アメリカ車のスポーツクーペといえば、フォード「マスタング」とシボレー「カマロ」だった。しかし、フォードは2017年に日本市場から撤退。カタログだけが継続し、日本市場に車両を提供してきた。だが、その「カマロ」も2024年1月で生産が終了した、ということで、日本では「カマロ」の「FINAL EDITION」と最終モデルの「SS」「LT RS」が発売された。
アメリカンスポーツといえば、V8の大排気量も魅力だが「カマロ」は現行モデルの6代目になった時から、直4、2.0Lターボモデルが加わっている。このモデルだが実は、軽快なスポーツクーペとして〝知る人ぞ知る〟モデルなのだ。それは動力性能だけでなく、車両本体価格も668万円と、国産の高級スポーツセダンより低価格で購入できるようになっている。
6代目の「カマロ」は2015年に日本市場に登場。2ドアのボディサイズは全長4785mm、全幅1345mm、ホイールベース2810mmなので、国産車だとちょっと幅広のレクサス「RC」クラスぐらい。左ハンドルだが、日本の道でももて余すほどではない。
パワーユニットは新たに搭載された直4、2.0LのガソリンターボとV8、OHV、6.2Lの2本立て。2.0Lは275PS、400Nm。V8は453PS、617Nmという性能だ。変速機は2.0Lが8速AT、V8は10速ATが組み合わされている。
ボディタイプは2.0Lにクーペとコンバーチブル。V8はクーペのみの構成だった。試乗したのはクーペの2.0Lターボだが、実車を見ると、これが668万円とは信じられない感じがした。「カマロ」は2015年に登場し、20周年にマイナーチェンジを受け、フロントデザインを刷新している。
装備に関しては、8インチディスプレイのナビゲーション、BOSEの9スピーカーオーディオやリアビューカメラなどを含む11項目の安全装備、クルーズコントロール、スポーツサス、スポーツシートなどすべてが標準装備されている。これで600万円台なのだから、スポーツモデルファンには買い徳感のある価格といえる。低めの着座位置のシートに座るとAピラーの角度がやや急傾斜なので、若干、圧迫感のあるコクピットだ。ドライビングモードは、ツーリング/スポーツ/雪・凍結路の3モードが用意されている。
ツーリングを選択して走り出す。直4、2.0Lターボはアクセル・オンと同時に、低回転トルクが立ち上がる。8速ATは低回転でシフトアップを続け、7速1300回転、60km/hでもクルーズする。しかもこの時、コースティングするように、抵抗なく走るので、国道を流すようなシーンでは、リッター15km以上の燃費も実現可能だ。
高速の100km/h巡航は8速1600回転、7速2100、6速で2500回転。2.0Lエンジンは2500回転以上で、うなり音が大きくなるので、高速巡航での静粛性はかなり高いといえる。スポーツサスが標準の乗り心地は、ツーリングモードでも低速域では路面のザラつきや細かい上下動があり、車速を高めてもゴツゴツ感とやや大きめの上下動は変わらない。スポーツモードに切り替えるとゴツゴツした動きは、上下動の振幅も短くない。安定感が増してくる。
高速道路での巡航時はスポーツモードを選択した。ちなみに装着していたタイヤはグッドイヤーの「イーグルF1オールシーズン」で245/40R20だった。直4、2.0Lターボのもうひとつの顔は0→100km/h加速を計測してからだった。0→100km/hは6秒台で走り切り、直4エンジンは5000回転プラスまでスムーズに上昇する。
5000回転まで各ギアで回すと、1速40km/h、2速65km/h、3速で100km/hに達した。この時、スポーツモードを選択していれば、操航力はかなり重く、コーナーでの切り込みは真剣にハンドルを抑えこまなければならなかった。この操航力とロールの小ささは、スポーツカーだ。
シボレーは、モータースポーツのレース部門があり、米国だけでなくレースに出場している。そのノウハウが「カマロ」にも生かされている。とはいえ、アメリカの量産モデルである以上、実用性も求められる。
今回の試乗で驚いたのは、リアのトランクにゴルフバッグが2セット、斜めに収納できたこと。多少強引ではあったが、2人でゴルフに行くこともできるスポーツクーペは、欧州車にはほとんどなく、さすがアメリカ車だ。プラス2のリアシートは、前席用のシートベルトと格闘して、ようやく座れるが、頭上のスペースはミニマム、身長150cmまでのプラス2シートだ。それでもラッキーなのは、リアウインドウは、頭上ではなく、後方に位置しているので、日焼けに関しては安心ということ。
デビューしてから認知度は低かったが、シボレー「カマロLT RS」は、2.0Lターボエンジンのスポーツ度と、車両本体価格の買い得感で記憶に残るモデルだ。ちなみに「カマロ」の次期モデルは、すぐにではないが、いずれ発表されるはずだ。
■関連情報
https://www.chevroletjapan.com/camaro
文/石川真禧照 撮影/萩原文博