新型センチュリーの全高1805mmはたしかにクロスオーバーSUVのカローラクロスと同等で、最低地上高185mmはコンパクトクロスオーバーモデルのライズと同じ。四輪駆動でもあるのだが、だから新型センチュリーがSUVと決めつけるのは、すでに説明した通り、間違いなのである。
つまり、乗降性と後席2人掛けとした車内の居住性、快適性を追求した結果、最低地上高185mmと全高1805mmに導かれたことになる。スポーツカーの乗降性が示すように、フロア、シートの位置はむしろ低いほうが乗降はしにくい。適度な高さにフロア、シート位置があり、全高に余裕があるほうが乗降性に有利なのである。そして室内空間は分かりやすい。天井が高いほうが解放感があるのは当然で、居住性、快適性が高まるのは、ミニバンの新型アルファードを見ても明らかだろう。とくに新型センチュリーに想定外のスライドドア仕様が発表されたことからも、センチュリー(セダンタイプ)以上に、乗降性に気遣っていることは間違いないところ。そのスライドドアを成立させるためにも、1805mmという、ホンダ・オデッセイ(全高1820mm)に近い全高は不可欠の要素だったと推測できる。
後席が4人乗り、つまりセパレートタイプのシート(乗車定員4名)である点は、センチュリー(セダンタイプ/乗車定員5名)と大きく異なるパッケージの考え方だ。
しかも、リヤスライドドアの設定はもちろん、後席の快適性、居住性に関してSUVではまずない77度のフルリクライニングが可能である点、ラゲッジルームの広さにあまりこだわっていない点、キャビンとラゲッジルームの間に、通常、SUVにはない隔壁(静粛性にも貢献)があるところも、新型センチュリーが”SUVではない”ことの証明ではないだろうか。ちなみに新型アルファードのエグゼクティブラウンジ仕様のシートリクライニング角度は70度であり、新型センチュリーの後席リクライニング角度はそれよりあり、よりリラックスできるということだ。
もちろん、PHEVゆえ、AC100V/1500Wコンセントも完備。車内での仕事、趣味の没頭にも役立ってくれるに違いない。
よって、新型センチュリーはどこかSUVの臭いは感じさせるものの、決してセンチュリーのSUVではなく、車体の堂々感の演出はもちろんのこと、乗員の快適性、とくに後席の居住性に徹底的にこだわった結果として、最低地上高185mm、全高1805mmが与えられた、ウルトララグジュアリーでありながら悪路走行にも特化したレンジローバーとは立ち位置がまったく違う、時代とユーザーの多様化に対応したカテゴリーレスとも表現できる、日本車の、日本のフラッグシップカーとした誕生したことになる。“SUVと呼ぶなかれ”の新型センチュリーである。
文/青山尚暉
写真/トヨタ