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2025.01.03

ベントレー「ベンテイガEWB」が体現するラグジュアリーSUVの真髄

 スポーツカーメーカーのみならず、ラグジュアリーカーメーカーがSUVを手掛けるのは、もはや珍しいことではない。英国が誇るハイブランドとして世界中のセレブリティに愛されるベントレーもそのひとつだ。第一次世界大戦直後に誕生したこのメーカーは、当初スポーツカーを手掛け、品質と性能第一主義を掲げて多くの支持を集めてきた。特にルマン24時間レースでの活躍は目覚ましく、“ベントレーボーイズ”と呼ばれるドライバーたちがマシーンの性能を余すことなく引き出し、好成績を収めたことでベントレー車の優秀さが広く知られるようになった。

 企業としてのベントレーは多くの紆余曲折を経験したのちに、フォルクスワーゲングループの一員となったことで復活を遂げた。「コンチネンタルGT」や「フライングスパー」といったモデルが好例であり、これらの誕生でベントレーらしい豪奢なイメージを取り戻すことに成功。所期の理念とも言える性能と品質の高さがブランドを支え、近年では英国王室の御料車として採用されるなど、その卓越性を象徴する存在となっている。

新たなるフェーズへの一歩

 これらに象徴されるように、ベントレーのラインナップにおいて長らく中心を担ってきたのは、グランドツアラーとしての性格を持つクーペやフォーマルなサルーンモデル。これらが復権の足がかりになったのは言うまでもないが、その流れの中でVWグループの技術力を活用しながら開発が進められたのが「ベンテイガ」というわけである。あのベントレーがSUVを手掛けるという事実に、当時は驚いた人も少なくなかったはずだ。だが、その誕生に至る背景は極めて合理的である。時代の変化に適応し、健全な経営体制を維持するためには「売れるクルマ」の存在が不可欠。その回答として2015年に「ベンテイガ」が登場した。

 フォルクスワーゲングループでは、効率化を目的とした車台(プラットフォーム)の共用化を推進しており、縦置きエンジン車向けの高級車用プラットフォーム“MLB Evo”もその成果のひとつ。これはフォルクスワーゲン「トゥアレグ」やポルシェ「カイエン」をはじめ、ランボルギーニ「ウルス」などでも採用される高い汎用性を持つプラットフォームであり「ベンテイガ」もこれをベースに開発された。さらに、ベントレーらしさを追求し、ラグジュアリーカーに相応しい長短2種類のホイールベース仕様を用意。今回は、ロングホイールベース仕様にあたる「EWB」(エクステンデッド・ホイールベース)モデルを試した。

「ベンテイガEWB」の特筆すべき点は、やはりその威風堂々とした存在感だ。全長5.3m、全幅2.2m、全高1.74mという迫力あるサイズ感は、このクラスのSUVの中でも特に印象的である。大小のライトを備えたフロントフェイスは「コンチネンタルGT」などとの共通性を感じさせる一方、控えめなデザインが逆にブランドの格と威厳を強調している。登場から10年近く経つものの、決して古さを感じさせず、むしろタイムレスな魅力が際立つデザインだ。

 室内に入ると、伝統を重んじたディテールが目を引く。ダッシュボードのデザインは、ベントレーのエンブレム「フライングB」の翼を広げたような造形が特徴であり、物理スイッチのクリック感やエアコンノブの質感など、細部へのこだわりが際立つ。さらに、今回の試乗車は、同社のビスポーク部門である「マリナー」が手掛けた特別仕立てのモデル。タンザナイトパープルのボディカラーやリネン&ベージュの内装、繊細なステッチワークが織り成す空間は、オートクチュールの趣そのもので、ベンテイガのラグジュアリー性を一層引き立てている。

走りで知る老舗ブランドの奥深さ

 高級車としての“おもてなし”の精神は、走りのパフォーマンスにも存分に表れている。「ベンテイガEWB」のフロントに搭載される4L V8ツインターボエンジンは、550psと770Nmのパワーを発生。ショートホイールベース仕様では3L V6ツインターボ+モーターのハイブリッドも選べるが、底知れぬ力強さを粛々と生み出し、2.5トンを超える巨体を軽々と押し進めるV8こそ、「ベンテイガEWB」にはぴったりだと思う。特筆すべきは、その静粛性とスムーズさ。同じユニットを積む「コンチネンタルGT」とはまた異なる上質なフィールは運転する者にストレスを与えることなく、まるで忠実な執事のようにドライバーの意図に応える挙動が印象的だ。

 今回は日光まで足を伸ばしてみたが、中禅寺湖に向かういろは坂でも「ベンテイガEWB」はホイールベースの長さや車体の大きさを感じさせずに、ひらりひらりと駆け抜けたのが印象的だった。それを可能にしたのが、48V電源システムを活用した電子制御アンチロールバーと四輪操舵システムだ。前者は電気的な制御で車両の姿勢を安定させ、後者は前輪だけでなく後輪にも舵角を与えて低速時には小回りを、高速時には安定性を高める仕組みで、状況を問わず車体を自在にコントロールできる万能性を発揮している。

 そんなジェントルでスマートな振る舞いは後席に身を置いても十二分に感じられるのがいい。ロングホイールベース仕様ならではの広々とした空間が広がり、極上の快適さを堪能できる。エアサスペンションがもたらす滑らかな乗り心地、静粛性の高さ、包み込むようなシートの設計が、まるで移動するラグジュアリーラウンジのような体験を提供してくれる。

 その出自を想起させるドライバーズカーとしての性能を備えつつ、ショーファーカーとしても極めて優秀な一台、それが「ベンテイガEWB」だ。SUVというカテゴリーにおいても、ベントレーが築き上げてきた伝統と矜持は余すことなく注がれており、その魅力に触れることで、ブランドの奥深さと信頼感を改めて実感させられるモデルである。

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https://www.bentleymotors.jp/models/bentayga-ewb/bentayga-ewb/

文/桐畑恒治 撮影/望月浩彦

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