「ヴェラール」は、「レンジローバー」ファミリーの4番目のモデルとして、2017年に登場した。ポジションとしては、ラグジュアリーコンパクトの「イヴォーク」と、プレミアムスポーツSUVの「レンジローバー スポーツ」の間を埋めるモデルとなる。ちなみに、メーカーは〝ミッドサイズラグジュアリーSUV〟と名付けている。
全長は4820mmだが、全幅は1930mmなので、立体駐車場では車幅がオーバーすることもある。最新モデルは2024年1月に発表された2025年モデルだが、デリバリーは夏以降とされている。ちなみに、2025年モデルは全グレードでキーを持ってクルマに近づくと2~2.5mでロックが解除され、2~2.5m離れると自動的にロックされるシステムが採用されたほか、電動調整ステアリングコラムも標準装備になった。
試乗したのは、現行最新モデルの2024年式。2023年式と比べ、フロントグリル、リアバンパー、ヘッドライト、テールライトのデザインが新しくなった。インテリアではインフォテインメントシステムが11.4インチのフルHDタッチスクリーンを備えたことが新しい。
そして、パワーユニットは直列4気筒、2.0Lガソリンエンジンに、105kWの電気モーターを組み合わせたプラグイン・ハイブリッドが、「ヴェラール」として初めて搭載された。今回はこの新しい「レンジローバー」のプラグイン・ハイブリッドの実力をチェックした。
エンジンはガソリン仕様の直列4気筒、2.0Lターボで、404PS、640Nmの高性能エンジンを搭載。そこに19.2kWhのリチウムイオン電池から最高出力143PSの電気モーターを組み合わせている。EVの航続距離は約51kmと発表されている。エンジンはフロントに縦置きされており、駆動は前輪+後輪の4WDとなっている。
2024年モデルの「ヴェラール」に乗り込んだ。グレードはDYNAMIC HSE P400e。車両本体価格は1200万円だ。やや高めの着座位置からボンネットが見える「レンジローバー」らしいポジションで視界も広い。頭上のスペースも十分でAピラーの圧迫感もない。
走り出す前にプラグインのメーターを確認すると、充電状態は100%で航続距離は48kmと表示されていた。これはカタログ値より若干低めの数値だ。ドライビングモードは「コンフォート」を選択。モードは「ダイナミック」「コンフォート」「エコ」「AUTO(オート トレインレスポンス)」「オフロード」の5つから選べる。さらにタッチスクリーンで「EV」モードを選択する。
Dレンジでエンジンスタート。スタート時に駆動系からのショックを感じた。クラッチが急につながったようなショックだった。「ヴェラール」初のPHEVということもあったのかもしれないが、ここは改良が必要だろう。
走り出してからの動きはスムースで速い。約2.3tの「ヴェラール」を軽快に、音もなく走らせる。「コンフォート」モードでの乗り心地は低速域から中速域では、路面の凹凸によりゴツゴツ感やザラつきが、室内に伝わってくるが高速になると、細かい動きは消え、やや大きめの上下動が感じられる。「ダイナミック」モードでは、上下動よりも全域での硬さが前面に出てくる。
「ヴェラールPHEV」のサスペンションは、ガソリン/ディーゼル版の「ヴェラール」とは異なり、コイルサスペンションしか用意されていない。タイヤはミシュランの「ラティチュード ツアーHP」265/45R21サイズを装着していた。
ハンドリングだが「コンフォート」では全域で重めの操舵力で、コーナーでは切り込んだ後の戻しが強かった。「ダイナミック」モードでも操舵力の重さは、コンフォートと大きく変わらなかったが、高速コーナーでは、若干外側に行こうとするアンダーステア的な動きが感じられた。
一般走行で電気を使い切ってしまうと、2.0Lガソリンターボエンジンが始動する。エンジンは始動すると若干、音と振動が伝わってくるが、5000回転まで回しても、ノイジーな音ではなかった。なので、100km/h巡航時にエンジンで走行しても8速1600回転、7速2100回転なので、平和なクルージングは可能。そのときの燃費は18.0km/Lを記録したので、ガソリン走行でも燃費は納得できる範囲だろう。
ちなみに動力性能は、0→100km/hの加速を計測すると、6秒台で走り切った。車重2.3tのSUVとしては十分速いタイムだ。充電に関してだが、充電口は200Vのみで急速充電はできない。充電量と可能走行距離はどちらもメーター内に表示される。%とkmの両方が表示されるのは親切だ。
試乗中に、充電量が残り6%、航続距離2kmの状態から200V、3kWで充電を開始したが、100%まで6時間20分の表示が出た。この充電時間なら十分常にEVモードで走行できそうだ。ちなみに充電量が残り25%で、満充電時間は5時間だった。
ただ、充電ケーブルを収納するスペースがラゲージにないとか、走行中に充電が十分できないなど改善点はあるが、エンジンとモーターを上手に使えば、スマートなEVライフを楽しめそうだ。ラグジュアリーなミドルクラスEVが提案する、クルマの新しい使い方を体験できそうな1台だ。
■ 関連情報
https://www.landrover.co.jp/range-rover/range-rover-velar/index.html
文/石川真禧照 撮影/萩原文博