ポルシェは、フル電動化された新型「マカン」を発表した。この最高出力470kW(639PS)のパワートレインを搭載した第2世代となるマカンは、あらゆる路面でEパフォーマンスを発揮し、日常における高水準の使いやすさを実現。スポーツカー然とした性能は、270kWの高性能急速充電と613kmの航続距離(WLTP)によって達成される。
マカンは、発売から10年を経てフル電動モデルの第2世代に移行した。新型マカン4とマカンターボは、時代を超越した先進的なデザイン、ポルシェならではのパフォーマンス、長い航続距離、高い実用性によって、SUVを選択するポルシェユーザーの要件を完全に満たすことを目指している。ポルシェAG取締役会会長のオリバー・ブルーメ氏はワールドプレミアで次のように述べている。
「卓越したEパフォーマンス、新しいドライバーエクスペリエンス、そして非常に印象的なデザインによって、マカンをまったく新しいレベルに引き上げます」
またマカン製品ライン担当のイェルク・ケルナー氏は、以下のように話している。
「当社の目標は、フル電動化されたマカンによって、このセグメントで最もスポーティなモデルを提供することにあります」
ポルシェは、フロントとリアのアクスルに最新世代の永久励磁型PSM電気モーターを採用することで優れた効率を達成し、出力の最適な再現性を可能にしている。数値からもトップクラスのEパフォーマンスであることがわかる。ローンチコントロールとの組み合わせによりマカン4は最高出力300kW(408PS)のオーバーブーストパワーを発生し、マカンターボは最高出力470kW(639PS)を誇る。最大トルクはそれぞれ650Nmと1,130Nmとなる。さらに静止状態から100km/hまで、マカン4は5.1秒、マカンターボはわずか3.3秒で加速し、最高速度はそれぞれ220km/hと260km/hに達する。
マカンの電気モーターは、アンダーボディに搭載された総容量100kWhのリチウムイオンバッテリーからエネルギーを取り出し、そのうち最大95kWhをアクティブに使用することができる。HVバッテリーは、ポルシェが新型マカンで初めて採用した、800Vアーキテクチャーを備えた新開発のプレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)の中心コンポーネントとなる。DC充電出力は最大270kWで、このバッテリーは適切な急速充電ステーションで約21分以内に10%から80%まで充電することができる。400Vの充電ステーションでは、バッテリー内の高電圧スイッチにより、800Vのバッテリーを定格電圧400Vの2つのバッテリーに効果的に分割することでバンク充電が可能になる。これにより、HVブースターを追加することなく、特に効率的な最大135kWの充電が可能になりる。なお家庭用充電器では、最大11kWのAC充電が可能となっている。
そして走行中には、電気モーターを介して最大240kWのエネルギーを回生する。インテグレーテッドパワーボックス(IPB)も、軽量化と省スペース化を実現しながら電動化されたマカンの効率性に貢献。革新的でコンパクトなIPBは、オンボードACチャージャー、高電圧ヒーター、DC/DCコンバーターの3つのコンポーネントを組み合わせている。複合航続距離(WLTP)は、マカン4で最大613km、マカンターボで最大591kmとなる。
第2世代のマカンは、よりシャープなプロポーションとポルシェデザインのDNAにより、ダイナミックで圧倒的な存在感を放つ。スタイルポルシェ責任者のミヒャエル・マウアー氏は次のように語っている。
「フル電動マカンによって、確立された製品アイデンティティーを電気自動車に引き継ぐ初のポルシェを発表します。新型マカンは、ポルシェの製品ファミリーの一員であることを、そのブランドアイデンティティーによって明確に認識することができます。ポルシェの伝統的なプロポーションはさらに進化し、電気自動車の課題に最適に適合しています。これにより、マカンのスポーティ、モダン、ダイナミックな外観がさらに強調されました。このデザインは、マカンが電気自動車であっても、このセグメント随一のスポーツカーであり続けることを明確に示しています」
新型マカンは、全長4,784mm、全幅1,938mm、全高1,622mmのミッドサイズSUVとなるが、ボンネットの浅いピッチと力強く主張したフェンダーにより静止しているときでさえダイナミックな外観を与えている。さらにマカンには、スタッガードフィットメントの最大22インチのホイールが装着される。また先代モデル(2,893mm)より86mm長いホイールベースは、フロントとリアの短いオーバーハングによって相殺されている。
ヘッドライトは、2つの部分に分かれており、4灯のデイタイムランニングライトを備えたフラットなアッパーライトユニットは、フェンダーに埋め込まれて車幅を強調。オプションのマトリックスLEDテクノロジーを採用したメインヘッドライトモジュールは、フロントエンドのやや低い位置に配置されている。そしてポルシェの特徴であるフライラインは、フラットなリアウインドウと一体になっている。
また特徴的なサイドブレードを備えたフレームレスドアとの組み合わせにより、スタイリッシュでスポーティなデザインが実現した。さらに強調されたショルダー部が、リアに力強い印象を与え、彫刻的な3Dライトストリップの中央には、ポルシェロゴが配置されている。
