V型8気筒DOHC、4.0ℓツインターボのガソリンエンジンを搭載したのが、2020年10月。550PS、770Nm、0→100km/hの加速が4.1秒、最高速318kmhというのが公式発表だった。なぜ、V8モデルを投入したのか、との問いにベントレーは、「顧客調査により、ショーファーカーからドライバーズカーへと使用目的が変化していることが判明した」と答えた。
ベントレーによれば、アメリカと中国で実施された顧客調査などで、40%以上のユーザーが、週に1度は後席に人を乗せて自ら運転するという結果が報告されているということで、W12エンジンよりも、ポピュラーなV8エンジンの「フライングスパー」が企画された。
新開発のV8はツインスクロールターボを装着し、2000回転に達する前にすでに770Nmという最大トルクを発生するように設計された。さらに燃費性能を最大限に引き出すために、トルクが235Nm、エンジン回転が3000回転以下の時に8気筒のうち4気筒が休止する気筒休止システムを採り入れている。
気筒休止と再開は約20mm/秒という短時間で行なわれるので、乗員が気付くことは、試乗中でもなかった。それほどスムーズに行なわれている。ツインスクロールターボはエンジンのV字内側に装着されているので、エンジンからターボチャージャーへの排ガスの移動距離が最短に抑えることでレスポンスが素早くなっている。90度のバンク角、クロスプレーンクランクシャフト、完璧なバランスで、V8エンジンは6400回転まで、スムーズに上昇し、3000回転からは、軽いうなり音を発し、力強い加速を楽しませてくれる。
車両重量がW12よりも約100kgも軽くなったことで、足回りにも手が加えられた。アダプティブエアサス、トルクベクタリング・バイ・ブレーキ、ドライブダイナミクスコントロール、電動ステアリングは標準装備。オプションで48V電動アクティブアンチロールや電動4輪操舵システムも用意された。
エアサスは先代の「フライングスパー」と比較して、空気量を60%多く確保できる3チャンバーエアスプリングを採用。3モードの走行モードに合わせた乗り心地に対応している。さらにハンドリング向上のために、中空で軽量タイプのアンチロールバーを前後に配している。外装の基本形はW12と同じだが色使いは、V8のキャラクターとボディラインを引き立てるために選択された7色が標準設定になっているが、60色以上のオプションカラーも用意されている。
さらにV8ウイングバッジ、4本出しのマフラー、試乗車はオプションの22インチのアルミホイール+前275/35ZR22、後315/30ZR22のタイヤを装着していた。内装だが、後席は3人掛けと2人掛けが選べる。試乗車は2人掛け。フロントコンソールが後席まで延長されている。このコンソールには5インチのタッチスクリーンリモートの収納場所が設けられている。前席背もたれ裏側には電動ピクニックテーブルが収納されている。テーブル表面はもちろんウッドパネルだ。
V8モデルにも冷蔵機能付ボトルクーラーは、アームレスト後方に装備される。+6℃から-6℃までの温度調整機能付。先代フライングスパーよりもトランクへの張り出しが小さくなったが、それでも容量は330mℓのソフトドリンクなら6本、750mℓのシャンパンボトルなら2本は収納できる設計になっている。