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2024.12.24

本格派SUVの新たな地平に立つメルセデス・ベンツ「G580 with EQ Technology」

メルセデス・ベンツ「Gクラス」、通称“ゲレンデ”は、現在のようにSUVが持てはやされるずっと前から、高級クロスカントリー4WDの代名詞として地位を確立し、カテゴリーを牽引してきた一台である。質実剛健な設計ながら、高いアイポイントや見切りの良いデザインによる運転のしやすさを兼ね備え、街中でも扱いやすいのが人気の理由。もちろんそれだけに留まらず、その出自が物語るように、本物の道具としての性能を備えている点も見逃せない。それはオーナーが“目利き”であることを示す要素でもあり、さらには“ベンツのSUV”として成功者のステータスシンボルとしての役割も果たしている。

そのGクラスに新型モデル「G580 with EQ Technology」(以下G580)が加わった。車名が示すとおり、G580はメルセデス・ベンツのEQテクノロジー=電動化技術が盛り込まれたモデルである。具体的には、内燃機関を持たないバッテリーEVとして、4つのモーターが各タイヤを個別に駆動する“4モーター4WD”方式を採用する。この進化はGクラスのキャラクターを損なうことなく、さらなる魅力を引き出しているのだろうか。その答えを探るためにオンロード/オフロード両方での試乗で実力を確かめることにした。

Gクラスの起源は1972年に遡る。当初は軍用での採用を目的とした開発プロジェクトが進行しており、実際は79年に民生用オフローダーとしてデビューを果たした。NATO軍らの車両として制式採用されたのはデビュー後だったが、逆にそのことがオフロード性能の高さを裏付けたと言えるだろう。ちなみにその当時に与えられたモデル名が今も愛称として残る「Gelände」(土地、山野)の「Wagen」(自動車)=「ゲレンデヴァーゲン」である。

その成り立ちは、本格派オフロード4WDにおける定番の骨格であるラダーフレームを基盤に、シンプルかつ強靭なサスペンションシステムを組み合わせ、軍用車のような飾り気のない無骨さを感じさせる平面パネル主体のデザインを纏っているのが特徴だ。肝となる4WDシステムは当初パートタイム式とされていたが、デビューから10年後の1989年にはフルタイム式に改められ、フロント/センター/リアのディファレンシャルロックスイッチ(路面状況に応じて駆動力の伝達を切り替えられる)を採用した。以降はエンジンのバリエーションも拡充され、プレーンさが特徴だったゲレンデヴァーゲンは豪華なモデルへと進化していった。

特にその傾向が顕著だったのは2000年代に入ってからだが、一気にモダナイズされたのは2018年である。この年の変更はほとんどフルモデルチェンジと言えるもので、基本構造を維持しながらも、エクステリアとインテリアを大幅刷新するとともに、最新装備を搭載。これにより、Gクラスは現代的なモデルへと生まれ変わった。そしてそれをベースに、昨今のトレンドである電動化を盛り込んだのが「G580」というわけである。

電動化がもたらしたもの

「G580」の最大の注目点は電動パワートレインの採用である。ただしそれは内燃機を併用したハイブリッドではなく、純粋なモーター駆動による4モーター4WDを採用した点が新しい。システムを支える駆動用バッテリーがラダーフレーム内に収まるように配置されたことも注目のポイントだ。これにより梯状の車台がこれまでよりもさらに強固になったほか、従来の本格派4WDでは必須と言えた前後の駆動をつなぐシャフトやギアが不要となり、車体底部のフラット化を実現できた。結果として最低地上高を拡大でき、従来以上のオフロード走破性を獲得したのである。

また、電装プラットフォームの刷新も大きな進化である。エアサスペンションを含んだドライブモードの統合制御が可能となったほか、最新の運転支援機能も搭載することができた。これらにより「G580」は従来モデルを遥かに上回る、現代的な快適性と操作性を実現したのである。メルセデスが得意とするMBUXをはじめとするインフォテインメントシステムももちろん最新バージョンとなっている。

実際に「G580」をドライブしてみて大きな変化を感じるのは、静粛性をはじめとする洗練された走行マナーである。まず、EVならではの特性として、エンジン始動時の振動は皆無であり、スタータースイッチを押しても車体がブルッと震えることもなく「G580」は静かに目覚める。アクセラレーターを踏み込んで動き出す際の所作も滑らかそのもの。3トン超の重量を持ちながらも、これまでのGクラスとは一線を画す静かで洗練された乗り心地を提供してくれた。

「G580」は、「AMG G63」をも上回る最高出力587ps、最大トルク1164Nmというパワーを標榜するが、加速時のパワーデリバリーも優れており、内燃エンジン車に近い自然な感覚を実現しているのも特筆すべき点だ。このセッティングなら長年のメルセデス・ファンもすんなり受け入れられるだろう。そして、Gクラス特有の堅牢なボディ構造と高い密閉性により、静粛性はフラッグシップモデルであるSクラスに迫るレベルに達している。ただし、四角いボディ形状がゆえにわずかな風切り音が耳に届く点は否めない。もちろん、これは従来型より静粛性能が向上した結果、細かな部分が目立つようになったからにほかならない。コンフォート性能の向上が、逆に些細な欠点を浮き彫りにしたとも言えるだろう。

悪路走破性と最新技術の融合

「G580」の真価は、オンロードだけでなくオフロードでも遺憾なく発揮された。専用オフロードコースでは、凹凸の激しいモーグルバーンや急勾配の坂道、水深700mm程度のポンドなど、あらゆる地形で高い走行安定性を提供し続けてくれた。これは、従来からのオフロード性能に最新技術が融合した成果にほかならない。ちなみに最低地上高は250mm、最大渡河水深は850mmを確保しており、今回のオフロードコースでもまったく不安を覚えることはなかった。

エアサスペンションの自在なストロークと制御は悪路でも効果を発揮し、どれか1輪が路面から離れても、残り3輪への適切な駆動力配分で確実に進むことができた。従来はデフロックが担っていた役割を、各車輪のモーター制御が担うようになったのだ。この4モーター制御の強みは、加速から極低速での正確な動きまで幅広く対応できる点にある。

特にその制御の特徴を最大限に活かしたのが「G-TURN」や「G-STEERING」といった新機能である。これらは各車輪の回転を制御して車両の向き(進行方向)を変えることができるというもの。「G-TURN」では、左右の車輪を逆方向に回転させることでその場での旋回が可能となり、「G-STEERING」では回転半径を小さく抑えた操作が可能となるものだ。これらは単なるギミックやパフォーマンスでなく、道なき道を進む際や行き止まりでのターン時に威力を発揮する、実用的な機能である。

モーター駆動と最新の制御技術という新たな武器を得た「G580」は、オフロード性能の向上とラグジュアリーな快適性をさらなる高みに引き上げることに成功したモデルと言えるだろう。その洗練された操作性、そして乗り心地の良さと静粛性の高さは従来のSUVとは一線を画し、進化の大きさは驚嘆に値するもの。Gクラスが孤高の存在として君臨し続ける理由を改めて実感させられた次第だ。つまり「G580 with EQ Technology」は単なるGクラスの電動化モデルではなく、伝統と革新を融合させた究極のオフローダーなのである。

■関連情報
https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/models/suv/g-class-electric/overview.html

文/桐畑恒治 撮影/望月浩彦

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