ポルシェは、そのデザインDNAと航続距離のために最適化されたエアロダイナミクスを融合させた。新型マカンは、アクティブおよびパッシブエレメントを採用して空気抵抗係数を0.25に抑えたポルシェアクティブエアロダイナミクス(PAA)によって市場で最も流麗なSUVのひとつとなり、航続距離と消費電力にプラスの効果をもたらした。PAAシステムには、アダプティブリアスポイラー、フロントエアインテークのアクティブクーリングフラップ、完全に密閉されたアンダーボディのフレキシブルカバーが含まれる。ヘッドライトモジュール下のエアカーテンと低く構えたフロントエンドが、空気の流れを最適化し、リアでは、横方向のティアオフエッジとルーバー付きディフューザーが空力効率を確保する。
新しいマカンは、パフォーマンス志向のSUVでありながら、高い日常の実用性、高品質な装備、広々とした室内空間を備えており、電動化によってラゲッジスペースは拡大された。モデルや装備に応じて、リアシートベンチの後ろの容量は最大540リッター(カーゴモード)、さらに、ボンネットの下には「フランク」と呼ばれる容量84リッターのセカンドラゲッジコンパートメントがある。これは先代モデルを127リッター上回る。リアシートの背もたれを完全に倒すと、リアラゲッジコンパートメントの容量は最大1,348リッターに拡大。そして2,000kgの最大けん引性能は、マカンの実用性をさらに高めている。
またモデルや装備に応じて、運転席と助手席は従来よりも28mm低く、後部座席は15mm低くなり、足元スペースが増加している。インテリアは紛れもないポルシェとなっており、コックピットの幅は、一体化したブラックパネルによって強調されている。センターコンソールのせり上がるデザインは、車高が低くパフォーマンス重視のポジションという印象を高めている。同時に、大きなウインドウが室内空間に明るさと開放感を与えている。
さらに最新のデジタルユーザーインターフェースに加えて、吹き出し口やエアコンのスイッチ類など、アナログのコントロールエレメントも用意されている。LEDライトストリップが、コックピットとドアのトリムストリップに巧みに組み込まれており、アンビエント照明やコミュニケーションライトとして機能。状況に応じて、挨拶、充電プロセス、ドライバーアシスタンスシステムとの連携など、情報や警告も提供する。もちろん、新型マカンの装備は、高度なカスタマイズが可能となっている。なおポルシェは、車両に環境に優しい材料を使用することも目指しており、フル電動マカンのインテリアの一部には環境に配慮した材料が使用されている。
マカンには、曲面デザインの12.6インチ自立型インストルメントクラスターと10.9インチセンターディスプレイを含む、最大3つの画面を備えた最新世代のディスプレイと操作コンセプトが装備されている。また、オプションの10.9インチディスプレイを介して、走行中の乗員によるインフォテインメントシステムの情報の閲覧、設定の調整、ビデオコンテンツのストリーミング再生も初めて可能になった。
またポルシェドライバーエクスペリエンスには、初めてAR(拡張現実)技術によるヘッドアップディスプレイも装備されている。ナビゲーションの矢印などの仮想エレメントは、視覚的にシームレスに現実世界に統合されており、87インチディスプレイのサイズに相当する画像がドライバーの10m前方に表示される。新世代のインフォテインメントシステムは、Android Automotive OSをベースにしている。
標準装備されたポルシェコミュニケーションマネジメント(PCM)は、コンピューティング性能を新たなレベルに引き上げます。たとえば、“Hey Porsche”音声アシスタントは、充電ステーションを含むルートを瞬時に提案。新しいポルシェアプリセンターでは、サードパーティプロバイダーの人気アプリに直接アクセスし、マカンに直接インストールすることができる。
ポルシェは、同ブランドの真髄であるドライビングダイナミクスと特徴的なステアリングフィールに焦点を当ててマカンを開発した。マカン製品ライン担当のイェルク・ケルナー氏は、以下のように説明している。
「新型マカンは、特にスポーティなシートポジションと低重心、そして印象的なドライビングダイナミクスとステアリング精度によって本物のスポーツカー感覚を実現しています」
マカン4とマカンターボは、ともに4WDとなり、2つ搭載される電気モーターは、パワーエレクトロニクスを介してほぼリアルタイムに制御される。電子制御ポルシェトラクションマネージメント(ePTM)は、従来の4WDシステムの約5倍の速さで作動し、10ミリ秒以内にスリップに対応することができる。さらに、4WDの配分は選択されたドライビングプログラムによって制御される。さらにリアアクスルの電子制御式ディファレンシャルロックであるポルシェトルクベクトリングプラス(PTV Plus)も、マカンターボのトラクション、走行安定性、横方向のダイナミクスに貢献している。
そしてマカンモデルのエアサスペンション仕様車(ターボに標準装備)には、ポルシェアクティブサスペンションマネジメント(PASM)電子制御ダンピングコントロールが装備されている。オプションでスチールスプリングサスペンションとの組み合わせも可能となっている。このPASMには、2バルブ技術を採用したダンパーも装備され、より広範なダンパーマップにより、快適性とパフォーマンスの間の範囲がさらに広がった。そのため、ドライビングプログラムの違いがさらに明確になった。
なおミッドサイズマカンでは初めて、最大操舵角5度のリアアクスルステアリングがオプションに用意されている。市街地走行や駐車時に11.1mというコンパクトな回転径を実現すると同時に、ブランドの定評ある一貫して精確なフロントアクスルステアリングによって、高速走行時の卓越した走行安定性を可能にする。
関連情報:https://www.porsche.com/japan/jp/models/macan/
構成/土屋嘉久