さて、今回の主題である「Dolby Atmos for cars」を実際に試聴した感想をお届けしよう。体験したのはメルセデス・ベンツのブランドストア「メルセデス ミー 東京」(六本木)。このシステムをいち早く搭載しているメルセデス・ベンツは、電動化の普及を見据えたドライブ中の体験の価値を高める試みに取り組んでいる。
その回答のひとつが立体音響技術のドルビーアトモスであり、今回の試聴は電気自動車のプレミアムサルーン『EQS』で行なった。サウンドシステムは「ブルメスター」で、Apple Musicからドルビーアトモスに対応した楽曲をストリーミングして試聴する。
驚いたのは、音が横方向だけでなく上方向からも聴こえてくることだ。それはボリュームを下げても変わることがなく、どの座席に座っていても音に包まれるような臨場感に満ちている。
「家庭でも車内でも、天井にスピーカーか設置されているに越したことはありませんが、必ずしも必要というわけではありません。それでも上から聴こえてくるのは、ドルビー独自の『バーチャライザー』というサウンドエフェクト技術を使い、人間の耳に上から音が入ってくるような効果を出しているためです」
ドルビーアトモスの圧倒的な臨場感は、走行音が静かな電気自動車の室内空間でひときわ映える。運転操作に集中しながら美しい音楽に包まれる体験のなかで、見慣れた景色は新たな魅力を放ち、初めて訪れた緑豊かな旅先では、彩りを増して、まさに〝実り豊かな旅〟として記憶に刻まれることだろう。
冒頭で書いたように、ドルビーはオーディオメーカーではない。
「車載するにあたり、オーディオのヘッドユニットにドルビーアトモスのシステムを組み込んでからオーディオメーカーが調整し、再生される音質をドルビーが認証します。ドルビーアトモスを加えてもらうことで、オーディオメーカー独自の技術と合わせて活用いただくことで、クリエイターが意図したとおりの音楽を提供することができるわけです」
この点については映画と同じで、アーティストやエンジニアの意図をリアルに体験できるという点において、概念としても演奏者と聴き手の距離が近くなるわけだ。
ドルビーアトモスで楽曲を楽しむ場合は、Mercedes me connect(※)とペアリングした上で、オンラインミュージックのApple MusicからDolby Atmosのロゴが入った作品を選択する。
Appleが空間オーディオの楽曲を集めたプレイリストを公開しているので、そこから選択するのがわかりやすいだろう。
※サービスをご利用いただくには、Mercedes me IDとMercedes me connectサービスの利用規約への同意が必要です。また、車両と対応するユーザーアカウントとのペアリング、および情報通信サービスへの申込が必要となります。
Appleが提唱する「空間オーディオ」として、Apple Musicではドルビーアトモスに対応した楽曲を配信中。
「古い曲でもマスターの音源が残っていればドルビーアトモスでリミックスすることができます。例えばビートルズの楽曲などはドルビーアトモスで再ミックスされ、Apple Musicで配信されています」
ドルビーは映像・音楽の視聴環境に合わせた技術開発に今後も取り組んでいくという。それはクルマの電動化が照らす未来の一助となるだろうし、ひょっとしたら既存の内燃機関搭載車(旧車も含む)を愛する人たちにとっても、今まで以上に豊かな音楽体験をもたらす技術が生まれてくるかもしれない。クルマを軸としたライフスタイルの多様化は、カーラジオから始まった音楽体験をさらなる高みへと押し上げていくに違いない。
今回の取材会場となったメルセデスミーでは、最新の車種を含め、ドルビーアトモスに対応したモデルの試乗も可能(要予約)。気になった方は是非メルセデスのショールームで体験してほしい。
ドルビーアトモス オフィシャルサイト
メルセデスコール 0120-190-610