2025年7月29日、かつて港湾都市として栄えた南イタリア・アマルフィ海岸の鮮やかさを再現した会場で、フェラーリのニューモデルである「アマルフィ」が日本で初公開された。フェラーリ「アマルフィ」は2025年7月にワールドプレミアされた新型の2+2クーペモデルで、2020年に日本市場に導入されたフェラーリ「ローマ」の後継車で、車両本体価格は3418万円からとなっている。
フェラーリ「アマルフィ」の外観デザインで特徴的なのは、フロントマスク。ローマにあったフロントグリルがなくなり、浮遊するようなボディカラーのフェンダーとその下にはめ込まれたダークカラーの帯びで特徴づけられている。これまでクルマのフェイスというのは、人で言えば顔のようなものだったが、フェラーリ「アマルフィ」ではそういった要素は排除されている。
ボディサイドに流れるくさび形のテーマは、技術上の切り込みに組み込まれた照明ユニットと共に、洗練されたモダンな美を感じさせる。リアは、テールランプはグラフィックカットの中に隠され、フェラーリのクラシックモデルを彷彿させると同時に、モダンなビジュアル要素を用いている。
またリアスクリーンと一体化しているスポイラーに、可動アクティブ・ウィングを採用。この可動アクティブ・ウィングは、ロー・ドラッグ、ミディアム・ダウンフォース、ハイ・ダウンフォースの3種類の仕様があり、前後・横方向の加速度や車速に応じて動く。ハイ・ダウンフォース仕様時は、車速が250km/h 時に発生するダウンフォースを110kg増加することができる。さらに、リアには高さ20mmのノルダーが組み込まれていて、ロー・ドラッグ仕様の際に気流が再び圧縮されるのをサポートする。
「アマルフィ」のインテリアは、デュアル・コクピット・レイアウトを採用。ドライバーとパッセンジャーを2つの空間で包み込む。これをダッシュボード、ドアパネル、センタートンネルで視覚的に繋げている。ダッシュボードには単体の塊を思わせるレイアウトを初採用。インストルメント・クラスターとエアベントが一つのブロックの中に融合している。またセンタートンネルは、彫り込まれた造形で、宙に浮いているように見え、ギアセレクターをはじめ、キースロット、ワイヤレス充電パッドといった操作系が集中している。
「アマルフィ」はヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)を刷新。最近主流となりつつあったタッチ式のスイッチではなく、物理的ボタンを装備した新しいステアリングホイールを採用。左側にはアイコニックなアルミニウム製のスタートボタンが復活。左のスポークではADAS(先進運転支援システム)。アダプティブ・クルーズ・コントロール、電話、音声コマンドの操作が可能。そして右のスポークでは、ディスプレイ・ビューの選択、フロントワイパー及びインジケーターの操作が可能となっている。
HMIシステムは、3つのメインディスプレイで構成。15.6インチのデジタル式インストルメント・クラスターには、走行とビークス・ダイナミクスに関する情報を表示。ダッシュボード中央には10.25インチのタッチクスリーンを設置。マルチメディア、ラジオ、電話、エアコン、シート調整といった車両セッティングが行える。そして、助手席の前には、8.8インチのパッセンジャー用のディスプレイを採用。Gフォースやエンジン回転といったデータを表示することで、コ・ドライバー体験を提供する。
「アマルフィ」が搭載するパワートレインは、最高出力640ps、最大トルク760Nmを発生する3.9LV型8気筒ツインターボエンジン+8速DCT。このV8ツインターボエンジンは、国際的な賞を最も多く獲得している「F154」ファミリーの最新進化型となっている。このハイパワーなパワートレインに合わせて「アマルフィ」のブレーキシステムには、ブレーキ・バイ・ワイヤーを採用。これにより、制動効率の大幅な向上、ペダルストロークの減少、調整力の強化といったものが、ABSが稼働する状況でも体感できる。
また「296GTB」で導入され、「プロサングレ」や「12チリンドリ」でさらに進化したABS Evoを搭載。このシステムは、6Dセンサーのデータを使い、高いエイドで車速を推定し、各輪の最適なスリップ値を特定できるため、制動力を最適に分配できる。そしてADASと呼ばれる運転支援機能でも、最新のシステムを搭載。自動緊急ブレーキやアダプティブ・クルーズ・コントロール、ブラインドスポット検出、ドライバーの眠気やわき見を検知する機能など充実している。さらにオプションとしてサラウンド・ビュー機能とリア・クロス・トラフィック・アラートも用意されている。
イベントに登壇したフェラーリのプロダクトマーケティングの責任者であるエマヌエレ・カランド氏は「フェラーリ・アマルフィはスポーティな走りと人生の歓びを味わうことのできるモデル」と紹介した。ローマから進化したアマルフィが提供する新しいドルチェヴィータは、どのような味わいなのか。非常に気になるところだ。
■ 関連情報
https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/ferrari-amalfi
取材・文/萩原文博