荒ぶる「GT2ストラダーレ」が堪能できるはずだ。

昨年創業110年を迎えたマセラティだが、モデナに移る前の創業の地、ボローニャで初めてトライデントのエンブレムを冠したモデル、ティーポ26を世に出したのは1912年のことだった。1.5Lのスーパーチャージャー付き直列8気筒DOHCエンジンを搭載したこのティーポ26が工場で完成したとき、そのボディにはタルガフローリオに出場するためのレーシングナンバーがすでに記されていたという。

マセラティが稀有なのは、グランプリカーを製作しながら、1930年代の終わり頃からはそのノウハウを使った美しいボディのツーリングスポーツもつくり続けてきたことにある。つまり、マセラティの魅力は、荒ぶる魂とエレガンスのそのどちらでもあるということだ。今回、「GT2ストラダーレ」と「MCプーラ」にサーキットで乗って、伝統とも言えるマセラティのその魅力が、100年を超えた今でも、何も変わっていないことがよくわかった。これがクルマ好きの心に刺さる一番の理由だろう。

■関連情報
https://www.maserati.com/jp/ja/models/mcpura-cielo
https://www.maserati.com/jp/ja/models/gt2-stradale

文/塩澤則浩 撮影/望月浩彦

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