静かだ!野太く、周囲を威圧するような爆音ではなく、軽いビートでアイドリングを開始した。エンジンはまだ冷えているのに、3000回転あたりでも静かなのだ。そして、この驚きは、Dレンジで走り出してからも続いた。次の驚きは、乗り心地のよさだ。以前、2022年モデルの「GT-R」に試乗した時も、乗り心地のしなやかさに、これが「GT-R」なの?と驚いたことを覚えているが、さらにしなやかなのだ。
街中走行時の上下動は抑えられ、適度に硬さを保っている。しかし、ゴツゴツ感はカドがなく、揺れも少ない。この感触は車速を高めても同じ。ダンパーモードを「Comfort」にすれば、上下動は細かく、激しくなるが、「R」モードなら抑えが効いた走りができる。だからといって、コーナーでロールが大きいとか、高速道路での直進性が甘いとかということはない。
高速道路での不満は、エンジン音やミッション音が大きいということではない。気分的に6速ATが、ちょっと時代を感じさせるかな?というレベル。今なら8速か9速でしょ。それでも6速100km/hは2100回転なので、無闇にアクセルペダルを踏みこまなければ、燃費は10km/L以上を保つことができた。
エンジン音やミッション音が静かに抑えられ、乗り心地もさらに良くなったといっても決して街乗り用のGT-Rになったわけではない。V6、3.8Lツインターボ、600PS、652Nmの実力は健在だ。
0→100km/hの加速は何と3秒台!加速中の4000回転から7000回転までの、V6エンジンの吹け上がりのスムーズさと上昇スピードの早さと軽さは、世界中のレシプロスポーツカーの中でもNo.1と言ってもよいだろう。それほどに、見事なのだ。このエンジン回転をもっと楽しみたければ、マニュアルモードに切り替えてもよい。5000回転を目安に1速は50、2速80、3速120km/hまであっという間に吹け上がる。重めだがクイックさのあるハンドリングで、ワインディングを走れば、ハイレベルなスポーツ走行を楽しむこともできる。
ダンロップ「SPスポーツMAXX GT600」のDSSTDタイヤ、前255/40ZRF20、後285/35ZRF20は、どのような時も、悲鳴を上げず、しれっとコーナーをクリアしてくれるはずだ。
もちろん、そんな「GT-R」にもウィークポイントはある。後席は、やや低めの着座位置で、固定式の背もたれはかなり寝かせ気味。頭上はヒタイまでリアウインドにさらされる。空間は確保されているが、身長160cmが着座の限界だろう。
リアのトランクは、開口部が路面から約910mmもあり、床面からも約410mmの高さがあるので、重量物の積み降ろしはちょっとキツい。内部はゴルフバッグも2セットはのるほど広いのだが、気になるのは、床下からの熱量がハンパではないこと。一説では、スーパーで購入した冷凍食品が、家に着くころには解凍されている、とも言われるほど、熱いのだ。「GT-R」でちょっとスーパーに買い物に、というオーナーは注意が必要だ。
この2点をウィークポイントと思わない方(大半がそうだと思うが)には、最新の「GT-R」は、ガマンをして乗ることのないスーパースポーツカーといえる。
■関連情報
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/gt-r.html
取材・石川真禧照 撮影/萩原文博